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江戸の敵を異世界で討つ  作者: 依田益太
8/19

ドワーフの鍛冶工場で注文品検査、荒れ地の工事、小舟の製作です。

「そういえば、ご主人さま。獣人の襲撃はどうなったのでしょうか。」「結局、襲撃の依頼主は口を割らなかったらしい。」「立派ですね。」「それと白虎は、完全に無関係を主張したので、無国籍者として遠島行きが決まりそうだ。」「残念です。」「まあ、獣人連中は、白虎は信用出来ないと、騒いでいるらしい。」「では、暫くは大丈夫ですね。」「まあ、暫くだけどなぁ」

「では、早速、明日にでもドワーフの鍛冶工場に行ってきます。注文した品物の出来具合を確認してきます。もしかしたら数日、詰めるかも知れません。」「分かった、気を付けてな、もっともあの技があれば心配することは無いかぁ。」

翌日は朝からドワーフの鍛冶工場に向かった、試作の試作のレベルだろうが、細かい細工を入れているので、このタイミングで確認したい。

「ドワーフのおじさま、出来具合を見来ました。」「お嬢かい、だいたいは出来てるぞ。」「有難うございます。では拝見しますね。」

結構出来ている、隠し細工さえなければ、持って帰れるもののある。とは言え検分して40項目の指摘を行った。

「お嬢、聞いてない追加のリクエストが入っているんだが。」「もちろん、追加の料金はお支払いします。でも、おじさま、これだけの仕事の作品を見せられて、さらに良くしたいと思うのは自然の理です。」「全く、お嬢には敵わないなぁ。」「おじさま、私は今日と明日はここに居ますので、確認して点があれば、声を掛けてください。」「お嬢が気合を見せるんじゃ、こっちも頑張らくちゃな。」「でも、お腹減りました。台所貸してもらって良いですか。」「もちろん、好きに使ってくれ。」

「おじさま、ご飯出来ました。皆さんの分も有ります。魚料理ですから、骨に気を付けて召し上がって下さい。」

「お嬢、これ美味いな、お嬢が作ったのかい。」「失礼な事を言われた気がしましたが、私が調理しました。」「後で、作り方教えてくれ。」「もちろんですよ、おじさま。」

最後に、焼き鏝に細かい模様を付ける。角材にした時に九尾の狐さまのお店の品であることを示すために、作ってもらった。模様はご主人さまをデフォルメした図柄。ここから微妙に周囲の角を削り、隠し文字を彫り込む。試押しをしてから直す作業を繰り返す。これだけは絶対にどの店も真似が出来ない様にしないといけない。

泊まったかいもあり、ノコギリ一式は出来た。試し切りをしたいので、焼き鏝のサンプルと一緒に持ち帰ることにした。

「はつ、何だいこの焦げた板切れは。」「ご主人さま、どちらかと言うと焼け具合では無く、模様を見て欲しいのですが。」「はつ、分からないねぇ。」「ご主人さま。逆さにして見てください。」「はつ、これは私かい。」「そうです、九尾の狐のお店で扱った証拠に押します。」「はつ、なんかこれ、アムに九本のしっぽが生えてる感じなんだけど。」「図柄はもう修正が効きません。と言うか、どの店でも真似が出来ない細工を見て欲しいです。」「確かにこの細かい細工はヒューマンの仕事だね。」「何か感動が足りない気がしますが。」「だって、余り似て無いんだもん。」「わかりました。次はご主人さまそっくりの性悪の図柄にします。」「はつ、怒るな、私が悪かった。」

「それより、オムの様子を見て欲しい。そろそろ脱皮が始まるぞ。」「2週間必要では無いのですか。」「脱皮直後は体が一回り大きくなるから、慣れるまで仕事は出来ない。それで2週間だ。」

オムの部屋では、すやすや寝ているオムがいる。オムの脱皮の抜け殻は必要なので、まめにチェックだ。今のうちにご主人さま専用の材木置き場の縄張りを図面に書き起こす。十分下見はしたので、ささっと書き上げる。工事は明日の朝からだ。

突然、玄関から「失礼、ご主人を呼んで欲しい」と声が聞こえる、随分と偉そうな感じだ。急いで駆け付けると、役人と首からひもを掛けられた獣人がいた。

「はい、ご用向きは何でしょうか。」「この獣人は遠島行きになのだが、ここで指を直してくれると聞いてな、それで来た次第だ。」「はい、お待ちください。」

「ご主人さま、玄関に」「はつ、聞こえていたよ。早速治療しよう。指を持って来ておくれ。湧水の出口に箱を沈めてあるから、その箱ごと持って来てくれ。」「はい、ご主人さま。」

