44話 貴方の悩みとは
前世・花南音視点となります。
副タイトル通り、『貴方の悩み』に関して、気にする人物が……。
こうしてまたわたくしには、お友達と呼べるお人が増えました。同じ歳のお友達も、年上のお姉様的なお友達も出来まして、今では毎日が充実しておりますのよ。杏里紗ちゃんにもご紹介したいと思いまして、我が家にてお引き合わせすることに致しましたわ。
「今日はようこそ、我が家にお越しいただきました。八代家のような家格のお家と比べましたら、大したお持てなしは出来ませんけれども、今日はごゆっくりして行ってくださいませ。」
今日はトキ様とご一緒に、ノンお姉様も我が家にご招待致します。勿論、わたくしの従姉とお引き合わせをする為ですわ。杏里紗ちゃんには、沢山のお友達がいらっしゃいますけれど、わたくしが是非ともお2人に、仲良くなっていただきたいだけなのですわ。それに…杏里紗ちゃんには、事前に知らせて置かないと、また拗ねられてしまいますものね。…ふふふ。
「こちらこそ、お招きいただき、ありがとうございます。わたくし、花南音ちゃんのお家に呼んでいただけて、とっても嬉しいわっ!…昨日は嬉しすぎて、中々眠れなかったぐらいでしてよ。」
我が家にご招待しただけで、このように喜んでいただいて、わたくしも嬉しいですわ。ノンお姉様のお隣では、呆れたようなお顔をされたトキ君が、苦笑されておられます。…ふふ。まるで、わたくしと杏里紗ちゃんの姿を重ねてしまいますわね。トキ君とノンお姉様も、同じようなご関係なのだと思いますと、お2人とも一層仲良くなれるような気が致しますわね。
取り敢えずお2人に、飲み物やお菓子をご用意して、寛いでいただけております。トキ君には事前に、ノンお姉様に杏里紗ちゃんをご紹介したいと、お願いしておりましたのよ。しかし、ノンお姉様と杏里紗ちゃんには、何も…お伝えしておりませんわ。ノンお姉様は兎も角、杏里紗ちゃんはわたくしが絡みますと、変な妄想癖が入りますもの…。先入観が全くない状態の方が良い、と思いましたので。
暫くの間3人でお話しながら、従姉の到着を待っておりました。ノンお姉様の緊張が解れた頃に、杏里紗ちゃんが到着されましたようですわ。さて、お引き合わせと参りましょう!
「ご紹介致しますわ。…ノンお姉様。此方のお方は、『遠田 杏里紗』と申しまして、わたくしより1学年上の従姉に当たりますの。…杏里紗ちゃん。此方のお方は、『槇野 野乃歌』様と申されまして、トキ君の従兄妹に当たられるお人ですのよ。松園中学とは別の女学校に、通われておられるそうですわ。」
「…まあ!あなたが、『杏里紗ちゃん』なのですね?…初めまして。『槇野 野乃歌』と申します。花南音ちゃんからはよく、お話を伺っておりますのよ。時流君が…花南音ちゃんを、中々紹介してくださらなかったので、まだ知り合ったばかりなのですが、それでもこうして仲良くしていただいておりますのよ。」
「槇野様。ご丁寧なご挨拶ありがとうございます。改めまして、わたくし、花南音の母方の従姉で、『遠田 杏里紗』と申します。槇野様と言えば、八代グループとして有名ですから、そのようなお方が、わたくしの従妹と仲良くしていただくなんて、とても光栄ですわ。今後もカノのことを、よろしくお願い致します。」
「こちらこそ、ご丁寧にありがとうございますわ。花南音ちゃんの時もそう思いましたが、流石…遠田家のお嬢様ですわね?…礼儀作法が厳しいとお伺いしておりますだけ、ありますわね。遠田様とも是非、仲良くさせていただきたいのですわ。わたくしも、『杏里紗ちゃん』とお呼びしても?」
「はい!…光栄ですわ。槇野様にそう仰っていただけまして。わたくしも是非、仲良くさせていただきたく…お願い申し上げますわ。」
わたくしが、お2人を交互にご紹介致しますと、ノンお姉様も嬉しそうにされまして、杏里紗ちゃんを受け入れてくださいました。また杏里紗ちゃんも、ノンお姉様の勢いには…少々気後れされながらも、お姉様に好意的な態度を取られておりますわ。それに…いつもとは違いまして、余所行きの態度を取られておりましてよ。何しろお相手は、あの八代グループの1つである、槇野様のお嬢様ですもの。然も…自分より年上のお方、というのもあるのでしょうが、流石の遠田家と褒められましては、手を抜くことも出来ませんもの…。
杏里紗ちゃんは先程から、冷や汗をかかれておりますことでしょう。何時もでしたら、この辺で気を抜かれて、親し気にお話されるのですが、ノンお姉様の勢いに…完成に、巻き込まれておりますわね…。遠田家の厳しい躾をここまで褒められますと、崩されるのは…無理ですわよね?…今は………。
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「わたくしのことは、どうか『野乃歌』とお気軽にお呼びくださいませ。花南音ちゃんからは『ノンお姉様』と呼んでくださっていますわ。学校では『ノン』という愛称で呼ばれている、とお伝えしたところ、そう呼んでくださいますの。」
「…はい。そういうことでしたら、わたくしも…カノと同じ呼び方で、『ノンお姉様』とお呼びしても、宜しいでしょうか?」
「…まあっ!…お2人から…お姉様と呼んでいただけるなんて、何て光栄なことかしらっ!…嬉しいわあ。妹が2人も出来たような、気分でしてよ。」
一通りご挨拶が終了致しましたところで、ノンお姉様が下のお名前での呼び方を望まれます。杏里紗ちゃんも、年上のお友達は初めてとのことで、わたくしと同じように、お姉様呼びをご希望されたのですわ。ノンお姉様はもう、満面の笑顔で目をキラキラとさせられて、それはそれは…嬉しそうになさって、おられましたのよ。ノンお姉様は、末っ子というお話でしたわね。上にお兄様がおられるようですが、もしかして…妹が欲しかった、とか…なのかしら?
