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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第三幕 『転生する前のお話 ~前世での日常~ 』 編
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50話 貴方に関する噂話

 今回は、全て第三者の視点となっています。


裏話的なお話となりました。今回も後書きにて、補足事項が追加されてます。

 「初めて会ったけど…凄かったな。あの人が彼女に拘っているのは、小学校の頃から噂でなっていて、知っていたつもりだけど。あれほどまでとは、思ってもみなかったなあ…。」

 「…そうですわね。わたくしも実は、何度かお見かけしてはいましたが、あれ程とは…想像以上でしたわ。…ふう~。あのお方と遣り合いますのは、正直申し上げますと、中々()()()()()()()()()()のよ…。」

 「…はははっ。2人共凄かったよ。聞いていた僕らの方が、冷や汗が流れて来そうだったよ。2人の対決は、見てるだけでも恐ろしいよ。」

 「…あら、まあ、日高君。もう少しで貴方が、ライバル認定されるところでしたのよ?…いえ、あれはもう既に、そういう認定をされておられるかも、しれませんけれど…。」

 「えっ!?…い、いや…。怖いこと…言わないでくれよ…。僕は…君みたいに、ああいう心理戦みたいなのは、得意ではないんだよ…。」

 「…あらっ?…わたくしが得意だと…仰るの?…わたくしは別に、得意でも何でもありませんことよ?…お相手が仕掛けて来られましたから、わたくしもそうさせていただいただけですわ。『目には目を、歯には歯を』ということで。」

 「………。いや、君が先に…(あお)っていたよね?…君は、上手く言葉を整えていたから、彼女は気が付いていない様子だけど、あの人は当然気付いていたから、君の煽りに応じたんだと思うよ……。」

 「あら?そうでしたかしら…?…わたくし、色々と()()()()()()()()()()から、全く覚えておりませんわ。」

 「………。君も、大概…いい性格をしているよ。噂通り、大人しくて穏やかな性格なんだと、思っていた。僕も君の見掛けに、騙されていたみたいだ。それに比べると、彼女は…真っ直ぐ過ぎる性格だよね。よく…君と友達になったよね。」

 「ノリ君!…そういう言い方は、失礼よ。ごめんなさいね、麻乃江さん。」

 「いえいえ。日高君の仰られることには、ほぼ当たっておりますわ。本当のことですから、特に何も気にしておりませんわ。」


あれから問題の2人は、直ぐに帰って行った。その後、残された麻乃江と蒼唯と恭典の3人は、その場から離れて移動しながら、話していた。知らない生徒達から見れば、この3人が元から仲が良い友達だと、思うことだろう。しかしこの3人は、それほど親しい関係ではない。麻乃江と蒼唯は、ある企業のパーティで知り合い、麻乃江が蒼唯を助けたような形として、パーティでは仲良くしてはいたが、麻乃江と花南音ほどの仲ではなくて。麻乃江の家と蒼唯の家が離れている上に、親同士が親しくしていない為、家同士を行き来するような仲では、なかったのである。


麻乃江の両親は上昇志向の強い人間であり、蒼唯の家と仲良くする気はない筈だ。麻乃江自身も蒼唯と特に仲良くなる気は、実は…なくて。麻乃江はマイペースであり、パーティでは蒼唯と話を合わせていただけである。蒼唯とは通っている学校も異なっており、松園とは色々と環境が違う、ということが、一番の理由でもある。


松園には特殊な授業もあるし、花南音みたいに特殊な生徒も、他にも少数だが存在していた。松園では黙認されてはいるが、他の私学の学校では、絶対に認められない事柄であろう…と。そう言う事情を話す訳にも行かないし、松園だから黙認されているだけで、他言してはいけないのだと、麻乃江は気付いていた。特に、他校の生徒には絶対に知られてはならない、と。


これ以上、蒼唯と仲良くなったとしても、自分には話せない話が多過ぎる…と、麻乃江は考えて。実際に話したからと言って、松園の生徒以外には理解出来ないことだろうが、だからと言ってそういう問題でもなくて。仲良くなれば、どうしても相手のことが知りたくなるし、言えないことも知らされないことも、お互いに辛いだろう…と。それぐらいなら、最初からこれ以上は仲良くならない方が良い、と()()()()()()()()()()()いいだろう、と。麻乃江がそう考えた結果であった。


幸い、蒼唯からもそれ以上は仲良くしようとして来ず、麻乃江は内心ではホッとしていたのだ。麻乃江も所詮は、良いところのお嬢様である。中小企業の家柄の蒼唯からは、これ以上パーティ以外でも仲良くして欲しい、とは絶対に言えなかった。蒼唯自身も、麻乃江とは身分が合わないことは、百も承知である。だから、無理して背伸びしてまで、彼女と仲良くなろうとは思っていなかったのだ。


この時は…要するに、お互い様だったのである。






    ****************************






 「あら?…鈴宮さん。丁度良かったですわ。鈴宮さんのお父様の会社は、宿泊関連でしたわよね?…わたくしのお父様のお得意様が、宿泊される筈だったホテルの予約が、下請けのミスで取れておりませんでしたのよ。鈴宮さん、お力を貸してくださらない?…あなたのお父様のお力で、何とかなりませんかしら?」

