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深夜放送

作者: 柏木ユウマ

『どうも〜、こんにちは〜。あ、こんばんはでした……!』


「うるっさ、あ〜、切り替わったのか」

 スマートフォンでASMRを視聴しながらソファで微睡(まどろ)んでいると、突然男性の元気な声が聞こえてきた。意識を覚醒させようと目を擦りつつ音量を下げる。ついでにその放送のタイトルが目に入った。ナツメグラジオ、夏休み特番! 夏は夜ふかしだ! 特にひねりもないタイトル。

 このラジオ自体は見たことがある。普段から絡みの多い配信者二人がリスナーからお便りを募集しつつトークをするというラジオだった筈だ。


『あはは、さっきまで丁度今日は特別番だから挨拶気をつけないとって言ってたのに早速間違えちゃいましたね』

 次に聞こえてきたのは女性の声。

 確か男性の方が夏羽(なつは)で女性の方が(めぐみ)だっけ。それでナツメグラジオだったはずだ。

 苗字は……思い出せない。


『まぁ、今日はゲストも居ないんでね。まったり気楽にやりましょ』


『別にゲストがいても自由にやってるじゃないですか』


『確かに、そうだね。どうする? 前座的な話しとく?』


『うーん、どうせこれからいっぱい話すんだし早くお便りに行きましょ、眠いや』


『オッケー、それでは。ペンネーム、かに味噌焼きさんから。最近、暑さがすごいですね。そうですね〜。ちゃんと水分補給しないと熱中症で倒れちゃいそうです』


『ホント、そうだよ〜。みんなも外出のときは気を付けてねぇ』


『俺も最近外出るときはちゃんとお茶持ってってるわ、えっと、今日のは、あ、選ばれたのは彩鷲でした』

 ガサガサと何かを探す音が聞こえた、カバンの中でも見ているのだろう。


『お〜、渋いね〜。私は大体麦茶だわ』


『まぁ、メグはまだまだお子ちゃまということで』


『おい!』


『あはは、お便りに戻りまーす。ところで、夏といえば怪談ですよね。暑い夏にひんやりするような怖い話とか最近あった恐怖体験とかお二人はありますか、ということです』


『おぉー、怖い話か〜。私ちょっと苦手かもなぁ、夜とか想像して寝れなくなっちゃうんだよねぇ』


『へぇ〜、好きそうなイメージだったわ、意外。じゃあ、ここは一つとっておきの話をしようかな〜。最近あった話なんだけど』


『え、そんな急に?』


『あれは、多分、一週間ぐらい前の出来事……』


『………ゴクリ』


『丁度、一時ぐらいだったかな。ラジオのアーカイブを確認してたらいつの間にか眠っちゃって。多分15分ぐらい寝てたのかな』


『え、確認してるんだ』


『うん、大体ね。暇になったら見とくんだよね』


『へぇ〜、私も見ようかな〜。あ、ごめん、続けて』


『うたた寝って感じだったんだけどさ。ピンポーンって音がして目が覚めたの』


『え、一時に?』


『そう、おかしいと思ったんだよね。宅配とかも何も頼んでないのよ。最初は悪戯かなって思ったんだけどさ。音立てないように、ソファで止まってたらさ、もう一回鳴ったのピンポーンって連打でもないのが逆に不気味でさ』


『隣の人とかじゃないの?』


『それが丁度最近引っ越したんだよね』


『あ〜、そういえば言ってたね』


『そう、それでさ。意を決してあの丸いさ、外覗ける奴、わかる?』


『あ〜、あれだよね? ドアスコープ!』


『そう、それ。でさ、ゆっくり近付いて』


『ゆっくり近づいて……。台置いて?』


『いや、そんな俺背低くないわ!』


『あはは、ごめんごめん、つい』


『兎も角、近づいて覗いたのよ。そしたら……』


『そしたら……?』


『誰もいないの』


『え、ヤバいじゃん。もしかして幽霊……』


『うん、しかも、誰もいないのドアスコープみて分かってるのにまだピンポーンって鳴るの』


『え、えぇ…………』


『そんでね、良くよくその音聞いてみたらパソコンから鳴ってたんだよね〜』


『へ?』


『幽霊とかじゃ全然なくて動画だったの! 自動再生でインターホンの動画流れてたんだよね』


『ちょ、何それ!! おい、ビビらせないでよ』


『俺の方がビビったよ! もう一気に気が抜けてそのまま机に突っ伏しちゃったわ』


『てかインターホンの動画って何それ』


『ホントね〜』


 ホッと内心胸を撫で下ろしている自分がいた。この人は話し方が上手いからドンドン引き込まれていた途中メグさんが茶々を入れてくれなければ閉じていたかもしれない。スッキリする終わりで良かった。


『あれ、そういえば、15分ぐらい寝てたって言ってたけど、時間確認してたの?』


『いや、確認始めて40分ぐらいのあの休憩タイムに寝ちゃったからみたら60分ちょい前ぐらいで』


『え、じゃあさ。ナツが起きたインターホンって何だったの?』


『…………何だったんだろ』


 気がつけば僕は家の扉を見つめていた。





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― 新着の感想 ―
[一言] ホッとした分、なおさら最後でゾッとしました。 なんだったんでしょうね…
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