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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第四幕 『乙女ゲームの始まる直前』編
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73話 出会いと再会は突然に

 前半と後半では、視点が異なります。残念ながら今回も、婚約者は未登場…。

 同年齢のご令息ご令嬢全員が、成人の儀にご出席されておられます。遠目に拝見致しましても、何人かのご子息のお姿に、見覚えがございました。正確に発言致しますならば、今から1~2年ほど先の未来のお姿を。


なるほど…。此方のお方は…誰々で、彼方のお方は…誰々と、少々ミーハー気分で観察致しておりました。あまりにもわたくしが描いた通りで、とても驚きましたのよ。元々、わたくし1人が思案したものではなく、あの方の意見をメインに考案致しましたが、本当は…こういう事情がおありでしたのね。


道理で此方の状況に、お詳しかったのですね。わたくしにまで内緒にされておられたことに、今更ながら怒りが込み上げておりますの。どうして正直に、教えてくださらなかったかと……


わたくしが信じないという可能性でしたら、非常に不愉快なことですわ。わたくしを信じられなかったのは、貴方の方ですわ。それとも、わたくしに絶対に知られたくない事情が、ございましたの?…貴方と共にわたくしも、様々な障害を乗り越えたいという願いを、無視された気分でしてよ。わたくしのこういう性格を一番存じ上げたのは、他でもなく…貴方でしたのに。


貴方を恨みがましく思いましても、今更なことでしょう。しかし、気付いてしまったことで、再び 相 見(あいまみ) えるのが怖くなったのです。この世界の貴方がわたくしの良く存ずるお方とは、別人であられると理解しておりますので。


今の貴方に昔の想いをぶつけても、わたくしの本来の想いが晴れることは、ございません。それでも、わたくしにとって大切な貴方は、()()()()姿()()()()()貴方でしか、ないのです。例え…生まれ変わろうとも。


今でも瞼の裏に思い浮かぶ情景は、貴方と過ごした日々ですわ。貴方が時折悲しまれることに、こういう意味がございましたのね…。貴方が仰られたお言葉の中に、このような意を含ませ…。当時は全く理解できませんでしたが、今ならば…理解も致します。まるで、パズルのピースを組み合わせるかの如く、ピタリと全てが当て嵌まりましたのよ。


以前の貴方は今のわたくしと、同じお気持ちでしたの?…自分の目前にいらっしゃるお人は、自分が存ずるお人とは、厳密には別のお人です。同じ世界に存在しながら、別のものをご覧になられていたのですね?


過去と未来という道を歩みつつも、()()()()()()()()人生を互いに歩まなければならず、貴方とわたくしは何時までも何処までも、平行線を歩んでおりました。例え道が交わらずとも、今度こそ歩み寄れますかしら?…以前の貴方は、お1人で何と闘おうと、されていらしたの?…わたくしは、成す術もありませんの?


現世でただ一度、成人の儀の真っ最中ですのに、未だ過去の想いに囚われてしまいましたが、本来ならば現世のわたくしには、不必要なものですわ。ですが、現世と過去が繋がっていることに、漸く気付いた次第です。


昔のわたくしをご存じだった家族は、此処にはおられません。共通した過去を持ち合わせた方々とは、前世の思い出を語っておりますわ。ですが、()()()()()()時間が長かった方々を、今のところ見つけられておりません。それらの事情で稀にわたくしの心の中へと、隙間風が通っていきますのよ。


過去へと想いを馳せたわたくしは、いつしか知らぬうちに、バルコニーへと移動していたようでして、そこには他に先客がおられます。何か呟いておられるようですが、独り言なのでしょうか?


王宮の庭の方を見られ、此方に背を向けたそのお方は、わたくしからは後ろ姿しか拝めません。何故か酷く懐かしい気分に、なりましたのよ。背後からジッと見つめますれば、わたくしとほぼ同じ背丈の小柄な少女でしたわ。如何やら、知り合いのお方ではなさそうです。わたくしの知り合いでは、リナ、ユイ様、アリッサ様だけですし、お3人共もっと背丈が高くございますもの。


…わたくしの背丈が低すぎるのもありますが、目の前の少女はわたくしとほぼお変わりなく、現世では珍しく小柄な少女ですわね。…あらっ?…前世でも、同様のことがございましたような。


 「…ああ、もうっ!…これ、どういうことなのよ!?…これは絶対、あの例の乙女ゲーム『運命の夢に導かれて』の世界よね?…これが転生?…どうして?…花南音や麻乃は、此方に来ていないのかな……」


不思議に思いつつ、彼女の背中を観察しておりますと、少女の呟きがわたくしの耳に入って参ります。その中にわたくしの名が、何故か含まれておりましたのよ。






    ****************************






 「………はい?」

 「……っ!……えっ!?」


この時、はっきりと聞こえたわけではございませんが、わたくしにはこう聞こえたのですわ。彼女の呟く声の中に、わたくしの名も混じった気が致しまして、思わずついつい返事を致しましたのよ。


同い年の少女は独り言を仰っただけで、此処に誰も居ないと思われて、独り言を呟かれた筈ですわ。ところがわたくしが反応致しましたので、肩をビクッと揺らし、物凄い勢いで振り向かれたのです。あまりにも貴族令嬢らしからぬ動作に、わたくしも同様に驚いてしまいましたわ。肩は揺らしておりませんけれど。


……あらあらっ。王家が開催なされた成人の儀で、勢いを付けて振り向くような振る舞いは、貴族令嬢らしからぬ所作でしたわね…。間違いなく貴族令嬢と思われますけれど、何処のお家柄のご令嬢なのかしら?


