表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第三幕 『転生する前のお話 ~前世での日常~ 』 編
63/117

番外 僕の姉に対する思い

 今回は番外編でして、別の人物の視点となっています。

 僕には、3人の姉がいる。そのうち上の姉2人は、どこにでも居そうな普通の女の子だと思うが、残りの一番下の姉は、自己主張の激しい我が儘な姉だ。上の姉達からはちょっと年が離れている為、姉達からいつも子供扱いされていたし、()け者にされていた気分だったかもしれない。上の姉達は別に意地悪していた訳でも、除け者にしていた訳でもなく、単に話が合わないだけだ。だって上の姉達は、高校生と中学生で、下の姉より4歳以上も上なのだから。


その代わりと言うように、下の姉と僕とは年子で1歳差だった為、よく一緒に遊んでいた。但しそれも、小学生低学年までではあるが。流石に彼女が高学年になった途端に、彼女の方から遊ぼうとは誘って来なくなり、同年代の女子と元気よく遊んでいた。だから僕も自然と距離を置き、同年代の男子とばかり遊ぶようになる。


ところが…最近、下の姉は乙女ゲームというものに、すっかり嵌ってしまったみたいである。あんなに外遊びが好きな、姉だったのに。直ぐに外に飛び出すほどに、あんなに家の中での遊びや、漫画を読むことさえ嫌がり、嫌っていたようなのに。ジッとしているのが辛くて、直ぐに飽きてしまう。外に遊びに行けば、暗くなるまで帰って来ない。家族に心配ばかり掛けているのが、あの姉だったのだ。


そんな姉が、他のことを放って置いてまで、ゲームばかりしていた。元々は上の姉達が乙女ゲームをしていたから、下の姉も興味を持ったみたいだ。最初の頃心配していた家族も、もうすっかり呆れ果ててしまい、本人が飽きればそのうち止めるだろう、と思っていて。あれが…そう簡単に、飽きる状態なのかな…。確かに今は注意しても、全く耳に入らないみたいだし、仕方ないのかな…。


あんなにも燥ぎまくって明るい姉が、今はゲーム1つに振り回されている。毎日毎日、ゲーム次第で機嫌がコロコロ変わるんだ。喜んでいたと思ったら、数分後には怒っていたりして。どうやら、攻略が上手く進んでいないみたいだね?


先日、何とか1人は攻略出来たらしく、暫く機嫌が良かったが、ここ暫くはまた機嫌が悪い。あれから…全然進まないらしくて。家族も腫れ物に触れるみたいに、当たり障りのない話で誤魔化し、誰もはっきり言わない。今は何を言っても無駄だろう、と。


今日、下の姉の担任教師に呼び止められた僕は、宿題プリントを学校に忘れて行った姉の分を、託されることとなった。僕は溜息を吐く。こんな調子で中学生になったら、どうするのか…。来年は、下の姉も中学生だ。次女は高校生になるので、誰も頼れないというのに。少なくとも、僕が中学生になるまでの1年間は。


僕は帰宅するとすぐ、姉の部屋に宿題のプリントを渡しに行く。今日も攻略に苦心しているようで、ブツブツ呟いていて気持ち悪いぐらいだ。それでついつい「まだ攻略出来ないの?」と、意地悪な言葉を放ってしまって。案の定、ゲーム中の姉は怒り狂いそうな雰囲気となり、「それなら、あんたがやってみなさいよ!」と。


普段の僕ならば「嫌だよ」と文句を言い、絶対に乙女ゲームなんてやらないだろうな…。この時の僕は、余りにも夢中の姉を見た所為で、姉を助けてやろうかな…と思ったようである。


姉からコントローラーを分捕(ぶんど)るようにして借り、ゲームを始めた僕。これは、中々に難しいかも。ハッキリ言って、乙女ゲームを侮っていた。この乙女ゲームには沢山の選択肢があり、少しでも選択を誤れば、別のルートに進んでしまう。上の姉達なら兎も角、下の姉には難しいだろう。僕ら姉弟は頭脳派タイプだが、ただ1人下の姉だけは体育系タイプだ。勉強は苦手だが、体力勝負には強い。本来こういう乙女ゲームは、下の姉には向いていない。


僕がゲームをして、短時間で攻略が出来てしまった。簡単だとは思わないし難しいとは思うけれど、法則が分かればそう難しくはない。姉が苦労していた1人を攻略した途端、後ろで姉があまりにもギャアギャアと大声で叫ぶ為、家族全員が心配して姉の部屋に顔を出したくらいだ。嬉しいのか悔しいのか、どっちだろ…。


仕方がない…。もう1人、攻略してやろうかな…。姉にはよく面倒を見てもらったからね。「他に、誰を攻略してほしいの?」と訊いてみる。そうすれば、「騎士が良い」という返事が返って来て。なるほど…。


昔から姉は、王子様とか、騎士団所属の騎士とか、こういうキャラに弱い。文官や武官は、頭が良くて威張ったり俺様で威張ったりで、俺様っぽいキャラは嫌いみたいだ。僕の後ろから姉が期待する目で、ゲーム画面に食い入るように見つめているらしい。それほど攻略したかったとは…。






