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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第三幕 『転生する前のお話 ~前世での日常~ 』 編
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番外 とある姉の今世は…

 番外編の為、とある人物の視点となります。


今回は主人公(前世)は、登場致しません。

 私には、揶揄(からか)いがいのある、私より1歳年下の年子の弟が、いる。年が近いこともあり、姉弟喧嘩なんて日頃からしょっちゅうであった。と言っても、私が女の子というのもあって、何も…取っ組み合いの喧嘩をしている訳ではなく、(ただ)の口喧嘩ぐらいであったけれど。まあ、私は喧嘩しているというよりも、揶揄いがいがあるという理由で、一方的に揶揄っていただけで、自分は喧嘩を売っていた覚えは…ないけれど。しかし、弟は()()()()()()()()だと思っていたらしくて。


何故そう思われる程、弟を頻繁に揶揄っていたのかと言えば、弟があまりにも…融通の利かない、真面目人間だったからである。こういうことは、みんな手を抜いているよ、適当にやっているんだよ、と言ったところで、一切聞く耳を持たない程なのだ。そんなことはない…と言い切って。本当に真面目過ぎるよ。でもさ、真面目過ぎる人間は、周りの人間からすれば、堅苦しく感じてしまうのに。


弟の友達達たちでさえ、時々引いているのだと、私が感じることもあったぐらいなんだよ。それでも肝心の弟は、全く気が付いていなかった。そこで私は仕方なく、弟に助け舟を出したつもりだった。それなのに…弟は姉の私にまで、真正面から自分の正義感で正して来て。


う~ん…。これは…不味いかも…。()()()()()()()()()()正義感は、負の方向へ引き摺られることもある、と聞いたこともある。要するに、正義感が行き過ぎれば、曲がった正義感を振り回すことになる、という意味でもある。


実際に弟は、そう成りかけていた。気が付くのが遅ければ、何れそうなっていたかもしれない。共働きの両親は忙し過ぎて、弟の言動に全く気が付いていなかった。姉である私が、気付いて良かった…と。まだ…間に合う、まだ…矯正出来る、と。姉の私が、気付かせてやらなければ…ならない。少々、乱暴なやり方なのかもしれないけれど、弟とは…口喧嘩調になってしまうけれど、今の私は後悔していない。以前よりも弟は、あの当時よりもずっと、随分と丸くなって来ていたのだから。


我が弟が、あれほどに強い正義感を持つのは、テレビの影響を受けていた、と言えるかもしれない。私の家族は決して仲も悪くないし、子供を虐待するような親ではないが、それでも…忙しさに(かま)けて、私達子供への躾をなおざりにした感はあるかな…。長女の私が、あまり手間の掛からない子供だったものだから、余計に…なのかもしれない。しかし弟は私とは違って、極々(ごくごく)普通の男の子なのである。


私は弟や両親達とは、明らかに違っている。実は…私には、()()()()()()()()()()記憶があるようだ。そう気が付いたのは、ごく最近ではあるのだが、物心ついた頃から…何かおかしいとは、思っていた。まさか…自分が物語の世界のように、奇妙な真実が隠されているとは、夢にも思っていなかったのに。


幼少期からぼんやりとした、前世の記憶が混じっていた。言葉は同様に聞こえていた所為で、当初は全く気付かなかったのだ。しかし、夢で見た光景は…あまりにも違い過ぎていて、言葉も文字に変換してみると、全く異なるものだったのである。夢の中の私は、それなりに良い身分のお嬢様で、一応は貴族に名を連ねた家系の子供である。贅沢三昧ではなくとも、私付きのメイドもいて、今よりも上位の身分であるのは、間違いない。但し、今の生活の方が…贅沢な暮らしだと、思うけど…。


現在、貴族制度のないこの日本では、唯の一般市民である。今の家柄は、極普通の一般家庭であり、お金持ちでも何でもない。父は課長で、母はチーフという役職でも、両親は普通の会社員であり、共働きしているからこそ、こういう贅沢な暮らしが出来ていると、私達姉弟も理解していた。前世のように、メイドや使用人を雇える身分では、ないのである。


そういう異なる境遇に漸く、ある日気付いて。この夢は…ただの夢ではない、と。私が全部…経験した事実である、と。気付いた当初は当然の如く、頭が混乱するばかりで。色々と納得する一方で、夢だと…まだ信じたくない自分もいて。混乱し過ぎ、知恵熱を出した私…。風邪も引いていたらしく、暫く学校を休んだ程である。もう…そんなに幼くないのに。普段は平然としていた母が、休みを取り看病してくれた。珍しく、おろおろしていたよね…。真面目な弟も。


「毎日、喧嘩を吹っ掛けて来る…姉ちゃんが、風邪退くとか…有り得ない。馬鹿は風邪を引かない、というのは、嘘だったんだよな…。」と、喧嘩口調で煽って来るのも、私には…痛くも痒くもないんだよ。あんな寂しげな心許無いような顔をしているくせに、弟は…気付いていないのかな…。


