表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第三幕 『転生する前のお話 ~前世での日常~ 』 編
57/117

番外 ヒロインになりたい私

 今回は番外編ですので、別の人物視点となりました。


今のところ、今までに登場したかどうかは…ご想像にお任せ致します。

 私の家は、ごくごく普通のお家で、特に貧乏でも裕福でもなく、それでもお父さんが大工さんなので、稼ぎはいい方だと思っている。うちにはお祖父(じい)ちゃんもお祖母(ばあ)ちゃんも一緒に住んでいて、二世帯住宅で暮らしていた。勿論、お父さんが建てた家だよ。だから、この辺りでは一般的な住宅と比べたら、家も大きいし、部屋数も多いし、少しリッチなお金持ちにも、見えるみたいなんだ~。…へへっ。


私の家は、実は大家族なんだよね。まずは、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんでしょ。

次に、お父さんとお母さん。そして、私よりずっと大きいお姉ちゃんが2人いて、私でしょ。最後に、私より1つ下の年子の弟もいるんだよ。家族が多いから部屋数も沢山いるし、土地はお祖父ちゃんの先祖代々が持っていたし、そういう理由で大きなお家が建てられたんだ。決して、お父さんだけの稼ぎで、こんな家が建てられたんじゃないことは、小学生の私でさえ、知っているもんね。


私は『秋庭(あきば) 千菜子(ちなこ)』。小学6年生の可愛い女の子。(両親や家族は、そう言ってくれるんだもん!)近所の小学校に通っている、普通の女の子だよ。勉強は嫌いだけど、体育は大好き。私、身体を動かすのが好きなんだ。運動会では、リレーの選手に選ばれたこともあるんだよ!(えっへん!)


将来の夢は、王子様みたいな人のお嫁さん。私、馬鹿だけど、本物の王子様とは結婚できない身分だっていうのは、分かっているつもりなんだよ。だから、()()()()()()()()()()()()なんだ。でもね、現実には…そんな人って、いないよね…。


趣味は、普通の小学生とは違うんだ、私は。今時の小学生の女の子は、アイドルとか俳優さんとかがカッコイイって、言うよね。だけど私は、お姉ちゃん達の影響を受けちゃって、三次元には興味ないんだよね…。お姉ちゃん達は恋愛オタクみたいになってるから、恋愛物に目がなくて。だから、恋愛小説・恋愛漫画・恋愛アニメと来て、極め付きが…乙女ゲームだったんだよね…。


私のお姉ちゃんのうち1人は高校2年生で、もう1人は中学3年生。私とは4つ以上年が離れている。お姉ちゃん達は、ほぼ同じ二次元に嵌っていた。偶々、夏休みが暇だった時に、お姉ちゃん達に借りた乙女ゲームが面白くて、私も嵌ってしまったんだよ。私はアウトドア派だったし、インドア派のお姉ちゃん達のゲームには、嵌らないと思っていたけど。


嵌った原因は間違いなく、イケメンの王子様が攻略対象として、登場していたからだと思う。現実と違い、イケメン過ぎる男子達が、ヒロイン=私に告白して来るんだもん。どのゲームでも特に、王子様が超カッコイイ。金髪のサラサラの髪に、青い目とか、理想過ぎるよ…。()()()()()()()()()()()()を見ちゃったら、後には引き返せないよね?


私はそう言う理由から、ドンドン深みに嵌って行く。私も女の子なんだから、可愛いって言われたし、好きって告白されたい。小学6年生にもなると、周りの女子達も誰が好きとか言い合っている。今まで興味がなかった私も、大恋愛には憧れていた。父と母はお見合いだったようだけど、私は絶対に恋愛結婚したいんだよね…。


私は全く気付いてなかったけど、姉達は普通にアイドルや俳優にも、興味があったらしい。でも私は反対に、二次元の乙女ゲームだけに深く嵌って行く。いつの間にか、姉達が持っているゲームだけでは物足りなくなり、自分のお小遣いで買うようになってまで…。話題の乙女ゲームが、欲しくて欲しくて。お正月で貰ったお年玉はもう使っちゃって、来年のお正月まで、あと半年もあるし。今は頑張って、毎月のお小遣いを貯めているところだよ。


結局、見るに見兼ねた家族が、私が運動会で頑張ったご褒美として、買ってくれたのだ。小学校の最後の運動会だったので、奮発してくれた。わ~いっ!…早速封を開けて、ゲーム開始だ。また、見事に嵌ってしまった。今までの乙女ゲームの中では、最高だった。この玩具会社(ノギ・コーポ)が乙女ゲームを発売したのは、初めてだったけど、ゲーム専門の会社のものより、内容がずっと面白かったのよ。男性陣が単にカッコイイとかだけではなく、設定も世界観も私好みで。


まずは、王道の王子様をクリアすべきよね?…クリアを目指して遊んでいるけど、これが中々難しい。だけど、失敗したらすぐにバットエンドではなくて、そこがまた…良いんだよね。他のゲームは攻略に失敗すると、すぐにバットエンドになるんだもん。でも、このゲームはやり直ししなくても、すぐにバットエンドにはならないから、挽回しようという気で頑張れるんだよね…。


折角途中までは、好感度もある程度上がっているのに、リセットしたら()()()()()()()()()()もん…。その点でもこのゲームは、リセットする回数が減って、面白いよね。これでクリアしやすかったら、もっと良いのになあ…。






