表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第三幕 『転生する前のお話 ~前世での日常~ 』 編
72/117

58話 貴方とカフェでの一コマ

 前回からの続きで、いつも通り花南音視点です。


碧琉が去った後のお話でして…。

 その後、トキ君と高白様はご連絡先を交換されまして、ベッドハンティングのご返答はもう少し先というお話になりました。そして「この後に用があるので、先に失礼する。」と仰い、高白様はカフェを後にされましたわ。わたくしもこの後は、自宅に帰宅するつもりでしたのよ。


今日は元々学校も会社も休日で、お休みとなっております。元々皆さんには内密に進め、試作品として調査しておりましたので、学校のお休みの日に試作された方々とご連絡をお取りし、試作されたご感想をお伺いしておりましたのよ。そして本日の休日も、高白様とお会いしておりました次第です。まさか高白様が、ゲーム製作者に会いたいと仰られるとは、夢にも思っておりませんでしたが…。


トキ君には最後まで隠し通すという訳には、参りません。試作データを自分なりに纏めてから、全部お伝えするつもりでしたのに…。何となく…嫌な形で、バレてしまいましたわね…。それでも今日は直ぐに自宅に戻り、データを纏めなければいけない…と、先程まで考えておりました。トキ君が()()()()()()()()()()()()()()、ふと疑問を感じたわたくしは、彼のお顔を振り仰ぎ…。


彼は優雅に、コーヒーを飲まれておられます。まるで香りを楽しむように、若しくは味わっておられるかのように。何故か…物凄くゆったりと、されておられるのです。ええっと、嫌な予感が………


…何でしょうか、この何とも申し上げられない、嫌な雰囲気は…。冷気とは異なる何かが、この空間に流れている感じが、犇々と感じさせられますのよ…。この冷気はもしかしなくとも、()()()()()()()()()()()()()()のね……。


 「……花南音。今日のことは、僕は初耳なのだけど…。もしかして、君は他にも誰かに、試作品を試してもらっているのかな?…僕は君から、何も…聞かされていないよね?…僕が製作したというのに、何も相談もされないなんて、君にとって僕は…どうでもいい存在なのかな?…それとも、要らない存在なのかな?」

 「………。」


…ひゃあ!!…わたくし、大ピンチなのですわっ!…どうして、このような事態になりますのかしら…。わたくしはただ…トキ君の為にと、役に立とうと致しましただけですのに…(泣)。何処をどう致しましたら、このようなお話となりますのかしら、と…。


 「……違いましてよっ!…わたくしはトキ君を蔑ろにしようなどとは、思っておりませんわ…。トキ君は我が社にとりましても、重要なお人なのですもの…。」


わたくしは必死の形相で、弁明させていただきましたわ。トキ君がどうでも良い存在などと、また…彼が必要ないなどとは、絶対に有り得ませんことよ。わたくしが弁明する間、彼は…わたくしの目を、ジッと見つめ返しておられましたわ。悲しげなお顔をわたくしに向けられては、両眼をそっと伏せられて。わたくしの心からの言葉だけでは、彼の耳には届かなかったのでしょうか…。


 「…花南音。試作品の感想を集めてほしいなどとは、元々そういう経緯は、君には望んでいなかった。君が僕を大切だと思ってくれているように、僕も君の存在がとても大切なんだ。もし、これで君に何か遭ったらと思うと、僕は心配で心配で…仕方がないんだよ。だからせめて僕には事前に、何でも相談してほしいと思っている。」

 「……はい。トキ君には、大変ご心配お掛け致しまして、申し訳ございませんでした…。ですがわたくしは、()()()()()()()()()()()()()というのは、わたくしの性に合いません。甘やかされ過ぎるのも、嫌なのですわ。それにわたくしも、何かを自分の力で成し遂げたかったのですのよ。トキ君のお役に立ちたくて…。そう致しますことが今後も、どなたかの枷になると申されるのでしたら、わたくしも何方かには必ずご相談致しますようにと、気を付けますわ。」


わたくしが必死に否定致しました言葉は、彼に届いておりましたわ。わたくしの否定の言葉を聞かれたトキ君は、其れでも…わたくしが思ってもみないお言葉を、紡がれたのでして。唯々、わたくしを甘やかすお言葉を。彼に大切に扱われておりますことを、理解致しましたのよ。今回のことでは、わたくしを心の底から心配してくださった事実も、把握致しましたのよ。


しかしそれでも、わたくしは自分の意思で動きたいのですわ。それが誰かにご迷惑をお掛けしてしまうことには、本意ではございませんけれども…。それでも何もしないでいることには、それもまた…わたくしの本意ではないのでしてよ。






    ****************************






 彼にわたくしの本音の気持ちを、知っていただきたいと、今のわたくしの気持ちを全てお伝え致しましょう、と…。その間、わたくしの言葉をただ黙って聞かれておられた、トキ君は。ジッとわたくしの目を覗き込むように、見つめ続けておられましたのよ。わたくしのお話が終了致しますと、ふう〜と溜息を()かれて。


