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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第四幕 『乙女ゲームの始まる直前』編
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75話 昔も今も親友だから…

 成人の儀でのやり取り、続きです。親友とは会えたけど…?

 「前世の記憶を思い出したからこそ、今の私はアオーリャでもあるし、蒼でもあるわ。前世を思い出さなければ、悪役令嬢にならないかもしれないけど、ノリックに気付くこともないまま、ヘル様一筋だったはず…」


先程から蒼が語られる『ヘル様』は、『夢導』に登場致します攻略対象、と言えますわ。乙女ゲームをプレイする女性達の代理として、ヒロインが反映されておりますのが、乙女ゲームなのですわ。主人公であるヒロインの恋のお相手は、攻略対象と呼ばれております。


『夢導』のヒロインは、1人です。何方(どなた)がプレイなされても、ヒロイン設定を変更することは不可能でしてよ。攻略対象となる男性は数人おりまして、ルート次第では誰でも攻略は可能ですが、逆ハーレムはできません。


アオーリャの他にも、悪役令嬢は数人登場致します。各攻略対象に対し、悪役令嬢もご用意しております。悪役令嬢とは言えぬ程度のライバルキャラも、ヒロインと攻略対象の邪魔をする役柄は、ございます。悪役令嬢はヒロインを虐めることが、最も重要な役割となるのでしてよ。


 「…そうですわね。物心ついた頃よりわたくしは毎年、その年齢に合わせた過去の年齢分の記憶を、取り戻しております。蒼は何時(いつ)頃、思い出されましたの?」

 「私は何方(どちら)かと言うと、最近になってから…かなあ。初めて思い出したのは10歳過ぎで、その頃まではずっとヘル様のことが、一番大好きだったの。思い出した途端に、自分がヘル様ルートの悪役令嬢だと気付いて、一気に目が覚めた気分よ。ヘル様のことは、兄のように尊敬してはいるけど、何故か恋人になりたいとは思わないわ。特に、ノリックが『日高 恭典』の可能があると、気付いてからは。前世でノリに沢山助けられたから、私もノリを助けたい…」


『夢導』に『カノンフィーユ』は、一切登場しておりません。これはきっと間違いなく、()のお人の所為でしょう。ですが、親友の蒼のことまでは、ご存じなかったようですわね。前世では蒼に助けていただいたのですから、わたくしも蒼を助けようと思いましてよ。序でに、日高君も助けたいですわね。


前世では麻乃にも蒼にも随分と、陰で支えていただいたようですし、現世ではわたくしが()()()()()()かしらね。其れには現世の蒼の状況を、なるべく把握しなければなりませんわね。


蒼は思い出されたのが遅いようですし、まだこれから対策を致しましても、十分に間に合いそうですわ。既にヘル様を避けられているご様子ですし、ノリックの正体も見破られているようですし、『ノリック=日高君』なのでしたら、わたくしも心から歓迎を致します。


…蒼は生まれ変わられても、日高君に恋していらっしゃるのね。わたくしも蒼のことを、申し上げられる立場ではございませんけれども、そのお気持ちはよく理解できましてよ。


 「蒼のお気持ちは、よく理解できましてよ。わたくしも、日高君をお助けしとうございます。蒼のお力にもなりたいですし、今の貴方も…わたくしの力になってくださいますか?」

 「勿論よ。昔馴染みという理由もあるし、花南音を放って置けないわ。昔から親友だと思っていたし、今の花南音とも()()()()()()親友だよ。」

 「……??………わたくしを放って置けない…?」


この世界の蒼と日高君の存在を知り得て、わたくしも放っては置けません。親友との再会は、わたくしに思わぬ力を与えましたのよ。このようなところで、お2人の力にわたくしもなれますとは。わたくしの提案に、蒼の方からも少々食い気味に、ご協力を申し出てくださいましたけれども。


わたくしを…放って置けないとは、どういう意味なのかしら?…前世の時に麻乃からも、似たような言葉を賜りましたが、何気に引っ掛かりますわね…。今まで甘やかされて育ったお嬢様、『カノンフィーユ・アルバーニ』なら兎も角も、小学生の頃から会社を盛り上げて参りました『花南音』は、子供らしさのない子供だとは、自覚しておりました。其れなのに…?


 「……あ、うん。え~と、何て言うかな…。社長令嬢としては文句のつけようがない、立派なご令嬢だったんだけど。普段は逆にぽやぽや~として、庇護欲を掻き立てられというか何と言うか…」

 「…ぽやぽや?…蒼がわたくしに、庇護欲を感じておられましたの?」


…前世の頃はどうお伺いしようと、誤魔化されましたわね。まさか蒼も、こう思っておられたの?…ぽやぽやの意味は測り兼ねますが、いえ…意味は何となく分かりますが、()()()()()()守るべき庇護欲を、わたくしに向けておられたとは…。


 「……はあ~。相変わらず花南音は、警戒心がなさすぎなんだよ。今だって私のことを疑わず、直ぐに信じたぐらいだし……」






    ****************************






 「貴方が間違いなく『蒼』だと、確信を持てたからですわ。わたくしの勘は昔からよく、当たりますのよ。それは貴方も同じなのでは、ございませんの?」

 「いやいや!…そういうことじゃないんだよ。『カノン』と呼ばれる人が、前世の花南音と全く同じ挨拶をするなんて、別人だとは()()()()()()()()だよ。花南音本人は気付かないんだろうけど、それほどそっくりだったよ。警戒心に関しては相手が私じゃなくとも、同じ前世の記憶を持つ者が現れたら、それだけでその人を信じそうだよね、花南音は…」