    ****************************






私は中々クリアできず、イライラしていた。メインの王子様は、何とか攻略したけど。他にも何人か、攻略対象がいるのに…。王子以外の攻略対象は、王子付きの騎士、文官の息子、武官の息子が2人、王立学園の教師、王弟の6名で、全部で7人を攻略が出来る設定だった。現在、私が狙っているのは、王子付きの騎士なんだ。だけど、王子以上に難しくて、基本的に女性に興味がないんだよね…。基本的に素気無(すげな)い雰囲気なんだよ…。王子の次に、私の好みだから…悲しい。


仕方なく、後回しにしたものの、他の登場人物も中々攻略が難しい。こういう時には、以前はお姉ちゃん達を頼っていたけど、高校生のお姉ちゃんはバイトもしていて、最近は帰宅が遅くなっていて、夕飯も顔を合わせることが出来なくて。いつも何時に帰って来ているのか、私は知らない。朝食時に顔を合わせても、朝は忙しいからゲームの話も出来ないし。


2番目のお姉ちゃんも、今は中3なので受験生だ。受験シーズンが本格化している為、いつもピリピリしているのが丸分かりだった。とてもじゃないけど、乙女ゲームの話なんて出来そうにないよ。残りは年子の弟だけど、まだ小学生の男児だし、乙女ゲームには興味ないよね…。


そんな風に思っていたある日、弟が珍しく私の部屋に入って来た。弟はただ単に、私と姉弟だからと、学校の先生から何かを頼まれただけだった。だけどその時、弟は言ってはいけない言葉を、口に出してしまった。


 「ちい姉。まだ、攻略出来ないの?」

 「…っ!……そう言うんだったら、あんたがやってみなさいよっ!」


ゲーム中の私は、ついつい…怒り狂って言ってしまった。()()()()()()()()()状態で。でも、ゲーム中の私に、あの言葉を言った弟も…悪いよね?…苦戦していた私は、機嫌が悪かったんだもん。


因みに、弟が言う『ちい姉』とは、私のことだ。『小さい姉さん』という意味で、弟が私を呼ぶ時の愛称なのだ。弟から見れば姉が3人も居るので、こうやって呼び分けてくれる。呼び捨てされる訳でもなく、姉呼びされるだけ、マシだよね?


 「え~。やだよ。それ、乙女ゲームでしょう?…僕、これでも男子なんだから、()()()()()()()()、嬉しくないよ…。」


当初は、そう文句を言っていた弟。5年生で既に、女子を堕としたいと思っているのかな…。まあ、我が家では一番頭が良い、弟だしね。私は無視してゲームに夢中になっていると、苦戦している姿を後ろで暫く見ていた弟は、行き成りゲーム機のコントローラーを奪ったのよ。


 「ちい姉、ちょっと貸して。」

 「…なっ!…行き成り、何すんのよっ!」


私は弟にゲームを取り上げられ、目をひん剥いて怒ったけど、弟は私を無視したまま、ゲームの続きをし始めた。そして、あっという間に攻略ルートを、クリアしてしまう。…な、何でよ~!…私があんなに苦労したのに、弟は初めての攻略で、サクサクッとクリアしてしまって…。


大・大・大ショック!…「何で~~!」と叫んだ私の大声が、部屋中に木霊(こだま)した。受験勉強していた次女の姉が、部屋のドアを開けて私の部屋を覗き込む。すると、「…何だ。ゲームのことか…。」と言い捨て、何事もないかのように戻って行く。その後も、両親や長女が覗きに来ては、大したことがないと判断され、家族は戻って行き…。ゲーム中の弟と、私を残して。


弟が攻略したのは武官の息子の1人で、実の母に捨てられたと思って憎んでいた。実は義理の母親に嘘を教えられていた、という設定だ。私はどちらかと言えば、あまり好みじゃない。武官キャラの性格も、俺様系の人だし、同じ武官ならまだもう1人のキャラの方が、マシだよね。こっちのキャラは、虐待されて育っていて同情出来るし、俺様キャラでもないし、少しだけ病んでるけど、それ程ではないし、という軽めの設定で。キャライラストも、後者の方が好みなんだよね…。


 「ちい姉。他には、誰を攻略してほしいの?」

 「…えっ?!…え~と。そうだね…。やっぱ、王子の騎士かな?」

 「分かった。次は…騎士だね。」


他に誰を攻略したいかと言われれば、勿論王子の次は騎士だよ。…まだ、攻略出来てないんだよ…。ノーマルエンドさえクリア出来なくて、バットエンドにしかならなくて。騎士のバットエンドルートは、ヒロインとは恋人になれなくて、婚約者とも婚約解消して、彼は生涯結婚せずに騎士一筋になる、というシナリオなのよ。


……おっと。弟に、次に攻略したいのは誰か?…と尋ねられた所為で、ついつい素直に答えてしまったよ…。あんたが攻略してくれるの?…さっきまで、あんなに嫌がってたのに、乙女ゲーに目覚めた…とか?……な~んちゃって。


根は、優しい素直な弟なんだよ。()()()()()()()、攻略してくれてるんだよね?…もしクリア出来たら、次回の私のおやつ、あんたにも半分分けてあげるからね?

 過去(現代編)では、初めて登場した人物となります。体育会系の少女が、偶々乙女ゲームで遊んだら、思いっきり嵌ってしまった…という、お話でした。今後、どういう形で登場して来るやら…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