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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第三幕 『転生する前のお話 ~前世での日常~ 』 編
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59話 貴方に懸想する女性

 今回は、第三者の視点となります。花南音視点では、無理そうでしたので。


前回からの続きとなるお話で、同日の出来事になります。

 突如彼らの前に現れた女性は、時流の今通う大学の同級生だ。その大学は、松園の一貫校の関連学校ではあるものの、大学自体は一貫校とは言えなくて、半分若しくは半分以上が他の私学の高校から、受験して来たという生徒達だった。大学も寄付が必須であり、寄付可能なのかどうかでも左右され、また奨学金制度も作られておらず、一般家庭の子息達は入学が難しい。要は、令息令嬢の為の学校だということだ。


そして、花南音達の前に現れた女性も、外部からの受験で入学した、ある程度身分ある家柄のご令嬢だ。当然の如く彼女は、乃木コーポという企業は知っていても、花南音の存在は知らなくて。


花南音の存在を知っているならば、壁ドンを花南音に行っている最中の時流に、声を掛けようなどと思う強者は、余程の権力者の関係者でもない限り、誰も存在しなかったことであろう、と…。


松園は元々幼稚園から始まり、小・中・高の一貫校となっている。私学の中でも松園は断トツで、有名な学校のうちの1つでもあり、お金持ちの令息令嬢が通う私学は、案外と沢山存在はしていても、この近辺での最有力な令息令嬢が通う学校としては、成績も含め断トツで松園がトップだったのだ。


しかし、有力な家柄のご子息ご令嬢全員が入学可能な訳でもなく、子息子女の礼儀作法・成績・人柄の評判なども含め、学校側が独自に調査した結果、それに合格しなければ入学が許可されないという程、厳しい審査がある学校でもあった。


彼女も松園の小・中・高に入学しようと、何度か試みたものの、その度に学校側から「あなたは入学を認められません。」と、記載された書類を受け取っている。


彼女は不許可の書類を受け取る度、「何故、わたくしが入学不可ですの?」と怒り狂い、使用人に当たり散らしていたが、それこそが不許可の原因だ。人格者ならば是非にでも入学を願うが、性格に難のある人物は拒否される。寄付も必須なのに、彼女のような愚者は問題外なのだ。


何しろ松園は抑々、遠田家が経営する学校だ。大学は他の人物との共同経営となっており、遠田家も大手を振り口出し出来ないが、高校までは遠田家がしっかりと管理しており、杏里紗と従妹である花南音の為にと、愚者と判断された入学希望者の場合、入学さえ許されない。特に花南音に対し問題を起こせば、即日転学を強制的に勧められることとなる。そして…それは、大学とて同様なのだ。遠田家が()()()()()()()()()()()()…だけの違いで、対応としては変わらない。花南音はそれだけに、遠田家の人間からも愛されているので。(特に杏里紗と来留、杏里紗ママに)


しかしこの女性は、無知過ぎて知らなくて。松園の大学入学時の条件に、遠田家と乃木家には危害を加えない…という、絶対条件が含まれることを。危害を加えない=邪険に扱わない+敵対しない、という意味を含め。特に花南音の立場を揺るがす人物には、()()()()()()()()()()()()()、保護者にも説明済みだった。それは彼女だけではなく、大学に入学する全生徒と保護者には伝られ、大部分の学生が理解していた。


それでも一部の学生は、この女性のように無知が存在する。そういう無知の人間達は常識がなく、自分より上位の家系の者に擦り寄っては、恋人になりたいと迫ったりする問題行動を取る。この女性も時流に対し、恋心を持っており、大学でも積極的に時流に近寄ったり、休日も時流の行動に目を光らせては、彼の周りをウロチョロとしたりしていた。無論、時流からは完全スルーされているというのに、それでも諦め切れず、時流の恋人になる画策をしていたのだ。


今日も彼女は時流の行動を見張らせ、使用人に報告させており、その情報で今回も店に入って来た。ところがいざ女性が入ると、報告されていなかった少女が、彼の連れとして同じ席に座っていた。まだ幼い雰囲気の少女で、時流の恋人には見えないが。


…誰なの、この子は…。妹…にしては、顔が全く似ておられませんわね?…抑々八代様は、3兄弟の末っ子でした筈よ…。この子、八代様に付き纏っているのかしらね。このような子供は、八代様には似合いませんわ…と、時流が聞いた瞬間に激高しそうな内容を、女性は心の中では考えていて。


これ程に無知な女性は、自分は勝てると思ったしまった…。絶対に踏み込んではいけない一線を、出てしまったこととなる。きちんと観察していれば、一目で分かる事情だと誰もが判断しているのに、このご都合主義女は自分の都合の良い方へと、事実を()()()()()()()()()()()()






    ****************************





 「ごきげんよう、八代様。此処でお会いするとは、偶然ですわね。そちらは何方のお嬢様ですの?…八代様がお優しいからと、甘えていらっしゃるのね…。休日に子守りをさせられる八代様には、ご同情致しますわ…。まだご自分は幼いからと甘えておられるのでしょうが、恥を知るべきです。何方も教えてくださらないようですから、わたくしが敢えて教えて差し上げますわ。感謝してくださいませ。」