わたくしはつい前世の癖で、見知らぬご令嬢の振る舞いを、少々厳しめに評価してしまいました。けれども…何方(どなた)かに、似ていらっしゃるような気が致しますのは、わたくしの思い過ごしなのかしらね……


後ろを振り返られ、ご自分の後ろに居るわたくしをご覧になり、猫の目の如くぱっちり御目目を更に大きく見開かれ、わたくしを呆然と見つめておいでです。美形が非常に多いこの国で、目の前のご令嬢は大層お可愛らしいご容姿でしたわ。この国で最も多いとされる茶髪の髪に茶色の瞳で、お顔の割に大きめの瞳をジ~と、わたくしに注いでおられます。


 「……あ、あの…貴方は、誰ですか?」

 「大変失礼を致しました。我が名を呼ばれたように、感じましたので…。」

 「………えっ?……我が名?」

 「お1人でお寛ぎのところ、お声をお掛けするような失態を起こし、申し訳ございませんでした。考え事をしておりましたら、知らぬ間に此処まで参りましたの。直ぐに立ち去りますので、ご容赦くださいませ。」


わたくしを警戒したというように、毛を逆立てておられる姿に、見受けられましたのよ。返答を返したとされるわたくしの失態を詫び、わたくしはこの場を後にすべく、貴族の礼儀らしく()()()()()()()()カーテシーを披露し、体の向きをくるりと回転致します。さすればご令嬢が然も慌てたように、話し掛けて来られまして。


 「……あ、あのっ!…ちょっと…待って!」

 「……はい?」


何故だか物凄く慌てたように、わたくしを呼び止められたのです。一体どうなされたのでしょう…と、わたくしは振り返り小首を傾げましたのよ。すると何故かご令嬢がハッとされて、わたくしの前に歩みを進めて来られて。他の方々の視線を気にされた様子で、周りをキョロキョロされた後に。


 「…私はファミリア子爵家の次女、『アオーリャ・ファミリア』と申します。」


……まあ、子爵家ご令嬢でしたのね。わたくしの家とは少々身分差があり、両親のお知り合いでもない限り、お誕生会にご招待することはございません。道理でお見掛けしたことが、ございませんでしたのね。


本来、ご令嬢のご身分が下位とされますので、わたくしが先に声を掛け、またわたくしが名を問わない限り、お相手は名乗ってはいけません。それが、この国の貴族の礼儀ですわ。勿論、前世で生きてきた記憶を持つわたくしは、特別気に致しませんけれども。但し、他の貴族の方々には、お気を付けてくださいまし。


 「わたくしはアルバーニ侯爵家の長女、『カノンフィーユ・アルバーニ』と申します。宜しければ、『カノン』とお呼びくださいませ。」

 「………っ!!……カノンですって!」


わたくしが名乗った瞬間、驚きの声を上げられるアオーリャ様。本日お会いしたばかりですのに、行き成りわたくしを呼び捨てにされますし、流石のわたくしも目を丸く致しますばかりですわ。お行儀がなっておられないようですね?


 「…もしかして、『乃木 花南音』?…私、『名倉 蒼唯』よ。覚えてる?」

 「………っ………」


悲しそうに語る彼女に、今度はわたくしが目を見開いた番ですわ。頭の中では彼女の声が、繰り返し再生されますのよ。暫しの間わたくしの反応がなく、彼女はがっくりと肩を落とされたご様子でした。()()()()()()のだと…。


 「私の親友の『花南音』では、なかった…?」

 「……蒼………」


今にも泣きそうなお顔で、小声で紡がれた言葉に、わたくしも泣きたくなってハッと我に返りましたのよ。彼女を包み込むように抱き締めてから、わたくしは漸く呼び掛けたのでしてよ。昔の彼女の愛称で…。声が震える所為で掠れた声は、小声で呟くようにしか出ませんが、わたくしと密着した蒼に十分に届き…。


 「……本当に、花南音なの?…また会えたんだね、私達…。ずっと1人だと思っていたから、凄く寂しかったんだよ……」

 「わたくしも…お会いしたかったのですわ、ずっと……」


わたくしの呼び名に答えられたる形で、蒼もわたくしをぎゅっと抱き締め返されましたのよ。わたくし同様、蒼の声も今にも泣きそうなお声でしたわ。実際に2人共にこっそり、涙を流しておりました。過去の自分を知る親友にお会いでき、2人共に嬉しくて嬉しくて、つい本音がぽろぽろと後から後から、溢れて参ります。


こうして、喜びを分かち合うわたくし達2人を、遠くからジッと見つめる人物がおられたとは、当然ながら()()()()()()、知る由もなかったのです……

 主人公達も、成人の儀に参加しています。この成人の儀に出席すれば、この国の成人として認められることになります。


この異世界でまた1人転生者として、新登場人物が今回から出てきました。この人物は現代版で、既に登場した人物でもあります。これで転生者がまた1人、追加となりました。

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