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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第三幕 『転生する前のお話 ~前世での日常~ 』 編
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70話 あれから…色々ありまして

 今回、主人公視点ではありません。前半・後半共に、第三者視点です。

 「……蒼、俺はお前のことが、知り合った頃からずっと好きだっ!…俺と付き合ってほしい。」

 「…えっ!?………はい。私も、ノリ君のことが…好き…。」

 「…本当かっ!……そうか、俺達は両想いなんだ…。すごく嬉しい……」


この日、恭典が漸く決心し告白すれば、蒼唯は目が飛び出さんばかりに驚き、普段の様子とは違うモジモジとした態度で、小声で告白に応じた。蒼唯が彼を好きだと思っても、肝心の恭典の気持ちが分からず、また自分自身にも自信が無いと、ついつい…恭典につんけんしてしまう。格式のある恭典の家とは身分も違い、日舞で活躍中の彼はイケメンでモテると、本気で好かれる自信もなくて。


恭典も同じく、ずっと自信がなくて。男子に其れなりにモテている蒼唯は、容姿も背丈も愛らしいタイプに含まれ、本人が思うほどに悪くないというのに、全く無自覚であった。恭典としては彼女といい関係だと思うものの、友人ぐらいにしか見られていないかもしれないと、告白するのを躊躇った。


…蒼に告白をすれば、もう以前のような関係には、戻れないことだろう。そうなるのが怖くて、勇気が出なかったけれど…。両想いだったんなら、もっと早くに勇気を出せば良かったかな…。


蒼唯が嫌がらせを受けていたと知り、同じ学校に通うことになり、何時でも会える環境になった途端、彼女を独占したくなった恭典は、こうして年密な計画を練り、彼女をさり気なくデートに誘い、景色の良い場所で告白すると一大決心して。日舞の練習で忙しい彼は、中々時間が取れないながらも、計画した通りにデートに誘って告白したのである。


その甲斐もあり、両思いであると分かったことが、これほど嬉しいとは…。恭典は勢いに任せ、思わず蒼唯を抱き締めれば、彼女の顔は真っ赤に染まっていく。普段の彼女ならば、「何するのよっ!」と怒りつつもぶん殴るだろう。両想いと知って嬉しいのは、彼女も同様だ。唯、()()()()()()()()()()で…。


こうして漸く恋人になった2人は、翌日は仲良く手を繋ぎ登校する。蒼唯は普段通りに登校したかったけれど、恭典が強引に手を繋ぎ強行した。蒼唯と恋人になったのだと、付き合うことになったのだと、学校中の生徒に知らしめようとして、彼は意外と計算高い部分を持っていた。当然の如く、彼の日舞ファンの女子達は、大騒ぎすることになる。


恭典の家・日高家は、古くから日舞を世襲する家系であり、彼は嫡男なので次期跡継ぎでもあった。彼個人への日舞ファンも多く、その中には本気で日高家の妻の座を狙う、家柄の良い女子も何人か存在し、日高家との縁を虎視眈々と狙っていた。


 「到頭、お付き合いをなさいましたのね。」

 「仲が宜しくて、羨ましいですわ~。」


自らの教室に各々分かれた途端、2人は他の生徒達から囲まれる。蒼唯のクラスには花南音と麻乃江が居るので、蒼唯にも好意的な言葉を掛けてくれる。恭典のクラスも何方かと言えば好意的だが、問題があるとすれば外部生クラスの方だろう。


 「何で…あんな家柄の子が……。」

 「私の方が、お似合いだわ。」



その通り、外部生クラスでは内部生クラスとは反対に、2人の交際を認めないという空気が、漂っていた。実際に1人が貶したのを筆頭に、蒼唯を貶める言葉を口に出す女子生徒達も、何人か居て……


以前に蒼唯達に絡み、罰を受けた女子生徒達も()()()()()()()()()、苦虫を嚙み潰した表情だ。今度問題を起こせば転校となる…と、学園長から忠告を受けており、表面上は大人しくなっている。


 「皆さん、お静かに…。日高君と名倉さんの件ですが、日高家のご両親からは今後正式な婚約をなさると、お伺いしております。お2人が親公認であるということを、十分にご理解されますようお願い致します。この件に関し異議を唱える者は、理事長から転校を申し付けられることとなります。日高君も名倉さんも共に内部生ですが、松園では内部生を最優先と致します。外部生の皆さんは内部生には関わらないよう、言動には常に慎重にご注意ください。」


外部生クラスの担任教師は、朝のホームルーム時に意外な忠告をした所為で、外部生達はほぼ全員が言葉を失くす。日高家の権威と理事長権限を各々、最大限に利用した形であった。


理事長は単に寄付金だけでは判断しないが、遠田家と乃木家に逆らう者は容赦しないのだという内容は、入学前にそれとなく忠告されていた。しかし、こうまで外部生の自分達の家柄を軽視されるとは、思わなくて…。それなりに上位の良い家柄である外部生には、他の学校ではチヤホヤされていただけに、こうまで軽んじる扱いには慣れていなかった。


内部生は特別だと強調されては、流石に誰も何も言えない。高等部から松園に入学する際、内部生に必要以上に関わらないよう忠告されていたが、改めて自らが体験することで、重みを感じていた。あれほどに大騒ぎをして、交際を反対する勢いであった外部生の教室では、どのクラスもシ~ンと静まり返っている。


松園に入学する為に、()()()()()()()()()()()()()、全て無駄になる…。そう思った生徒達は、ここは…大人しくする方が得策だと、口を噤んだのであった。






