パーティーを全滅させといてなんですが、宿屋開いちゃいました!
『――キャァァァ!!』『う、うああああああ!?』
狩場へ向かう途中、脇道から現れた敵グリズリーの初撃をまともに受けたオレ、ネリーア・オルロイ。
回復士のオレを頼っていたアタッカーやら、攻撃魔道士やら。
みんなまとめて全滅してしまった。
そして彼女や他のみんなは、オレの目の前から姿を消した――。
――そう思っていたのに、目の前から消えたのはオレだけだった。
それから数年の時が経った……らしい。
◇◇◆
「ネリーアさん、お花はどこに置いておきます~?」
「目立つように、外の壁にでも並べといて!」
「は~い!」
オレは今、宿屋の主人をしている。
異空間からたどり着いた所は、人っ子一人いない寂れた宿屋だった。
それから数か月は何も出来ずに過ごしていた。
そんな寂れた宿屋にけがを負い、立つこともままならない冒険者を泊めた時から運命が変わった。
回復士として最強だったオレに、死の制裁によって何か特別なスキルでも宿ったのだろうか。
そう思わざるを得ないことが立て続けに起きたのだ。
冒険者をベッドに寝せて、看病をせずにとにかく寝かせまくっただけなのに。
どうやら疲れの回復に加えて、かすり傷程度を自然治癒させることが抜群に得られるようになったらしい。
そして冒険者にとって最強の回復宿屋というウワサが立ち、大繁盛!
全滅寸前のパーティーを受け入れては、感謝感謝の拍手喝采ものである。
「……え、全滅してパーティーが消えたんすか?」
「そう思ってた。けど、消えたのはオレ一人だけ。不思議なこともあるよな」
「主人、それって死んだんじゃなくて?」
「いや、死の制裁を受けて宿屋に送還されただけっぽい。だから宿屋を開いたわけよ!」
「へ、へぇ……商魂逞しいっすね」
オレは半端な強さの冒険者……いや、結構名のある冒険者たちを相手に商売をしている。
回復士として元々の基本ステータスは平均以上で、病気や呪い何でも回復してた。
それがまさか全滅させてしまうなんて、悔やんでも悔やみきれない……が、オレの姿を彼らから消したことが死の制裁だったと考えるようにしている。
冒険者は徒党を組んでギルドに入り、気に入った構成メンバーやらお気に入りのジョブ同士で、冒険へと旅立つのが当たり前の世界。
弱い内は弱い者同士でパーティーを組み、何度も似たような狩場へ行っては、敵を狩り尽くして来るのが定番でもあった。
やがてそれぞれでスキルを習得し、ステータス変化にばらつきが出て来ると、固定で組んでいたパーティーは自然と解散し、また別の仲間を求めてギルドを渡り歩く。
時には大人数で挑まなければ、倒すことの出来ないレアモンスターがいたりして、そんな時には別のギルドとユニオンを組んだりして、必死になって倒したり。
「……というわけで、頼むからたくさんパーティー……それも回復士のいない連中を宿屋に誘導してくれ!」
「そりゃ構わないが、パーティーだって経験値ロストするのを望んじゃいないってことを忘れないでくれよ」
普通の冒険者は、雑魚な敵を倒すところから経験値が手に入り、成長していくものだ。
しかしたまに無茶ぶりをするパーティーも少なからずいる。
そんな無茶な冒険者にとって、狩場の中間点に位置する宿屋の存在はデカかった。
……それも回復効果が高すぎて、パーティーに回復士は不要という常識外れな常識を身につけさせてしまう。
さらに言えば、自然治癒スキルをおまけにつけられる宿屋としても有名になってしまった。
そんなオレに疑問は常に投げかけられる。
「ネリーアさんって回復士でしょ? 回復士なら引く手あまただろ? どうして冒険に出て行かないんだ?」
「宿屋を利用する冒険者って、意外に少なくないんですよ」
「なるほど。俺はすぐにでも狩場に戻りたい派だけど、泊まるだけで自然治癒効果が得られるんなら、みんな泊まりに来るよな~」
「そうです。しかもここは狩場の中間地。経験を得られるモンスターを狩る所から始めることになります」
「死の制裁で飛ばされたのに、宿屋を開いて繁盛か。ありがたいことだな」
「もちろん、一人じゃ厳しかったですよ。今はオレと同じ制裁を受けたエルフのラエティが手伝ってくれるんで、頑張れるというか」
「そりゃ、うらやましいことだな!」
回復士が回復出来ずに、パーティーを全滅させてしまった。
償いでも無いけど、冒険者パーティーを宿屋で回復させまくって負けないようにさせるのも、回復士冥利に尽きるのかもしれない。




