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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第三幕 『転生する前のお話 ~前世での日常~ 』 編
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65話 貴方の優しさの裏側

 いつも通り、花南音視点となります。


彼女達が制作した乙女ゲームが、愈々発売されたその後のお話です。

成野宮様に助けていただいた後、麻乃の微妙な発言で、成野宮様が若干引き気味になられ、その瞬間を狙うかのように麻乃が動き出されます。わたくしの片手を取られた麻乃は、一瞬シ~ンとなりました()()()()()()()()()()()()()()、わたくしを引っ張られて行こうとされますのよ。


 「さあ、さあ、行きましょう。折角余裕を持って教室を出ましたのに、余計な時間が掛かり過ぎて、移動が間に合わなくなりそうですわ。急いで移動しなければ、なりません。成野宮様、これにて失礼致します。」


そう仰ると成野宮様に軽く会釈をされ、わたくしの手を引かれたまま、ズンズンと先に進まれます。わたくしと蒼は慌てて同じく会釈を返しまして、蒼は後から付いて来られます。


成野宮様は呆然とされたまま、此方を見つめておられましたけれど…。普段の動作とは異なる麻乃の素早い切り替えには、非常に驚かれたご様子でしたわね。麻乃は時々なのですが、このようにスイッチが入りますのよ。わたくしも彼女の変わり身には、時折付いて行けません。彼女のスイッチが入りますのは、大抵はわたくしに関係する事情で、お怒りになられた時でしょうか…。


最近は蒼に関することでも、お怒りなられておられますかしら…。付き合いが長い分だけ、わたくしに関することが一番、スイッチが入りやすいようでしてよ。今までも彼女が守ってくださることには、わたくしも何となく気付いておりました。


麻乃ばかりではなく、トキ君やわたくしの父からも、そして杏里紗ちゃんとそのご家族からも、皆様から守られてきましたと…。今回の件でそれがよく、身に沁みましたわね…。これまでのようにわたくしが、我が社の仕事に熱中することが出来ましたのは、沢山の周りの人々が、わたくしを見守って下さったからなのですね…。漸く最近になって、気付きましたのよ。


我が社のパーティにも出席不可とされました理由は、わたくしのことを案じてくださったのでしょうね…。碧琉さんと出会った切っ掛けのパーティで、わたくしに不届きなことをされた者の一件は、碧琉さんの語られたお話から、結局バレてしまいましたのよ。わたくしと出会った成り行きを、ご入社された彼にトキ君が尋ねられたようでして、碧琉さんは正直にご報告されたそうですわ。そこは…大人の男性として、()()()()()()()()()()()()ませ…。


 「…いや、いや、あれは無理だろ?…下手に誤魔化せば、俺が抹殺される。」

 「…トキ君はわたくしを、心からご心配してくださっただけで、そういうお人ではございませんわ。」

 「…いいや、時流(あいつ)を甘く見てはいけない。確かに、お嬢さんには本心から優しい奴なのかもしれないが、他の奴にはそうじゃない。…特に、お嬢さんに関する出来事には、時流(あいつ)は人格が変わるんだよ。」

 「…………」


碧琉さんとは、そういうやり取りがございました。その時は腑に落ちませんでしたけれども、よくよく思い返せば、トキ君が冷気を纏っておられた時は、そういう雰囲気でしたと…。…なるほど。そういうことでしたか…。あの冷気は確かに、わたくし以外の他のお人への敵意…でしたのね。わたくしの心の中で漸く、胸にストンと落ちて参りました。全てはわたくしを守る為に、されておられたのですね?


 「…花南音。碧琉さんと涼宮さんからも、全て聞いた。君のお父君にまで内緒で出席するとは、君は…無謀過ぎるよ。君に()()()()()()()()()()()()()、僕は冷静でいられない。何か起きてからでは、遅いんだよ。心配しているのは、僕だけじゃない。君のお父君もこの事実を知られたら、どれほど悲しまれることか…。君はあの後に、何もなかったと話していたけれど、本当は…君を何処かへ連れ去ろうと、無礼者が君に触れたらしいね…。僕の力になりたいという君の気持ちは、僕も本当に嬉しいけれども、それは…危ないことをしてまで、してほしいことじゃない。」


トキ君にはしっかり、お説教をされてしまいました…。わたくしも、安易に考えておりましたわ。反省はしております…。トキ君の為に何かを成し遂げたいと、わたくしも張り切り過ぎたようですわ。全くそのことしか、周りが見えておりませんでしたものね。余計に、ご心配をお掛けしてしまった模様です。


わたくしは知らず知らずの内に、トキ君や皆様方には当たり前のように、甘えておりましたのよ。皆様からのわたくしに対しての甘い扱いを、ただ単に束縛されているように、感じておりました。わたくしの判断が、如何(いか)に子供っぽい思想であったのか、自分勝手な思い込みであったのか…と、漸く気付いた次第ですわ。


 「…余計にご心配をお掛け致しまして、申し訳ございません。わたくしの自分本位な思いでしたわ。本当に、思慮が足りませんでしたわ。」

 「…うん。カノが分かってくれたならば、もういいよ。」


わたくしがしょんぼりとお詫び致しますと、わたくしの身体を引き寄せられたトキ君に、ギュッと抱き締められ…。高校生なったとはいえ、未だ背の低い小柄なわたくしは、トキ君の腕の中にすっぽりと、うずまったのでしたわ……。






