無念、お家取り潰し
[梗概]
江戸後期、筆頭家老をしていた水無瀬源之丞は、藩の経済改革に大きな実績を果たしたが、妬み勢力にハメられて、お家お取り潰しとなる、その影響で異世界に転送されることになる、復讐を誓う源之丞は異世界と現世とのパラレルワールド状態を見つけ、仲間を見つけ、力を付け、異世界上で復讐相手に宿願を果たす。
水無瀬源之丞は、愛宕にある四春藩の上屋敷で平伏していた。奉行家老が長々と評決文を読み上げている。殿様は最上段に座っているが、不満な態度を露骨に示している。しかし状況的に水無瀬源之丞に言い逃れの機会は無く、奉行家老から淡々と結論が言い渡される。
「筆頭家老 水無瀬源之丞、国元での自身の屋敷への賊の侵入と、家族惨殺の責を取り、お家取り潰しとする。」
殿様は「奉行家老に尋ねたい、水無瀬源之丞は私と同じ江戸上屋敷での職についており、今回の国元での源之丞の屋敷襲撃については、関与することが不可能である、責めを負うのであれば、国元奉行であり、奉行家老のそなたでは無いのか。」
奉行家老は「殿のご主旨、誠に持ってごもっともと考えますが、今回の屋敷襲撃は筆頭家老の水無瀬さまであり、責は無くともそれなりの処分が無ければ、藩内に示しが付かないかと。」
「奉行家老から、そのような言い訳を聞かされるとは思わなかった。奉行の職にありながらの発言とは考えられない。即時謹慎とする。即時に立ち去れ。」
殿様は、周りにいる他の家老には目もくれず、「源之丞、余の力不足まことに申し訳ない、生き残った子供らについては、余が最大限の援護を行い、いつの日か水無瀬家再興に尽力したい。」
「殿、この源之丞、ここまでご配慮を頂いたお言葉を頂けただけでも十分でございます。しかも預かり、差し控えの処置を免除され有難く思います。殿とお会いするのはこれで最後でしょう。今までのお引き立て誠に有難うございます。」
不思議なことに、言い終わると同時に、畳の上で平伏していた水無瀬源之丞の姿が薄くなり、最後は消えてしまった。その場に居た、家老衆含め全員が驚きでその状態を見守るだけだった。殿さまは、必死に「源之丞」と呼び続けていた。
余りの出来事に部屋が騒がしくなったが、「源之丞」と呼び続けることを止めた殿さまが「これにて水無瀬源之丞の処分を終了とする。残された家族に対しては、私の預かりとする。一切の手出しは無用で有る。」とはっきりと言い切ったことにより、場の空気が収まった。