お隣のソファで寛がれているトキ君は、まるで…苦虫でも召し上がられたかのような、何とも言えないというお顔をされておられます。もしかして…トキ君も、妹が欲しかった…のかしら?…トキ君も、末っ子でしたわよね?…兄弟姉妹のいないわたくしには、よく理解できませんけれども、上のご兄弟がいらしても、妹や弟が欲しくなるものですのね…。
その後、杏里紗ちゃんとノンお姉様のお2人は、わたくしの話題で盛り上がり、仲良くなられたのです。何故、わたくしの…話題なのでしょうね…。その間はわたくしもトキ君でと、我が社の新しい玩具のことで、ご相談しておりましたので、詳しくは…存じませんけれど。
それからは、こうして時々このメンバー4人で、何かと我が家に集まることとなりました。実際にそうなりますと、お仕事のお話以外では、わたくし達女子3人でお話が盛り上がりまして、トキ様がお1人で退屈をなさっておられますわね…。
こういう時には、男子同士でお話されるのが、良いでしょう。そう考えましたわたくしは、杏里紗ちゃんの弟をご紹介しようと、杏里紗ちゃんにお願いしよう、と致しましたら…その前に、トキ君から断られてしまったのですわ。
「…いや、別に…弟が欲しくて、此処に遊びに来ている訳では、ないからね。」
「…?……それでしたら、妹が欲しかったのですの?」
「…えっ?…いや…そういう訳でも………。」
「……?」
…という遣り取りが、ございまして。トキ君は…妹が欲しかったのは?…そういう意味を込めてお訊きしましたら、やんわりと否定されまして。時々、何かを誤魔化すような口調をされますし、八代グループ的に何か誰にも言えないような問題が、ある…とかなのでしょうか?…それとも、トキ君の個人的な理由が、お有りなのでしょうか?
「…えっ?…ないですわよ。と言いますか、全く問題はないと思いますけれど。抑々、八代グループって、親族達の殆どが割と、楽観的な人間達ばかりなんですよね。ですから、元々隠し事をしないと言いますか、隠し事が出来ないタイプと言いますか。特に…時流君のご両親は、開けっ広げな前向きで自由なタイプだった、と思いますが……。」
「…そうなのですの?…では、トキ君が…悩みを持っていらっしゃるかどうか、ノンお姉様は知っておみえでしょうか…?」
「…う~ん。…時流君の悩み?…時流君は昔から、妙に大人びたお子様でしたから、何か悩みもあったかもしれませんけれど…。個人的な悩みでしたら、持ち合わせているかもしれませんわね。但し、ご両親やお兄様とのご関係ならば、良好とお聞きしておりますわ。もし…時流君が悩んでいるとしましたら、家族のことではないと、思いましてよ?」
「…そうなのですね。トキ君の悩みがお分かりならば、わたくしでもお力になれるかも、と思いましたのに…。」
「時流君が、そんなに…気になりまして?」
今日は、トキ君が珍しく用事があると来られておりません。また杏里紗ちゃんも、お家の都合で今日は来られておりません。この機会を逃さないようにと、ノンお姉様にはトキ君の悩みについて、ご質問致しましたのよ。彼と従妹であるノン様でしたら、もしかしたら知っておみえかと思いましたのよ。ですが…トキ君は誰にも悟られないようにされているご様子でして。私が何か力になれるのなら、と申しますと今度は、ノンお姉様がかなり食い気味に、訊ねて来られます。目をキラキラされながら、訊かれまして。これは……どうされたのでしょう?
「…ええ。勿論ですわ。トキ君には、いつもお世話になっておりますもの。ですから、わたくしで出来ることがございますならば、何でもお力になって差し上げたい、と思っておりますの。トキ君は、わたくしにとっても我が社にとっても、大切なお人なのですもの。」
前世の方も、新しい登場人物が出て来て、賑やかになっていますね。ちょっと独特なキャラが…多いかも。花南音自身も、かなりズレていますよね…。
花南音は前世から、恋愛には疎いようです。と言っても、まだ小学生ですので…。