 「…花南音の気持ちは、よく分かったよ。そうだよね…僕がいくら心配しているからといって、君に何も出来ないようにするのは、1人の人間として扱っていないように感じるのは、当然だ。その点は、僕も間違っていたのかな。だけど君は()()()()()()()()()()、頼っているよね…。僕はそんなにも、頼りないのかな?…それとも、僕では…嫌なのかな?…僕がカノを守るのは、ダメなのかな?」

 「………。」


拗ねたようにそう仰るトキ君に、わたくしの方が戸惑いましたわ…。どうして、そうなりますのかしら…。トキ君にばかり毎回頼ってはいけないとは、思っておりますけれども、他のお人を頼るなどとは、酷い勘違いでしてよ…。貴方が…頼りないなどとは、これっぽっちも思っておりませんのに。これではまるで、ヤキモチを焼かれて拗ねておられるようでは、ごさいませんの……。…えっ?…ヤキモチ?…まさか…それはありませんよね…。


 「トキ君が何故そこまでお気にされるのかは、わたくしには理解不能ですわ。貴方に頼れば良いという問題では、ございませんわ。貴方にだけ頼るというのは、わたくしが…嫌なのですわ。これ以上、ご負担をお掛けしたくありませんのよ。」

 「…うん。本当は分かっている。分かっているけれど、敢えて僕はそう言っているんだよ。君はそうしなければ、僕を見てくれないからね…。君は、何でも出来てしまうし、僕が居なくても特には困らないだろうからね…。結果的に碧琉さんだったから良かったけれど、他の異性の場合は危険だったよ。そういう事情には、君は無頓着過ぎるからね…。だからこそ、僕が傍に居て守りたいんだよ。」

 「……トキ君。」


あっ……。これは…不味いです。実は…わたくし、何処かへ連れて行かれそうになりましたもの…。これがバレましたら、忠告されるだけでは済まないかもしれませんわね…。今回はわたくしも、こういう事情がバレると不味いのだと、学習を致しましたのよ。


わたくしが何でも出来るとは、貴方の買い被りでしてよ。トキ君がいらっしゃらなくては困りますと、先程申し上げましたのに。トキ君の方が何でもお出来になられますし、わたくしもお仕事を盗られた気がしておりましたのよ。貴方の方が、何か勘違いなされておられますわ。…どうすれば、分かっていただけますの?…我が社にとりましては、貴方が大切なお人なのだということを。


 「…はあ~。それにしても…見事に僕の気持ちが、全くという程伝わっていないなあ…。僕の存在が『我が社にとって重要な人物』と、言ってくれたけれど。それの示す意味は、会社には必要だけど花南音には必要ない…と、言われたように聞こえた僕は、()()()()()()()()()()()のかな…。」


彼はそう仰って、わたくしの方へズイっと身体を乗り出して来られ、片手をカフェの壁へと伸ばされたのです。そしてもう一方の手は、ただ今わたくし達が座っておりますソファへと。つまり、これは…彼の両手の中に、囲われておりますの?!


わたくしは、頭が真っ白になりかけまして…。…ええっ?!…何でしょう!?…この状態は……。どういう状況なのかしら…。これが所謂、壁ドンなのでは……


以前に麻乃から「壁ドンとはですね、男性が気になる異性の女性を両手で壁に囲いながらも、追い詰めるシーンなのですわ。」と、ご教示していただきました。その上でわたくしも、麻乃から勧められた小説や漫画を読み耽りましたのよ。そういうシーンが、確かにございましたけれども。


これが、その壁ドンなのですね…。…壁ドン…本当に?…トキ君が、わたくしに…されましたの?…そう考えますほど、自信を失くしそうですわ…。


 「…くくっ。少しは…意識してくれて、いるのかな?…相変わらず、カノは可愛いよね。此方の世界では早くても…16歳だから、まだ時間があるからね。僕は気が長い方だから、いつまでも待てるよ。」

 「………。」


何となく…仰られていることが、理解できますような、出来ませんような…。それでも今のわたくしは、頭の中が真っ白に近い状態ですし、頭の中で色々な考えがグルグルと回っております状況でして。ここで何か言葉を発しましても、わたくしの状況が悪化するような気が致しまして、ちょっと怖いですわ…。わたくしはまだ中学生ですし、気付かぬフリで何とかなりますかしら…。いえいえ…。トキ君のことですので、逆のパターンもありますかと。兎に角この体勢を、解除してくださいませ…(泣)。


 「…あらっ?…ごきげんよう、八代様。このような所でお会い出来ますなんて、運命なのかしら?」


この体勢を何とか解除したいと、考えを巡らせておりました時、この個室状態に近い一番奥であるカフェの席に何故か気付かれ、彼にお声を掛けて来られたお人がおられまして。トキ君のお知り合い………?


()()()()()()()()()()()()お人は、何方なのでしょうね……

 前回と同一日の、花南音と時流の遣り取りです。


大学生が中学生に壁ドン → 現実では、犯罪になる可能性も…。これはお話の世界なので、お許しを。一応お互い未成年ですし、ぎりセーフかな…。話の最後で、面倒臭そうな女性(?)が登場しましたが、次回正体が判明する予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