蒼は松園中等部に入学されるまで、一般的な人生を歩まれたようですし、松園本来の教育方針をご存じないことでしょう。松園小学部から入学致しますと、護身術などの武道というハードな授業も、学ばねばなりません。当然のことですが、その授業の傍らで何事に関しても警戒心を持つよう、指導を受けますのよ。


わたくしも麻乃も松園の小学部出身ですし、各自の家庭でもそういう術を学んでおります。それを踏まえましても、わたくしはこれでも、見る目はあるつもりでしてよ。前世の記憶を持つ者を信じることと、どう関係がございまして?


 「…今のわたくしにも、幼馴染の親友がおりますの。その彼らの何人か、過去の日本の記憶を持たれておりますわ。当然ながら、信じておりましてよ。」

 「………えっ!?…他にも…前世の記憶を持った人達が、居るの?…私の周りには誰も、居ないみたいだけど……」

 「偶然ではなく、必然なのでしょう。近いうちに蒼にも、彼らをご紹介致しますわね。実は…本日、幼馴染の数人が成人の儀に、ご出席をなさっておりましてよ。本日のような大勢おられる所では、ご紹介は致しかねますわ。」

 「……花南音の…幼馴染が…?」


わたくし達の他に、転生者がおられるとお知りになったことで、蒼は大きく目を開かれ、ポカンとされました。混乱されたのか、矢継ぎ早やに疑問を投げてこられます。フェミリア子爵令嬢の蒼と、侯爵令嬢のわたくしとは身分差がございますし、侯爵家と子爵家では殆ど縁がなく。


もう少し早くわたくしが探したり、何らかのアクションを取ればと、後悔ばかり押し寄せます。今更のことですけれども、そう思わずにはいられません。流石に本日は、王家主催の成人の儀の会場ですし、誰かがわたくし達の会話に、耳を傍立てておられるかもしれず、ご紹介は()()()()()()なりますが。


…蒼の周りには、転生者が誰も居られなかったのね。でしたら、どれほど心細かったことでしょう。わたくしには…リナもエイジもリョーさまも、同じ前世の日本からの転生者が居られましたので、どれほど心強かったことでしょう…。


嘘を知らない馬鹿正直なエイジは、大声に出されてしまうことでしょうね。リナも素直なお人ですし、言動に出されてしまうことでしょう。リョー様は普段から大人なお人ですので、特にご心配しておりません。但し、既に成人なされた彼は、当然ながら此処にはおられません。リョー様と同年齢のトキ様も、また同じく。


…アリー様は転生者ではございませんけれども、蒼とは仲良くなっていただきたいですわ。内気で大人しい淑女のアリー様ならばきっと、蒼の良いお手本になってくださいますもの。蒼には是非とも、ご令嬢らしくなっていただきませんと。


前世とは多少異なりますが、今のこの異世界の方が、より礼儀作法に厳しいと言えますわ。貴族である以上、貴族の端くれの地位であろうとも、成人した者には正しい礼儀作法が求められるのです。前世から礼儀作法が苦手な蒼は、転生後も未だ苦手のご様子ですが、こればかりは諦めていただきます!


 「蒼を皆様方にご紹介するに当たりまして、失礼にならないよう最低限の礼儀作法を、覚えていただきます。今日から暫く、わたくしのお屋敷に滞在していただきましょう。貴方のご両親には、わたくしの父から許可をお取り致しますわ。」

 「……えっ!…礼儀作法?!…花南音の家にお泊りするのは、積もり積もった話もしたいし、嬉しいよ。でも、礼儀作法の特訓なのよね…?」

 「ええ。今の貴方では、恥を掻きますもの。わたくしの知り合いは、高位貴族のご子息ばかりですし。貴方の前世は一応ですが、松園に通うお嬢様だったのですから、恥を掻かない程度に復習をしておきましょう。」

 「…うっ…………」


蒼蒼が本気で嫌がると知りつつ、礼儀作法のレッスンをして差し上げようと、わたくしは多少強引に申し出た次第ですのよ。わたくしからよりも、侯爵当主からの申し出の方が、子爵家もお断りできませんわね。蒼には()()()()()()()()()()が。


 「…うう~。礼儀作法を教えてくれる時の花南音は、物凄~く厳しくて怖いんだよね…。普段は物静かで穏やかなお嬢様なのに、礼儀作法のことになると何故か、普段と180度変わって鬼教師だし。昔のことを思い出すと、吐きそうだよ…」


…蒼ったら、全部聞こえておりますわよ。久しぶりに腕が鳴りますわ。蒼は教え甲斐がございますし。楽しみです……


わたしくも何だか、楽しくなって参ります。蒼も…覚悟してくださいましね?


 カノンとアオの身分の差が、2人を隔てていたようです。前世同様にアオの礼儀作法の特訓を、カノンが手ほどきすることになりましたが…。カノンがちょっとSっぽいような気も……?


婚約者トキは今回も出せず、無念……

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