 「……いいえ。申し訳ございません。わたくしが父にお願いしましたところで、父がわたくしの願いを聞いてくださることは、ございませんので。」

 「…なっ!…この場で直ぐ断るだなんて、失礼ですわよっ!」

 「そうですわよ!…あなた、鈴宮カンパニーのお嬢様でしょう?…わたくし達のお父様に恩を売って置かれた方が、宜しいのではなくて?」

 「…申し訳ございません。父の立場は、わたくしとは違います。父にわたくしが申し上げることは、難しい立場なのですわ。無理なものは、無理なのです。」

 「…っ!……あなた、わたくし達のお願いを断って、ただで済むと思っておりますの?…わたくしの父は、あの有名な日野寺(ひのでら)商社ですのよっ!」


…ああ、またですのね?…こうして何度もわたくしに、()()()()()()()()()()()()が…。わたくしの父は外では何時も、にこにこと愛想を振り撒かれておられますけれど、家の中では反対に、全く愛想のない父親なのですわ。人の好さそうで人好きな人間に見られ、気さくな人柄だと思われております父も、わたくしにとっては、威張りくさった父…でしてよ。


わたくしのお話になど、ほんの少しも…聞く耳を持ち合わせておられませんのよ。わたくしの頼みなどを、聞き入れられる訳がないですわ。例え、松園の有力な家柄の生徒が、わたくしに頼んだという事実を、知られたとしても…。子供同士の約束を、馬鹿にする父親なのに。それに父は、貴方達の家柄を見下しておりますわよ。


麻乃江は普段から冷静に、丁寧に断っているつもりだ。しかし彼女達は逆上したようで、何と…麻乃江に手を振り翳して来た。ビンタを食らわせようとして。麻乃江は思わず、目を瞑る。彼女達に逆らうことなど、正気ではない。それこそ、この松園にいられなくなってしまう…と。


日野寺商社など鈴宮カンパニーと比べれば、()()()()()()()()の違いだけで、現権力だけで見れば鈴宮カンパニーが上だった。それでも逆らわないのは、松園が異例だからだ。何が原因で退学になるか分からず、そうなれば…父から完全に嫌われるかもしれない。嫌いな親とはいえども、血の繋がる親から本気で嫌われたくない。


しかし、顔をビンタされる様子がなくて、不思議に思った麻乃江は、そっと目を開けて。自分の前に、誰かが立ち塞がっていた。あの女子生徒は、手を振り上げたまま固まっている。目の前に立つ少女の後ろ姿に、誰かを悟った麻乃江は。目を大きく見開き、呆然として。


何故、彼女が…わたくしを助けてくれますの?…今までに一度だってお話したことも、ありませんのに…と。


 「何故…乃木さんが、助けに入られるのですか?…鈴宮さんの家は、成金です。乃木さんのような人が、助ける価値は…ないですわ。」

 「何を仰っておられるのか、全く理解不能でしてよ。貴方方には、失望致しましたわ。この松園に入学した時点で、そのような家柄の格差は、全く問題ではございません。この松園では寄付が出来るかどうかが、より重大ですわ。少なくとも鈴宮さんは、この松園で寄付が多い家柄ですのよ。貴方のお家では最近、寄付が少額になっているとお聞きしております。どうしても寄付が問題ではなく、家柄の格差と仰るのでしたら、わたくしの方から遠田家の理事長に申し上げますわね。」

 「………。申し訳ありませんでした……。」


ビンタをしようとしていた女子達も、目の前の少女に驚いていたが、ハッとして自分達が悪くない理由を告げる。思い切り麻乃江の家柄を、馬鹿にして。この彼女達は、普段から麻乃江の家柄を鼻で (あしら)っていたのだろう。確かに、日野寺商社は大企業の部類には入るが、創業も古い会社ではあったが、目の前の少女の家柄には全く歯が立たないであろう。この乃木という少女の家柄は、かなり古くから続く由緒正しい家柄で、麻乃江でなくとも誰でも知っている。この松園でも、上位の家柄だということも。当の本人は、今一()()()()()()()()()()()()が…。


結局、少女の言い分は正しかったようで、この少女に諌められた女子生徒達は、逃げるように去って行く。彼女達はその後、父親の会社の業績悪化の為に、寄付金が十分に出せなくなり、松園を去ることになった。松園には…居られなくなったというよりも、松園が追い出した。寄付金も出せないのに、威張るな…と。何しろ、遠田家に逆うよりも、乃木という少女に逆らったのが、悪かった。この松園という学校では、乃木家の親戚である遠田家の息が、掛かっているのだから。


 「鈴宮さんは、少々変わったお人ですのね?」


そう言いつつも、その少女は首をちょこんと傾げる。「あなたこそ…。」と麻乃江が思わず、言ってしまったにも拘わらず、少女は「…ふふふ。そうかしら?」と笑顔で返し。その時から2人は、本当の意味で…親友になったのである。

 前半は、あの話の裏話と、後半は、麻乃江と少女との出会いのお話、となっております。副タイトル的には、前半がメインです。


本文中に敢えて、誰とか書いておりません箇所が…。想像はつくかと思いますが。



【補足事項】

結局花南音は、告げ口は一切していません。多少の騒ぎとなった為、杏里紗の耳に入りそれから、理事長へと伝わりました。花南音を敵に回すと、自動的に杏里紗と理事長が敵に回ります。然も、花南音と違って容赦がありません。麻乃江を馬鹿にした生徒達も、花南音が関わったことにより、松園の生徒として相応しくないとされました。

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