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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第三幕 『転生する前のお話 ~前世での日常~ 』 編
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55話 貴方とわたくしの職務は

 いつも通り、花南音視点となります。主人公・花南音は、中3になりました。


今回終盤にて、新キャラが登場しています。

 中学3年生となりましてからも今迄と同様に、わたくしは昼間は学校へ登校し、授業が終了次第に父の会社へと向かう毎日です。会社に出勤致しますと、トキ君との2人部署でのサポートという名目にて、彼の作業を唯々(ただただ)見つめながら、時折簡単なお手伝いを行い、トキ君が淹れられたお茶を共に飲む、これをほぼ毎日のようにまるで日課のように…行うだけでして。


毎日のように彼との新しい部署に出社しておりますけれど、わたくしには仕事という仕事が…ございませんのよ。彼が正式に入社される以前は、わたくしもアイデアを出したりとそれなりに、会社のサポートを熟しておりましたのに。最近は全くと申すぐらいに、わたくしの出番がございません。現在はゲームの試作段階でして、彼がプログラミングをされておられます。要するに、ゲームソフトアプリを制作中なのですわ。


わたくしもパソコンは使用可能ですし、文書作成やマクロを使用する表作りも作業出来ますわ。簡単なプログラミングならば、わたくしでも可能かと思うのですが、彼が制作されておられる作業では、今のわたくしでは何のお役にも立ちませんわ。足手纏いとなるくらいでしたら、わたくしはお茶出し等のその他の雑用を熟して、見守るつもりでおりましたのに、何故にこうなっておりますのかしら…。


 「花南音はちゃんと見守ってくれている、と僕は思うよ。それに、休憩時間は僕と共に過ごしてくれるし、僕の淹れたお茶も、美味しいと言ってくれるし。」

 「…いえいえ、抑々そこからが…おかしいのですわ!…会社に出勤しても唯々毎日、こうしてトキ君の作業を拝見致しますだけですわ…。わたくし、ここに毎日来る必要がございますの?…単に、邪魔しに出勤しておりますような気が…。」

 「いやいや。花南音が邪魔だなんて絶対に思わないし、君の顔が毎日見られて、お茶を一緒に飲んでくれて、ただそれだけで仕事が捗るよ。それに、印刷やコピーとかの面倒な手伝いもしてくれて、花南音には感謝しているぐらいだ。」


あまりにもわたくしのお仕事が見つかりませんので、トキ君のご迷惑なのでは…と申し上げましたが…。印刷やコピーなどは誰にでも熟せるお仕事ですし、楽勝ですわよね…。そのようなお仕事でしたら、()()()()()()()()()()()()のでは…。


それにも拘らず、わたくしに毎日出勤するように…と仰るのです。抑々、意味が分か兼ねますわ。彼のお茶をいただく為に、此方へ出社しておりますようなものですもの…。お茶ぐらいは、わたくしに淹れさせてくださいませ…。そう申し上げましたところ、彼は…不思議なことを仰られたのです。


 「…そういうことでしたら、お茶ぐらいはわたくしがお淹れ致しますわ。それとも…わたくしの淹れるお茶は、お口に合いませんかしら?」

 「…ち、違う違う!…それは、ないっ!…花南音のお茶は、僕が淹れたお茶と比べ物にならないくらい、美味しいよ!…単に僕が君に、お茶を淹れたかったんだ。漸く上手く淹れられるようになったから、花南音に飲んでほしくてね。」

 「……今迄、貴方にお茶をお淹れしたことは、ございましたかしら?…全く覚えておりませんけれども、何時(いつ)のことですの?」

 「……い、いや。()()()()()()()()()()の話だから、僕もうろ覚えなんだよ…。それよりも僕のお茶は、どう思う?」

 「…ええ、とても美味しゅうございますわ。わたくしの淹れたお茶と、そう代わり映え致しませんでしてよ。随分とご上達なさいましたのね。」

 「…いや、それ程では…ないけどね……。」


彼にお茶をお淹れしたことは、わたくしの記憶上にはございませんわ…。お嬢様はお茶が淹れられない…と思われたのかと、疑ってしまい申し訳ございません。それより、初めてお会いした頃とは、変ですわね…。全く、思い出せませんわ…。


わたくしにはお茶の心得(お抹茶ですわ)がございますし、一般的なお茶も淹れられます。普段は使用人が淹れてくれますけれど、永眠された母もお茶を淹れるのが得意でしたので、よく淹れてくださいましたわね…。わたくしも美味しいお茶を淹れたいと、母から教わっていて良かったですわ。家では時々、自分でお茶を淹れておりますが、まだ…トキ君にはお淹れしたことがないかと…。何方(どなた)かと、お間違えではありませんの…。


わたくしが飲む為に、彼が淹れてくださったお茶を、どう捉えましたら良いのか…困惑しておりますわ。練習をなさったのか、とても美味しく淹れておられますことをお伝え致しますと、彼のお顔がほんのりと上気され、珍しく戸惑っておられるご様子でしたわ…。 


わたくしが彼に淹れたお茶の事情は、有耶無耶になってしまい、結局そのお答をいただくことはありませんでしたわ。そうしてこの事実を知ることになるのは、()()()()()()()()()()になるのです。