お待たせしましたと、ご主人さまが言って治療が始まった、妖術で神経と血管と骨を繋いでいく。切り口は絆創膏のようなもので保護する。

「どうだい、繋がった感じは分かるかい、でもまだ動かしてはダメだよ、切り口はそのままだからね。この切り口を保護している布のようなものは、自然と取れるから、それまでは我慢だよ。1週間くらいだ。」

獣人2人は「九尾の狐さま、本当に有難うございました。これで不便な生活では無くなります。」と言って泣いている。ご主人さまは「まあ、治療する約束だったからね。勤めが終って、この街に戻ってきらら、ここに寄りなさい、傷の検分をするから。分かったね。」と言って慰めている。役人は「ご主人どの、面倒をお掛けした、有難うございます。」と言い残して2人を連れて行った。

私は2人の無事を祈って、暫く玄関で手を合わせていた。

今日は全ての段取りが終わったので、オムの部屋の金魚でも久しぶりに見ようと庭にでる。だいぶ大きくなった金魚を見ていると。「はつ、おはよう。」オムの真ん中の顔だけ目を開けていました。いつもの通りの真ん丸の目の可愛い顔です。良く見ると頭の部分が脱皮を始めていました。「オム、起きたんだね。」「うん、これからお着換えだよ、」「そうなんだ、脱皮頑張ってね。抜け殻は私が貰うんだから、綺麗に脱皮してね。」「はーい。分かったよぉ」

「ご主人さま、オムの脱皮が始まりました。」「予定通りだね。後ね、脱皮が完全に終わったオムに、気安く近寄っては行けないよ。」「どうしてですか、お腹が減ってイライラして狂暴化するんだよ。」「運河に出すのはダメですか、」「今日はダメだね、明日は工事だろ。一緒に連れて行って、日向ぼっこさせてあげて頂戴。」「ご主人さま。お腹が減ってイライラして狂暴化中ですよね。」「まあ、そうだな。とにかく日に当てて欲しい。」「ご主人さまぁ。」「まあ、頑張れ、はつ。」

暫くしてから、オムの様子を見に行くと脱皮は完了していた。しかも脱皮の皮を地上に上げてくれていた。しかし、オムの目が座ってる。「はつぅ。お腹が減ったよぉ。お腹が減ったよぉ。我慢できないよぅ。」「分かったから、ちょっと待ってね。」「はつ、ご飯くれるの。」「そうだよ、だから少し待っていてね。」私は、オム部屋の隣の池の竹で編んだ仕切りを外した。隣の池は水草だらけだが仕方が無い。

「オム、魚を飼育している仕切りを外したから、食べられる魚がいるはずだよ、30匹はいるから、今日はそれで我慢しようね。」オムは何も言わずに隣の池に飛び込んで行った、水面がバシャバシャと荒れていたが、暫くして静かになった。

オムが枕の場所に顔を出して、「はつ、ご馳走さま。」「お腹いっぱいになった。」「全然たりないけど、明日は川に行って良いんだよね。だから明日までは我慢する。」

「はつ、ご苦労様、オム、脱皮して大きくなったかな。」「はい、ご主人さま。しっぽの先が底に着きます。」「アム、ちょっとオムを見てやってくれ。大丈夫、はつが魚を与えたので狂暴化はしていない。」ご主人さまにハメられた気がしました。

「ご主人さま、オムですが、体が大きくなったのと、体の金色化が進んでいます。それ以外には・・・、すいません、ご主人さま、今後数回の脱皮後に頭の分裂の気配が有ります。」「ひゃい。7本化だって、まだオムは子供だぞ。」「私も聞いた事がありません。でもこの気配は本物です。」「1柱はその受ける信仰力によって変わると言うが、はつを守りたいという、オムの強い思いが7本化を急がしているのかも知れないな。」「ご主人さま、7本化したナーガをこの屋敷では世話できませんが。」「ゆっくり対策を考えよう。」

「はつ、今日の夕飯もいつもの魚を頼むぞ。」「ご主人さま。全部オムが食べましたが。」「えー。そんな、アム、オムはどこかに捨ててこようか。」

翌日、ご主人さま専用の材木置き場の工事を始める。まだ眠そうなオムをなだめすかして、運河まで連れて行き、工事現場まで運んで貰う。オムは早速空腹を満たすために、大川に向かって行ってしまった。工事内容は簡単、指定場所を10m掘って、土を周りに盛土して平らにするだけ、ただし掘る範囲がべらぼうに広くしたので、数日かかるかな。

