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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第三幕 『転生する前のお話 ~前世での日常~ 』 編
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番外 私の想い・俺の想い

 今回は番外編です。前半・後半共に、他の人物の視点となります。

 私の名前は『名倉(なくら) 蒼唯(あおい)』と言い、中小企業のしがない会社を経営する、社長の娘だ。中小企業で個人経営の割りには、最近は業績も収入もドンドンとアップしているようだ。父が経営している会社『名倉物産』は、決して大きな会社ではないものの、社員も毎年少しずつ増えており、なにもかも順調だった。元々は家族経営の小さな会社であったものを、今は家族のみならず外部の人間も雇い、重要なポストも与えていたりする。


そんな私は兄が2人いて、自分自身は末っ子なので、家族から甘やかされて育った甘えん坊の女の子だ。我が家は大企業でもないし、親にも負担を掛けたくなかったこともあり、小学校は地元の公立に6年間通っていた。上の兄達も中学までは公立に通っていたし、私もそれが当然だと思っていた。しかし、私が学校に通い出して暫くすると、会社が軌道に乗り始め、父の新しい試みが成功したらしく、ドンドンと大きくなっていく。


それと同時に学校での私の立場も、()()()()()()()()()()()。私自身は威張るつもりもないし、他人に命令をするつもりもないのに、誰かが私に命令されたと言い始め、私の学校での立場が悪くなって行った。更に誰かがおべっかを使い出し、私の機嫌をとろうとして、私の立場はドンドン悪くなる。担任の先生に相談しても、最初から誤解していて、終いには…教師が生徒のご機嫌を取る始末で…。


両親や兄達には中々相談が出来くて、知られたら迷惑を掛けてしまうと、自分1人で抱え込んでいた。今の兄達は私学の高校に通っており、私まで私学に通うことになりそうで、両親に余計な負担を掛けてしまう、そう思っていた。何とか小学6年生までは我慢出来たけど、本当は地元の公立中学には…行きたくなくて。


一番上の兄は来年は受験生で、私学の大学を受験する予定だった。そんな時に、私まで私学の中学に、通えるのだろうか…と、そう思うと中々言い出せず、ただ1人で悶々と悩んでいて。


そんなある日、つい辛くて泣いていた私を、隣に住む幼馴染に見られてしまった。「一体、どうしたんだよ!」と、思い切り問い詰められ、仕方なく話してしまった私は、後で後悔することとなる。彼は親身になって話を聞いてくれた後、自分が通う私学の学校への受験を、勧めてくれたのだ。要するに、中学受験をしろということだ。だけどあの学校は、有名なお金持ちの子供が通う学校で、中途半端の家柄の私が、受かる筈がないんだよ…。


幼馴染の家は古くから続く日舞(にちぶ)の家系で、彼は跡取り息子だ。お隣さんで親しくはしていても、家柄が違い過ぎている。彼は、この辺りでは一番有名な私学に通い、私は地元の公立だ。彼の家は豪邸みたいな家が建っていて、我が家はちょっと大きめでも普通の家だった。庭の大きさなんて、雲泥の差があるんだよね。


しかも彼が通う学校は、学校に寄付することが条件とされており、高額の学費だとも聞いている。上流階級の有名な会社の経営者の令息令嬢ばかりが、通っていると聞いているし…。私が受かる可能性は低く、例え受かったとしても、今よりも惨めになるかもしれない。彼の目の前で虐められたら、立ち直れそうにないよ…。


私は取り敢えずは幼馴染の顔を立て、受験を受けることにした。不合格ならば幼馴染も諦めるだろうし、私もこれで踏ん切りがつくだろう、色々と。彼が家族に話したのでもうバレているし、「もう我慢しなくていい。」と言われ、私の心も晴れている。今度こそ、私に合った私学の学校に通いたいよね…。そう決心した途端に、まさかの松園に受かるなんて…。


いざ松園に通うようになれば、興味津々にクラスメイトが話し掛けて来て、私は困惑する。偶然にもクラスメイトの中に、以前から知り合いである麻乃さんがいて、彼女が庇ってくれた。お陰で花南音とも知り合えて、ラッキーだったよね。今では2人共、私の大親友と言える。2人共は幼馴染よりも上位の家柄で、全く私の家柄を気にしないでくれて。


麻乃もかなり変わった人だと思うけど、花南音もちょっとズレた部分がある人だ。花南音の容姿も性格も可愛くて、男子生徒にも実はモテているのだけれど、彼女は全く気付かない上に、あの大企業の令息から見染められていても、それすら全く気付いていないようなのだ。


その大企業の令息も、彼女の従姉とその家族も、彼女の父親も、そして麻乃までもが皆で彼女に悪い虫がつかないようにと、協力している。その()()()()()()()()には、私も当初は退()いたけど…。今は、彼女の本当の味方でいようと、私だけは冷静でいようと、そう決意している。ちょっと異常過ぎるのよ、これは…。


私自身は幼馴染の彼が好きだけど、家柄が違い過ぎるので元々諦めていて、良い友人の関係だ。今は自分の恋愛より、()()()()()()()()()()()気分なのよ、私は。