    ****************************






 「先日発売された、乙女ゲームの売り上げは、どうなりましたの?」

 「ええ、とても順調な滑り出しですわ。この分ですと、第二弾のゲームを発売するのもいいかと、トキ君も碧琉さんも張り切っておられますわね。」

 「…まあ、そうですのね?…良かったですわ。それは、八代様もお喜びのことでしょう。わたくしも八代様の作られたゲームに、興味がございましてよ。今日、会社にお顔を出されますの?」

 「ええ。今日はその第二弾に関しての会議が、ございますのよ。」

 「わたくしも顔を出しても、宜しいかしら?…乙女ゲームの1人のファンとしましては、()()()()()()()()()()()()()のよ。出来れば、製作者の高白様にも、一言申し上げたいと申しますか…。」


お昼休みの教室である此処には、今はわたくしと麻乃しかおりません。普段は蒼もご一緒に3人で食事を摂っておりますが、今日は蒼がご欠席されておられ、2人で食事をしております。


今日は、日高君の日舞の発表会がございまして、蒼もお手伝いを頼まれたということで、お2人共お休みされておられますのよ。今は麻乃と2人で食事を終えた後、お話をしておりました。


恋愛小説・恋愛漫画・恋愛アニメ・恋愛ドラマなど、主に恋愛物がお好みの麻乃ですが、大手企業の鈴宮カンパニーのお嬢様という身分にも拘らず、乙女ゲームもされますのよ。当然の如く、トキ君が作成された乙女ゲームにも、既に挑戦されておられるご様子でしてよ。これは、麻乃が楽しんでおられるということですね。


如何やら麻乃は、彼らがお作りになった乙女ゲームを、本心からお気に召されたようですわ。彼女はゲームに夢中になられると、ファンレターやらゲームの感想などを、熱心に送られるそうですもの。高白様にも、興味津々というところかしら?


麻乃と碧琉さんとはまだ面識がなく、お互いにご存じないご様子でしたわ。わたくしも、我が社の内部情報に関わる事情もございますので、碧琉さんの簡単な事情ぐらいしかお伝えしておりません。親友の麻乃とは言えども、特に詳しくお話する必要は、ございませんので。


碧琉さんにお会いしたいと、麻乃から仰られるとは、わたくしも想定外でしたけれども。言い方はキツく感じられるかもしれませんが、少なくとも碧琉さんに対し、敵意を持たれた雰囲気ではございませんわね…。何方かと申しますと、ワクワクされているご様子でしょうか、あのお顔は…。


 「今日で宜しければ、トキ君にご連絡をお入れしてみますわね。」

 「ええ、本日が宜しいのですわ…。後日は蒼もおられますし、なるべく邪魔が入らない状況が良いのです。()()()()()()()()()()のですわ。」

 「…サシ……。ですが、今日はお断りされるかも、しれませんけれど……。」

 「ええ、構いません。お会いすることが、大前提なのですもの。…ふふっ。」


今日は会議と申しましても、ゲームを発売した後ですので、比較的時間が取れる時期なのですわ。麻乃も本日が良いと仰っておられますし、今日ならばトキ君も碧琉さんも会社に出勤されておられますもの。


早速、お友達を連れて行く許可をもらう為、わたくしはトキ君にご連絡しましょうかと、学校のお昼休み中にスマホでお電話を致します。トキ君は、今日は大学がお休みだそうですし、朝から会社にご出勤なさるご予定と、お伺い致しておりますものね。そうして、快くご了解していただきました。


 「…今日、鈴宮さんが来る?…ああ、いいよ。しかし、嫌な予感がするのは、どうしたものだろうか…。手厳しいことでも、言いたいのかな…。」


麻乃のことを、警戒されておられます?…乙女ゲームに関しては、彼女も趣味とはいえ、手厳しい指摘はされるかもしれません。それでも、ゲームに向けられる姿勢は、真剣なのですわ。沢山の乙女ゲームを(こな)された彼女は、貴重なご意見をもらえるお相手でもございますし、大切なお客様でもございますのよ。


 「……楽しみですわ。ふふふふふっ……。」


トキ君から許可を得られたとお伝えすれば、麻乃は満面の笑みを浮かべられ、不気味な笑い方をされますが…。嬉し過ぎて…()()()()()()()()()()()()()、おられるのかしらね…?


普段は敵に回せば怖いお相手でも、わたくしには頼もしい味方なのですわ。わたくしは漸く、恋愛というものに気付いた初心者で、乙女ゲームの恋愛要素にはまだついて行けません。麻乃から貴重なご意見を伺えども、わたくしでは未だ理解出来ないかもしれません。そういうところも知っておられる麻乃は、高白様にはご期待されておられますよね。きっと良いご意見を、聞かせていただけることでしょう。


…それにしても、麻乃のテンションが異常です…。お珍しいことですね……。

 前半は、前回の続きの部分から始まり、麻乃家父親の会社のパーティに出席したことが、時流にバレた話となりました。後半は、花南音と麻乃との乙女ゲームに関する遣り取り、となります。


麻乃が…何か企んでいる???

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