せっかくなので、乾いた草を鉈で刈り取る。10往復したら、結構な山になった。後は工事監督で歩き回りながら、完成図を頭に入れて行く。

「はつ、お腹いっぱいになった、少し眠い。」「オム、あそこに草の山が見える。」「うん、見えるよ。」「オムの遊び場として用意したから、遊んで来て良いよ。」オムはふわふわな草の上で大はしゃぎである。眠いんじゃなかったのか。

「はつも一緒に遊ぼうよぉ、ねぇ、はつぅ。」現場監督が遊んでは行けないのだが、オムの機嫌と比較して、遊んであげることにした。草を適当に丸めて投げる、オムが取って持ってくる。オム犬状態で暫く遊ぶ。やがてやっと眠くなったのか、草の山に潜ってしまった。

工事をやってくれている獣人の責任者と話をする。「ここの土はまだ弱いですか、家を建てたいと思っています。」「はつさま、当然弱いですが、ここは湿地を埋め立てたようです。」「どういうことですか。」「海や川を埋め立てた訳では無い、大きな建物は無理ですが、長屋程度なら十分だと思います。」「良く、この場所を選びましたね。掘る方としては大変ですが、この辺りでは大当たりの土地と見ます。」「そうおだてて、日当を上げてくれと。」「違います。本当の話です。それより、あの草の中に潜っているのは、1柱のナーガさまですよね。」「そうです、博識ですね。」「いえいえ、工事を生業としているものは、怪我・病気が一番心配です、ナーガさまは守り神として高名です、是非あやかりたいです。」「いいけど、昨日脱皮したばかりなので、しっかり手を洗うのが条件です。」「はつさま、有難うございます。今日の仕事の終わりにお願いします。」「じゃ、作業の進捗の良い人だけでね。」「はい、全員に伝えます。」

仕事の区切りがついたところで、作業員に5列に並んで貰って、オムの頭をなでて行く。作業員は手を合わせて自分の安全と、友の安全を祈っている。私も作業員の全員の無事を祈って、オムの頭をクシャクシャとなでる。

翌日、オムに大川の集積所にある、お主人さまの材木を15本ほど運んで貰う、その中で4本は高級品にする。目的はノゴギリの試し切り、そして角材にして小舟の製作の準備。明日はアムに来てもらって本格的に製作を開始することにする。

工事の人からノゴギリの経験者を借りて、ドワーフ謹製のノゴギリで材木を切ってもらう。このノゴギリは、一度に2面の切断が可能で幅に差が出ない様にノコギリの刃を固定できる。途中で曲がらない様に、予め材木の表面に直線の筋を入れておけば、その通りに切ることが出来る。

切断面がザラザラなので、カンナを掛けたいし、カンナはあるのだが、使い手がいないので、軽石で表面をこすり、ザラザラだけを綺麗にする。小舟とは言え角材を繋ぎたいのだが、アムに角材を曲げて貰ってからにするので、明日にする、今日はドワーフ謹製のさしがねで墨付けを行う、本数が多いので、結構しんどい。

そして工事現場の守り神の1柱さまは、草山で近くの工事担当を捕まえて、角材を作った際のあまり木材を加工させて、オム犬遊びをしている。作業担当もオム犬が戻ってくるたびに頭を撫でられるので、なぜか行列が出来ている。

本来は注意すべきなのかも知れないが、働いたものから行列に並べる仕切りらしく、現場の士気は異常に高く、作業の進捗は良く、今日を入れて3日で完成しそうだ。

翌日はアムに小舟の製作を手伝って貰う、アムの担当は材木を設計図通りに曲げること、妖術を使って器用に曲げて行く、そのあとは、私が昨日墨付けした追掛大栓継や、腰掛け鎌継ぎを行う為にノミで切り込みを入れていく。

さすがにオム犬も飽きた様で、大きな木材の継ぎ作業を手伝ってくれる。小舟の骨格部分が出来れば側面の板を張り付け、木栓で打ち付けるだけなので、作業が終わった作業員も手伝ってくれて、小舟としての基本構造は完成した。

残りは小舟に乗せる小屋。雨が降っても操舵できるように後部に大きめの小屋を建てる。最後に、アムに水漏れ防止の塗装をして貰い完成。いやぁー。1日で出来るとは思わなかった。明日は、ご主人さまも呼んで処女航海としよう。

ご主人さま専用の集積所も完成し、運河から水を引き込む。やがて巨大な池の完成。小舟もこの池を経由して運河に入る仕組み。

翌日は、ご主人さま、アム、オムとご主人さま専用の集積所の見学である。そして小舟の処女航海である。オムにはもう少し休ませたいのがが、昨日の状態なら大丈夫とアムのお墨付きと、そろそろ気分転換させないと、狂暴化する気配があると言うので、今日から材木引きである。

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