    ****************************






 「…秦、凄いっ!…流石、我が家の天才児だねえ!…ねえねえ、どうやって攻略したのか、教えてよっ!」

 「その前に今日はそろそろ、宿題した方が良いと思うよ。ちい姉ちゃんの担任から直接預かったから、貰ってないとか持って帰るの忘れたとかは、通らないよ。」

 「……うっ……」


僕の名は『奏司』だから、うちの家族は『奏』と呼ぶ。この姉も漏れなくである。因みに僕はこの姉を『ちい姉ちゃん』と呼んでいる。我が家で一番下の小さい姉、という意味で、決して背が小さいとかではない。家族は皆『ちな』と呼んでおり、『ちな姉ちゃん』と呼ぼうとした僕は、舌が回らず『ちい姉ちゃん』と呼んだようである。そして今もそう呼んでいる。


ちい姉ちゃんは、年の近い僕の面倒を嫌がらず、よく見てくれた。僕は男の子にしては、身体も小さくてヒョロヒョロで、食も細く中々大きくなれなくて、顔も腕とかも白過ぎる為、クラスの男子にはいつも馬鹿にされていた。幼い時は「こいつ、女みたいだ。本当に男かどうか、確認して見ようか?」とか言われて、服を無理矢理剥ぎ取られそうになったこともある。何とか逃げ帰った僕に、ちい姉ちゃんが代わりに怒っては、男の子達に仕返しをしに飛び出していたっけ。


最近は虐めはなくなったけど、今でも揶揄われることもあるが、流石に今の僕もただ黙ってはいない。頭脳戦では負けない自信がある為、()()()()()()()()ぎゃふんと言わせているんだよ。僕はこれでも家族から『我が家の天才児』と言われているし、実際に学校でも天才児扱いは受けているのだから。


弟を守る為に男子と喧嘩もする、姉弟思いのちい姉ちゃん。ちょっと我が儘な部分もあるけど、面倒見はとても良い姉だ。僕が新しい靴を買って貰っても、自分も欲しいとは言わないし、「買って貰って良かったね。」と僕に言ってくれる、良い面も持っている。勉強は苦手でも、やって良いことと悪いことには、ちゃんと区別が付く人でもある。


今現在、僕が言う小言を受け入れ、ゲームを片付け宿題をしようとする。結局自分1人では解けなくて、夕飯の時に姉達に教えてもらっていたけれど。それでもズルをせずにきちんと自分で、宿題をやり遂げた。学校のクラスメイトみたいに、他人の解いた宿題を丸写しするとか、絶対にしない人なんだよね。自分1人で出来ない部分だけ教えてもらい、答えは自分で出す人なんだよ。


 「…奏、あのね。この宿題が全部終わったら、さっきの攻略の仕方を教えてね。あっ、そうだ。さっきの攻略は、ハッピーエンドだけなんだよ。バットエンドの方も、攻略してほしいな。今のところ、ノーマルまでしか出来なくて…。」


……うわあ。まだ僕が、続きをやる必要があるのかな…。…ふう~、仕方ないのかなあ。バッドエンドの方も、難しい設定なんだろうから、ちい姉ちゃん1人で攻略をしていたら、あと何年かかる…というレベルかも、しれないよね…。仕様がない姉だなあ…。もう暫くの間だけ、協力してあげるしかないかな…。


何でこんなに乙女ゲームは、ややこしい設定になってるのだろうか…。これは、誰得になるのだろうか…。それとも、こういう仕組み自体が、()()()()()()()()()()()()()()のかな…。


後でネットで調べてみたんだけど、ゲーマーの皆さんも苦労しているみたいだね。攻略が難しすぎるとか、沢山の書き込みが見られたよ。それでも、ある程度は攻略している人もいるようだし、ネットでの評判も悪くないようである。然もこの乙女ゲームは特に、人気も凄くあるみたいなんだよね。それほど沢山の感想が、寄せられていたんだよ。


やっぱりこれは、ちい姉ちゃんがまだ小学生というのも、あるかもしれないなあ。せめて…ちい姉ちゃんが高校生ならば、もう少しクリア出来るのかも、と思っている。いくら勉強が出来ない姉でも、高校生になればもう少し頭も、マシになるだろうからね。こんな言葉を言えば僕が叱られるから、姉本人には言わないけど…。


ネットに情報を出したり書いたりしている人達も、高校生以上若しくは、大人の人達が多いみたいだ。20歳以上の大人と小学6年生では、クリアする時間も変わって来るだろう。頭の中身が違うのだから、仕方がない。小学6年生でここまで攻略出来たら、ちい姉ちゃんは逆に何気(なにげ)に…凄いんじゃないかな?…ちい姉ちゃん、よく頑張ったね。


ちい姉ちゃんから見れば、僕の方が凄いと思っているようだけど、それは僕が頭脳派だから、ちょっとしたコツがあるのを、見つけられたんだよ。だからちい姉ちゃんにも、教えてあげるよ。


そうしてちい姉ちゃんに教えたら、その後は案外とスムーズにやっているようだ。後は色々と引っ掛けがあるから、それに気を付けて攻略すれば、大体は攻略出来るようになると思う。


……あれっ?…これは、隠しキャラなんだろうか…。相当、難しそうだね。ちい姉ちゃんには、まだ…言わない方がいいかな…。姉が自分で、()()()()()()()()()()は…。ちい姉ちゃんがもっと、成長するまでは…。

 今のところは、主人公達とは関わりのない姉弟キャラです。所謂、乙女ゲームに嵌っている活発な少女と、その姉に振り回されるしっかり者の弟は、なんだかんだと言いながらも、仲良し姉弟ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