普段は生意気な弟も、本気で心配してくれている…と思ったら、つい笑ってしまったよ。くすっ…。本当に可愛いんだから、私の今世の弟は……。






    ****************************






 「姉ちゃんが大人しくしていて、喧嘩を売って来ないのが、何だか気味が悪い。だから…風邪、早く…治せよ。」

 「……うん、ごめんね…。心配、掛けちゃったよね…。心配してくれて、ありがと、ね。」

 「……っ!………。ち…ちげえよ!…べ、別に…姉ちゃんのこと、心配したとかじゃ…ないし!……ホント、調子…狂うんだよ!」


…ふふふふっ。可愛い弟…だよね。気味が悪いと言いながらも、早く良くなれ…と言うし、私が素直に礼を言えば、心配していないと…全力で否定して。顔を真っ赤にしながら言っても、説得力がないんだよね。私を心配しているのが丸分かりな、天邪鬼な弟よね…。出来の悪い弟ほど可愛いと言うのは、本当だったわ(笑)。


それでも以前に比べたら、月とスッポンというぐらいに、性格が丸くなったかな。これならばもう、下手な正義感は出さない…と思いたい。テレビでは相変わらず、ニュースなどで過激な報道をするし、アニメや子供向けの戦闘ものでは、正義は必ず勝つ…という印象が強くて、私の前世の世界とは大違いである。前世では、自分達の生活を守る為に、身分という権力を振り翳したり、他人を蹴落としたりする世界だった。誰に、何時(いつ)、敵襲されるかも分からないので、安心は出来なかった。


今の世界は…平和で、平和過ぎている所為で、平和ボケしている感じもして、前世の世界とは比べ物にならない程、安定した世界である。勿論、殺人や恐喝に強盗や詐欺など、今の世界にも色々な悪事はあるけれど、身分関係なく処罰される点は、弟の正義感を肯定する理由にもなっていた。世界が違うと、()()()()()()()()()なのか……と。


私が、前世の記憶を持つ転生者、だと確信した理由は、他にもある。この世界にはテレビや新聞や本などだけではなく、インターネットという便利な情報網もある。残念ながら前世では、インタネットは勿論のこと、テレビどころか新聞もない世界なのだ。書物ぐらいはあるけれど、娯楽的な要素は少なく、勉強する・研究する為の書物…と言うべきか。但し、何故か…恋愛小説は、存在したのである。それは、この世界のように他の異世界からの転生者が、作製したのではないだろうか。


私の夢から得た、記憶の中の前世の恋愛小説は…何処(どこ)か、今の世界の恋愛小説に似ていた。他にも、アニメやゲームも内容も。そして…弟のことも、他人事には思えないような錯覚さえしてくる。そうして私は漸く、気付くことになる。そうだったんだなあ…と。事の全ては、()()()()()()()()()()()から、始まっているのだと。私も…現世では転生者なのだと、はっきりと…理解が出来たのである。そして…前世の世界にも、転生者が存在していたのだと。


この世界には何よりも、ありとあらゆる情報が齎されており、それが正しい事実であろうが、間違った事実であろうが、全ての人間の目や耳に入って来るのである。私達みたいな一般人で、未成年の子供であってさえも、いとも簡単に。パソコンやスマホ及び、タブレットなどの端末があれば、或いはそれらを使えれば、幼い子供と言えども、何でも出来てしまう世の中であるのだ。


前世では電話もない世界で、連絡する手段は手紙しかなく、その手紙でさえ、郵便配達の仕組みもない所為で、使用人が直接持参するなど、効率が悪いものである。届けるのに何時間も掛かり、更に相手から手紙の返事をもらうのは、何日か掛かるという仕組みで。今の世界と比べれば、文明がかなり遅れていた。


今の世界の文明は、本当に有難いと思っている。文明が行き過ぎてしまえば、自然系が壊れるし、これ以上便利過ぎるのも危険だとは、この世界の人々同様に私も、理解はしているけれど。前世の自然を取るべきか、今世の文明を取るべきか、悩むところでは…あるかなあ。


それでも…やっぱり私は、前世も楽しかった…かどうか分からない(今の年齢ぐらいまでしか、思い出していないんだよね。)けど、今世はもっと楽しまなくては、と思っている。折角、こんなに便利な世界に生まれたんだもの。前世では出来ないことを、今世ではもっと沢山、経験したいのだから。


そうして私は、宣言通りに、テレビに映画にDVDに動画配信、それから…小説に漫画にアニメにゲームと、私は何でも楽しんだのよ。そうして…漸く、私は見つけてしまった。私の前世の世界に良く似た、物語を。私の前世の世界を、今の世界でも疑似体験して。スマホのゲームアプリという形で。


…そうなのよ。私の前世の世界が、今の世界では…ゲーム世界になっていたのよ。

如何やら私は、()()()()()()()()()()()()と思われる、異世界へと…転生していたのであった。

 今回は、『とある人物』としか、まだ言えない人物でして、今までに登場したかどうかも、秘密とさせていただきます。

この人物も(?)、逆異世界転生をしているのかも。

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