    ****************************






 あれから漸く、念願のゲームの試作品が完成致しました。但し、これをすぐ商品化とする、という訳にも参りませんので、先ずは問題がないかどうかを、他の社員達やその家族が試すこととなり、それが終われば今度はゲーム通の関係者数人に、()()()()()()()()()()()()でしょう。


我が社で乙女ゲームを製作致しましたのは、これが初の試みとなりますし、ゲーム通となる関係者にも、残念ながら今のところは伝手がございません。かと申しましても誰でも良い訳ではなく、またゲームの内容が外部に漏れる可能性もございますので、誰彼とお声掛けをすることも出来ません。トキ君もそういうお知り合いに、心当たりがないご様子でしたわ。


どうするべきかしら?…そう悩んでおりました時、麻乃のお父様の会社が何周年かの記念パーティを開かれる、という情報を麻乃に教えていただいて。麻乃は悩んでおりましたわたくしを、内密にご招待してくださいましたわ。


わたくしの父やトキ君に、そして杏里紗ちゃんご兄弟(特にライ君ですわ。)にもバレてしまいますと、確実に反対されますのよ。ですから、彼らには内緒なのでしてよ、絶対に。


わたくしを正式にご招待してくださったのは、何でも…父親とは別の意味でのヤリ手だと、ご評判の高い麻乃のお姉様なのですわ。麻乃のお父様にご招待いただきますと、内密に出来そうもございませんので、麻乃がお姉様にお頼みくださり、すんなりと快諾してくださいましたのよ。


そういう訳で本日は、麻乃のお家にて人生初のお泊り会でしてよ。我が家から当日に出席致しますと、誰にも内緒という立場のわたくしの場合、使用人達から父や杏里紗ちゃんにご連絡されそうなのでして…。


このお泊り会でさえ反対されてしまうのでは、と取り越し苦労をしておりました。麻乃が上手く嘘を()いてくださったお陰で、わたくしは何とか無事に此処に来れましたわね。前日から麻乃の家でお泊りをし、本日のパーティ後も含めて2泊3日のお泊り会をする予定ですのよ。


 「まあ!…とても似合っておりましてよ、花南音。」

 「ええ、とても!…そういう可愛い系のドレスがお似合いで、ホント羨ましい。私はガッチリ系の肩だから、そういうドレスを着ると似合わなくて。」


鈴宮カンパニーのパーティには、蒼も参加をされておられます。お泊り会では蒼もご一緒の方が、疑われにくいだろうということでして、彼女にも協力していただいておりますわ。蒼もこういう大きなパーティは初めてだそうですし、わたくしよりも緊張されておられます。わたくしもパーティへの参加は、生まれて初めてなのですけれど、大人に混じり会議や仕事に参加しておりますし、特に緊張はしておりません。それよりもトキ君や父の関係者や、乃木家の親戚の何方かが、パーティにご参加されておられないのかと、わたくし…心配ですのよ。麻乃や彼女のお姉様のお話ですと、大丈夫のようなのですが、油断は出来兼ねますわ…。


単に麻乃の親友として、パーティに参加させていただいておりまして、彼女のお父様にはお会いしないで済むよう、ご配慮していただきました。麻乃のお知り合いにご挨拶される時に、それとなくご紹介していただいて、ゲームにご興味のあるお人を探しておりますのよ。ゲームでは素人の会社も同然な我が社には、中々興味をお持ちいただけておりませんわ…。諦めかけておりました時、わたくしの前に何方かが立つ気配が致しまして。


まさか…トキ君が?…不味いですわ。此処に滞在しておりましたのが、バレてしまいましたの?…何とか言い訳をしようと、お隣の麻乃の方を振り向きますと、お隣におられる筈の麻乃が…おられせんでしたのよ…。蒼のお姿も、全くお見かけ致しません…。…ええっ?!…いつの間にか、わたくし1人ですのね…。どう対処すべきなのですの…。


 「……君、何処かで会ったことが…あるかな?」

 「…………はい?」


声を掛けられたわたくしが慌てて顔を上げますと、わたくしの目の前には…見覚えのないお人が、此方の様子を窺っておられます。何方なのでしょう?…これ迄にお会いしたことは…ない筈です。では、女性を引っかけるという噂の、ナンパなのですの?…わたくしは、冷ややかな目付きになりました。わたくしの様子に目の前の男性は、慌てたように手をブンブン振って、否定なさいましたのよ。


 「……い、いや、決して…ナンパではない。君の姿が、やけに目に付いたんだ。君の、その…立ち居振る舞いに、その…()()()()()()()()()()……。本当に何処かで…会ったことは、ないんだよな?」

 「……わたくしの記憶では、お会いしたことは一度もございませんが…。」

 「う~ん、やはり、何処か会ったような……。あっ!…い、いや、ナンパのつもりはないから!」


この時は、本当に…おかしなお人というのが、()()()()()()()()()()()()()のよ。

 時流と花南音の仕事っぷりを書くつもりが、何故だかこういう風に…。まだ中学生の花南音に、本格的なゲーム作りは無理だと思うので…。前世編では、主人公が高校生にならなければ、ゲームが始まらないんですよね…。後もう少し、中学生時代が続きそうです。


後半最後で登場したナンパ男は、今回の新キャラとなります。本人が話している通り、ナンパはしていませんが、これでは…ナンパにしか見えないですよね…。

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