    ****************************






 「蒼は全く気付いておりませんでしたけれども、日高君とは両想いだと丸分かりでしたのよ。少し前から、花南音でさえ気付かれておられますわ。」

 「…えっ?!……ええっ!?…2人共、知っていましたの?」

 「ええ。蒼と日高君は、非常に分かりやすいのですもの。麻乃が教えてくださった小説などの恋人達と、そっくりだと思いましたのよ。」

 「…………」

 「あら、あら…。花南音からそう申されますと、蒼も形無しですわねえ。」


麻乃江から疾うの昔に気付いていたと言われ、花南音からも典型的で分かりやすかったと言われて、蒼唯は仰天しつつもぐうの音も出ない状態だ。鈍いと思っていた花南音よりも、自分の方が鈍かったという事実に、蒼唯は本気で凹んだ。


…ううっ。恋愛に鈍い筈の花南音にまで、見抜かれていたなんて…。結局、私が最も鈍かったんだね…。麻乃ほど恋愛に敏感ではなくとも、花南音ほどには鈍くないと思っていたのに……


蒼唯が1人凹んでいた一方で、麻乃江は今度こそは身分に関係なく、自由に生きようと思った。家族には前と同等に恵まれないが、友人には恵まれたことに感謝しつつ、親友の幸せを自分の幸せのように感じ…。彼女はこの状態を楽しむも、それを邪魔する人物が現れる。


 「…へえ〜。君のお友達も、漸く付き合うようだね。乃木さんも何れは…時流さんと付き合うだろうし、君は他に…誰か好きな相手でも、居るのかな?」

 「…君と、呼ばないで下さいます、成野宮様?…これでも、鈴宮という()()()()()()()()()()()()()()。」


花南音は仕事に忙しく、蒼唯も恭典とのデートで、先に帰っていた。毎回1人の時を見計らい、律夢は揶揄うように絡むので、麻乃江は敬遠している。彼氏どころか好きな人も居ないのか、そう言われたようでキレた麻乃江に。


 「…名前で呼べばいいのか?…じゃあ、麻乃さんは、気になる異性は居る?」

 「……はああ?!…何で行き成り、下の名前呼びなんですの?…そこまで仲良くなりました覚えは、ございませんが?!」


麻乃は軽い嫌みで返したつもりで、下の名前で呼ばれると予想だにせず、仰天してしまう。一瞬、素の表情に戻った麻乃は、目を丸くする。律夢がどういうつもりなのか分からず、警戒心から麻乃江の口調はトゲトゲしくなる。それに対し律夢は軽く肩を竦め、「何でそう、突っ慳貪なんだ…」と溜息を吐きつつ呆れた口調だ。


 「…それで、居るのか居ないのか、何方なんだ?」

 「…何故わたくし個人の事情を、成野宮様にお話せねばなりませんの?…別に構いませんが、三次元にはおりません…。」


まるで犯人を追い詰める刑事の如く、律夢は真面目で真剣な顔つきになり、麻乃江を問い詰める。麻乃江はどこか納得がいかないものの、彼女より年上で家柄も上位の律夢を、文句を言いつつ彼の顔を立て。今日の彼は様子が違うと、内心では困惑しながらも…。


…わたくし、格好をつけたいとは思っておりませんし、今のわたくしには恋のお相手なども、必要ございませんもの……


強がりではなく、本心からそう思う。時流も碧琉も、彼女の好みではない。昔の婚約者はどうでしたかしら…と考えても、婚約者の顔も全てがぼんやりとして、はっきり思い出せない。()()()()()()()()()()()()と、麻乃江には感じた。時流のように探したいと思っておらず、本気で思い出したいとも思わない。


 「……君にそういう人が居ないなら、俺と付き合ってみない?」

 「……っ!!……はいっ?!………」


律夢は特に表情のない不愛想な顔で、さらりととんでもないセリフを告げたのであった。目を大きく見開き暫く言葉を失った麻乃江は、ハッと我に返った後も何を言われたか分からないという状況で、思わず訊き返すような声を出す。


その麻乃江の反応に納得できず、更に不愛想で不機嫌そうに眉を顰め、律夢は麻乃江の目の前に詰め寄って来る。律夢に詰め寄られ、思わず混乱する麻乃はギョッとしつつ後退るも、彼に校舎の壁まで追いつめられ…。


 「だ・か・ら!…俺と付き合おうか…と、いうことだよっ!!」

 「………!!!………」


到頭もう下がれなくなるまで壁に追い詰められ、麻乃は自分の耳を疑う。目を大きくパチクリさせ…。完全に返す言葉を失って。


……ええっ!?…誰と誰が、付き合うというの!?…わたくしと成野宮様が、まさかの恋人に???………冗談…ですわよね…?


現実が漸く理解出来た頃、「何で、そうなるの!?」と力一杯に心中で叫ぶ麻乃江には、現実を注視できず。こんな()()()()()()()()()()()()()告白は、認めたくないのだと……


この2人が正式に付き合うようになるのは、もう暫く…後になりそうだ。

 今回、主人公カップルは登場しません。代わりに、別のカップルになるかも知れない…人物たちが、登場しています。


花南音が既に時流とカップルになっていますが、まだ誰にも内緒にしており、当然ながら律夢もこの時点では知りません。



※第三幕の本編は、これで終了となります。この後は暫く、番外編となります。第四幕突入は、その後となる予定です。

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