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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第三幕 『転生する前のお話 ~前世での日常~ 』 編
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番外 乙女ゲー制作の事情①

 今回は番外編なので、とある人物視点となります。


ストーリーとしては、前回からの続きですね。

 わたくしはただ今、殿方お2人を目の前にして、睨みつけておりますの。初対面の殿方に対する態度では、ありませんけれど。わたくしも乙女の1人として、このような失礼な態度は取りたくないと思いつつ。本来ならば殿方には、わたくしの可愛い姿を見ていただきたいですわ。今は…物理的に、無理ですが。


このような状況になった理由を申せば、とある乙女ゲームの所為ですわ。わたくしはこのゲームのお陰で、以前の記憶をしっかり思い出しましたの。彼らが制作したというゲームは、わたくしの以前の世界をモチーフにした、()()()()()()()()()()()()()全く別の世界、とも言えるもので…。真意を確かめる為に、制作者のお2人を訪ねたかったのです。彼女に頼み込んででも…。


その肝心の彼女は、今は席を外しておられます。わたくしの本意を汲み取られた彼らは、彼女の父親に協力を仰ぎ、父親の元へ行かせられましたのよ。わたくしと同じ記憶のない彼女の前では、そういうお話も出来ないですものね。


 「それで、具体的には…何を、僕達に言いたいのかな?」


八代様が誤魔化すなと含みを持たせられ、わたくしに話し掛けられます。相も変わらず、彼女以外の女性にシビアですこと。まあ、わたくしも同類のタイプですが。そう来られるのでしたら、わたくしも…ズバリと()()()()()()()()()


 「お2人が作製されたゲームは、異世界の実話を含むお話ですわね。色々と手を加えておられますが、真実と異なる要素も見られます。もしかしてお2人も、以前の記憶をお持ちなの?」

 「……っ!?………」

 「…………」


わたくしの本題に、先程初対面のご挨拶を交わしたばかりの高白様が、大きく目を見開き息を呑む仕草をされました。その一方で、八代様は不敵な笑みを浮かべて、わたくしに挑むような視線を向けられます。やはり、そういうことですのね。間違いなく目前の殿方お2人も、わたくしと同じ異世界からの転生者なのですね…。


 「…なるほど。他にも居るだろうと思っていたが、君がそうだったとは…。碧琉さんも僕の作ったゲームをされて、思い出されたようだけれど。今の君みたいに、アプローチする人物も出て来る可能性は、以前から考えていた。」

 「…それで咄嗟に、彼女を退けたと?」

 「ああ、そうだよ。まさか君が…そうだと思っていなかったが…。ところで…君の正体は、誰なのかな?」

 「わたくしが…名を名乗れば、貴方方(あなたがた)も名乗ってくださいますの?」


こうして、以前の自己紹介が始まりました。八代様の正体は何となく分かっておりましたわ。けれども、高白様は…想定外でしたのよ。意外な盲点でしたので。また逆にわたくしは、お2人には無言で返されましたわ。如何やら、わたくしも彼らには想定外のようでしたのね。それほどに、意外なのかしら…。


以前のわたくしは、本当に大人しい少女でしたから、意外に思えるのかもしれませんね。これでも中身は、殆ど変わっておりません。しかしながらそれは、他の皆様にも当て嵌まりますかと…。


姿形が西洋人っぽい人種から日本人に変更され、身分も全く()()()()()()()()()()からね。見た目では、判断は出来かねます。中身の性格も、住む世界や身分が変わりますと、多少の影響を受ける模様です。現在の父親は多少性格に問題のあるお人でも、少なくとも以前の両親よりはマシですわ。姉と弟とは仲が良く、母もわたくし達子供に優しいですもの。


以前の両親は我が子に殆ど興味もなく、姉達も意地悪などはしなくとも、仲が良いとは言えなくて…。両親は政略結婚でしたから、仕方がありませんよね。今の両親は恋愛結婚ですし…。


 「ああいう人だけど、わたくしには優しかったのですよ。会社を大きくすることに夢中で、今の目標にされてしまわれましたが…。」


母は、そうぼやいておりました。それでも夫婦仲は、良好なのですわ。あの父も母には、弱いようでして……。






    ****************************






 「君が、あの頃の大人しいご令嬢だったとは…。以前の碧琉さんにも驚いたけれども、君は…化けたよね?」

 「八代様は、案外と失礼ですわね…。彼方(あちら)ではわたくしの両親も姉達も、仲が悪いとまで行かなくとも、仲が良いとも言えませんでした。わたくしも自分自身に、自信が持てずにいましたわ。此処では家族とは仲良しですし、わたくしの意見も父以外は聞いてくださいますもの。それに…彼女と出会い、わたくしも変わることが出来ました。今のわたくしは彼女の為ならば、何でも出来そうですわね。」

 「……おい、おい。彼女の周りは、君達みたいな()()()()()()()()()()()、寄って来ているじゃないか…。お前達、疫病神みたいだぞ?」

 「…高白様はそれほど、お変わりないようですが…。ああ、でも…前よりも明るくなられたような…。剽軽な性格に、なられたのかしら?」

 「…今は、鈴宮さんだったな。随分と、言いたい放題な性格になったよな…。」

 「……ふふふっ。お褒めいただき、ありがとうございます。」


見事に、三者三様の意見でしてよ。以前とは異なって、高白様は素直な性格になられましたようですわ。それなのに…変ねぇ。わたくしもずっと素直になりましたのに、()()()()()()()()()ようですの。八代様だけは以前から、相変わらずなお人なのですが…。ねえ、鬼畜過ぎません?