女性が話し続けるうち、時流の顔色が変わって行く。折角花南音と2人っきりだったのに、花南音の気を惹く絶好のチャンスだったのに、一瞬にして甘い空気が去ってしまった…と、時流から見れば女性が邪魔者だ。


然もこの女性は時流にとって、毎日のようにうろつく不審者も同様で、全く好意を持てない女性の情報は、顔しか覚えていない状況だ。記憶力が良い時流が覚えていないのは、覚えるような人間ではないという認識でもあり、このまま()()()()()()()()()()()()()のに。


そのなのにこの女は、初めて会ったばかりの花南音を、辱めた…。顔色も変えていないことから、きっと花南音は気にも留めていないだろう。だが…僕には、我慢のならないことだよ…。


今日は確かに花南音から連絡を受けたが、今から行くと決めたのは僕自身であり、また例え彼女から呼び出されたとしても、僕は大喜びで此処に来た。それに花南音は決して自己中な我が儘も言わないし、年齢以上に十分弁えている人物だ。僕自身がそのことを昔から、よく知っている。花南音ほど冷静に周りが見える人物は、他には誰もいないのだと…。


松園が遠田家の経営する学校でなくとも、花南音は十分に入学できる素質を持つ人物だ。礼儀作法も完璧で家柄も申し分なく、寄付も父親が十二分にしており、問題となる人柄の評価は…誰からも好かれている、というもので。勿論、敵対するような人物からの評価は、含まれていない。飽く迄も、家族・親戚。使用人・仲の良い友人からであり、花南音の場合は会社の社員なども含まれている。


実は乃木家は武家の家系として、江戸時代頃まで遡れる歴史ある家柄の家系でもあったのだ。明治時代には会社として企業しており、それなりに上位の企業だ。花南音は気付いていなかったが、八代家には及ばないものの、遠田家とは肩を並べる程の家柄であり、企業としても誰もが知る会社の社長令で。愚者な女性には、()()()()()()()()()()()()()()()のだ。


時流は、そう冷静に考えながらも相当に激高しており、一方的に話し掛けてくる女性の無知な様子に呆れていた。知らぬこととは言えども、自分より遥か上位のご令嬢に喧嘩を売るとは、恥知らずな女だ…と。一方的な敵意に対し、花南音もただ呆れている様子で、何方かと言えば…今は時流の冷気に、固まっているようだった。


抑々…子守りとは、どういう見解なのかな?……甘えとか言っているけど、僕自身が花南音に甘えてほしいと、願っている。恥を知るべき…とは、それをお前が言うのかな?…これはもう、許せない限度だね…。


時流は未だ、花南音を自分の両腕で囲った状態で、そう考えるその一方で、花南音は突然現れた女性に一方的に捲し立てられ、驚きつつも礼儀作法が無作法だ…などという感想を、頭に浮かべていた。


時流に未だ壁ドンされた状況で、その彼から尋常でない冷気が溢れるのを、身近に感じ……。キョトンとして成り行きを見守っていた花南音は、彼の冷気の所為で頭の中が無の状態で固まり。「先ず、この壁ドン状態を解いてくださいませ…。」と頭の片隅で願う花南音は、寧ろこの光景を他人に見られたことが、途轍もなく恥ずかしい状況であり。


 「……失礼千万だ。僕の隣の彼女が、誰だか分かっていないようだね…。彼女は君よりもずっと、雲の上の人だ。僕の両親も手放しで喜ぶ、家柄だよ。如何やら君は、あの大学には相応しくなさそうだね…。今日のことは間違いなく、理事長達の耳の入るだろう。君は…大学入学時の条件を破ったのだから、それ相応の報いを受けることになる。」

 「………っ!!…………」


激高した時流は声を一段階下げ、ゆっくりと静かに語り出す。一見して怒りを感じさせない口調で優し気なものだが、その内容は非常に残酷な事情であり、女性には冷たい言葉の羅列だ。時流が語る情報に、女性の顔から徐々に血の気が抜けていくのが、よく見て取れた。とんでもなくやんごとなきご令嬢を相手にしたと、漸く気付いた女性は今にも倒れそうに真っ青で。


今まで沈黙していた花南音が、「あの…」と話し掛けた。もしかしたら、許してもらえるかも…と、一縷の望みが頭に浮かんだ女性だが…。


 「…貴方様こそ、どちら様ですの?…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のに、仮にもそういう場に後からお声も掛けられず、踏み込まれたお方にお教えしていただくことは、何もございません。このカフェの一角が個室仕様になっておりますのに、これでは意味がございません。貴方様には礼儀作法のご向上を、ご進言申し上げ致しますわ。」


恋愛要素には極端に鈍い花南音には、そういう類の期待を持っては、いけないようである。

 花南音と時流の遣り取りから、望まれない部外者が突入しています。


新キャラではありますが、残念ながら彼女は1回でドロップアウトしますので、名前は一切出て来ません。(今回で退場出来なかったので、次回退場させたいですね。)時流と花南音は案外と2人共、容赦ないですね。花南音は異なる意味で…。

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