    ****************************






 俺は『日高 恭典(やすのり)』という名で、日舞の家柄『日高家』の跡継ぎだ。姉と妹がいるものの、男児は俺だけである為、跡取りとして日舞を日々仕込まれている。正直に言えば、子供の頃はもっと遊びたくて、日舞の練習も辛かった。姉と妹も練習をさせられても、俺ほど厳しい練習ではなくて。逃げ出したくて庭に出れば、偶然にも隣の女の子が、我が家の庭に紛れ込んでいた。


俺の家は日舞で有名な家柄で、上流階級の家との繋がりがあるが、お隣は会社経営者の社長の家とは言え、ほぼ一般人に近かった為、親同士も特に付き合いがなく、お隣なのに会ったこともなかったのだ。だけど、その日から彼女と友達になったお陰で、親同士も家同士の付き合いが始まった。


彼女の家はそう大きくはないけど、我が家との繋がりが出来て、会社が大きくなっていった。今ならばそういう付き合いがあっても、おかしくないぐらいに。それなのに彼女は、まだ公立の小学校に通っていた。


中学受験は、しないのかな?…彼女に淡い恋心を持つ俺は、ちょっとした行き違いで、日舞の練習中に両親と大喧嘩した。急に何もかも、嫌になってしまい…。髪を金髪に染め、徹底的に反抗したりして。その結果、彼女に本気で怒られた俺は、本気で嫌われそうな予感に、慌てて髪も戻し稽古も続けることにした。


 「蒼唯ちゃんが婚約者になってくれるかどうかは、泰典次第だ。」


其れを機にして彼女を見初めた両親からが、彼女を婚約者に…とお墨付きが出た。後は、俺が彼女に告白するだけなんだけど、彼女は全然気付いてくれそうにない。

そんなある日、彼女が俺の家の庭で泣いていた。家族に見つかりたくなくて、深く考えずに俺の家に来たのだろう。彼女を問い詰れば、彼女は学校で辛い目に遭っていた。「これってチャンスでは?」と思った俺は、彼女の弱みに付け込んで。


彼女に中学受験を勧め、俺は理事長に頼み込めば、彼女が入学するならば悪いようにはしない、との返答で。何とか彼女を説得し、受験を受けさせて。理事長も如何やら彼女の人柄を気に入ったらしく、合格であった。


 「君は1人じゃないんだよっ!」

 「何て馬鹿なことをしたの!…辛いのは、ノリだけじゃない!…私に相談すれば、一緒に考えてあげるよ。何で誰にも、相談しないのよ…。日舞もあんなに頑張っていたのに、本当に辞める気なの?…本当は、後悔しているんでしょ?」


彼女は初めて会った俺にも、励ましたり叱ってくれたりする人だ。初めて会った時も、金髪に染めた時にも、彼女は真剣に俺に活を入れ、俺も冷静になって素直になれた。もしも、「()()()()()()()()、友達だよ。」と言われたら、俺は…立ち直れなくなりそうで、彼女に恋の告白をするのは、俺には一生分の勇気がいるんだよ。俺達はまだ中学生だし、告白はもう少し先でも…良いよね?


自分で言うのも何だけど、俺は女子ウケする顔だ。俺の家柄や俺の顔を目当てで、俺の前では演技をする女子が多かったりする。彼女の仲の良い友達には、俺も油断した。以前に彼女達が俺に告白し、それを断ったのが元々の原因みたいで。だからこそ今でも、腹が立つ。彼女の女子友も、俺の前で()()()()()()()()()だった。


俺は好きな子がいたので、断るのは当然だ。逆に断らなければ、不誠実なヤツと言われていただろう。本当に都合の良い女子友だ…。俺の気持ちもバレていて、それも彼女を妬む理由となっていたようだが、自分達の性格は棚に上げている癖に…。


この松園で受け入れてもらえて、良かった。然も、学園では中心的なあの子達と仲良くなったらしくて、超安心した。あの子は気付かないようだけど、大勢の人から守られて大切にされているあの子を、味方につけた彼女。あの子には、絶対に敵に回してはいけないあの人がついていて、いざ敵に回せば如何いう地獄に落とされるか、分かったものじゃない。この松園の生徒は、ほぼ全員知っている筈だ。そう、あの子以外は……ね。


あの人を()()()()()()()()()()あの子とその友人には、絶対に手を出してはいけないし、あの子が悲しむだけで、あの人もそして他の沢山の人達が動くことになる。その事実を理解した松園の生徒達は、あの子とその周りには手を出さないし、また出せないからね。逆に俺は、安心なんだよ。


初めて真面に話したあの子は、何処かズレた部分があって、あの子に執着するあの人は、俺を本気で敵視しようとして、本気で危険だったかも…。今は誤解も解け、何とか敵視は免れたみたいだ。ならば俺も、参考にさせてもらおうかな…?


今後、彼女の元友人が再び彼女に接近した時には、今度は俺が撃退しようと思っている。未だに赦せない俺は、あの人を参考にして徹底的に排除しようか…と。大切な彼女は、俺の手で守ると決めたから。二度と彼女を泣かせないように。

 前半が蒼唯、後半が恭典視点で、裏話的な要素も、ちょっぴり含まれてますよ。


実は…2人は、両想い?! 恋人になるのは、何時のことになるやら……

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