 「…本題の続きに入りたいのですが、宜しいかしら?」


わたくしが話題を転じたことに、お2人は明らかに顔を顰められます。高白様は兎も角も、八代様は気付いておられるようですわ。何も反論されず、わたくしの言葉を待っておられますが、反対に八代様が何を考えていらっしゃるのか、わたくしには理解不能ですわね。但し、何をなさろうと…わたくしの邪魔をされなければ、それで良いのですのよ。


 「此方の乙女ゲームは、わたくし達共通の世界で間違いありませんわね。しかしながら、登場人物や婚約者などの細かい情報の設定が、何故このように以前とは異なるのですの?…それに八代様は、ご登場されておられないですね?…これらには一体、何の意味がございますの?」

 「ああ、そうだね。今の君ならば、当然そう思うだろうね。彼女と出逢う以前から僕は、ある程度の明白な記憶を持っていた。出逢ってからは彼女を守る為、以前の彼女の言葉を思い出しながら、慎重に準備を進めて来た。この設定は彼女から聞いていた、内容なんだよ。但し僕も、全てを覚えている訳ではなく、覚えている分に関しては、変えたくとも変えられない…。せめて自分達を登場させないように、そういう設定をした。彼女にとっては、此方が前世だからね…。何が起こるか何が変わるかも判断出来ないし、油断も出来ない。完全に守り切るには、ゲームと言えども登場させられない。」


乙女ゲームの件で一番気に掛かる真相を、わたくしが核心を問い質しますと、八代様はご説明されました。彼女が語っていた、設定なのだと…。然も、わたくし達共通の世界で…。


彼方に、彼女が…おられましたの?…まさか、あの少女が彼女なのですの?…あの少女のお顔が浮かんで参ります。確か…少女の名前は。……ああ、そうなのね。そういうカラクリでしたのね…。


 「……まさか、貴方は…。当然、わたくしのこと、覚えていらっしゃらないのですね。寂しいことですが、また初めから仲良くしていただけますか?…こうして巡り合いましたこと、心より嬉しく思いましてよ。」


 「…わたくし、存じておりますわ。貴方はとても大人しいお人でも、芯の強さは誰にも負けない心の強さを、お持ちですのよ。」


 「決して我が儘とは、思いません。こうしてわたくしを頼ってくださり、嬉しいですわ。いつもはわたくしを見守ってくださる貴方に、感謝しておりますわ。」


わたくしに悲し気に話し掛けられた少女を、ふと思い出しましたのよ。そうして少女との思い出が、ドンドンと溢れ出して来るようでして。当時のわたくしは、全く理解出来ずにおりましたが、今のわたくしには…()()()()()()()()()()()、漸く理解が出来ましたのよ…。


わたくしは暫し呆然とし、言葉を失いましたわ。…なるほど、そういう事情でしたのかと、やっと理解できましたわ。今のわたくしは、当時の少女と同じ気持ちを、抱えておりますわ。永遠に通じない、一方通行の思いを……。


わたくしは思わず唇をギュッと噛み締め、涙が込み上げて来そうになるのを、我慢したのです。あの時の言葉の意味が、漸く理解できましたのに。その状況をお伝えする術が、もう何も…ございませんのよ。わたくしにお伝えくださった人物は、今もすぐ傍にられるようで、此処にはもうられない人物なのですわ。


全く同じ人物と言えるのに、全く異なる人物でもあるのです。貴方を側で見守った人物と、わたくしを傍で支えた人物は、永久に交わることの出来ない別の世界に、住んでおりましたのね…。


…ああ。今のわたくしは、此処では後悔しない人生を、送る予定でしたのよ。それなのにもう既に、後悔をしておりましたのね…。そして、わたくしが貴方に惹かれたこと自体も、全てが運命でしたのね?


 「…幼い頃からわたくしには、漠然とした記憶のようなものがありました。それが何なのかはずっと分からず、唯々この世界のあらゆる物が珍しく、鈴宮家の令嬢としては馴染みのないものにも、乙女ゲームのその1つなのですが、夢中になってしまいましたのよ。これらはきっと、以前のわたくしの存在があるからでしょう。まさか…わたくしと同様の記憶を持つお人が、他にも居らっしゃるとは…然も身近におられ、驚きましたわね。そして…彼女も、懐かしいと思った筈ですわ。彼女の隣に居りますことが、これ程に居心地が良かったのは、必然でしたのね。」

 「…そうだな。彼女は相変わらず、変わらない…。」

 「…2人共、彼女は僕の大切な人だからね。そこのところ、忘れないでね?」

 今回は、麻乃江視点・前編となります。


時流と碧琉と麻乃江の3人は、実は…以前は同郷という内容でした。乙女ゲームを切っ掛けに集まった形ですが、今後も同郷の人物は増えるかも?


今回は前編なので、次回は後編の予定です。

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