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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第二幕 『乙女ゲームが始まる一歩手前』 編
32/117

27話 わたくしの困惑

 今回は前半・中盤・後半で分かれております。

前半・中盤は、いつも通り主人公視点です。


今回は、ちょっと主人公の裏側を書きたいと思い、こういう形となりました。

 わたくしはこれ以上ないくらいに、動揺してしまいまして、上手くご説明できません…。婚約者だからという訳ではない、と仰ってくださることには、1人の人間として見られていることに嬉しく思うところなのですが、…今のわたくしは頭の回転が悪くて、『仲間外れ』という言葉が頭の中でグルグルと回っておりました。ですから…婚約者になってくださることだけでも、わたくしは十分に守られておりますよ、とアピールしたつもりでしたのに。


トキ様がわたくしの返事に対して、何か思うところがおありのご様子で、ブツブツと呟かれます。内容は何とか聞き取れましたものの、何を仰りたいのかが…今一、理解不能でしたの。トキ様がそういうタイショウとか、トキ様の頑張り次第とか、一体何のことなのでしょうか?…タイショウ…対称、対照、対象、大笑…???

日本語と同じ発音ですので、…意味が色々ありますのよ。文字で書けば違う言葉の意味でも、発音だけでは意味までは分からない場合があるのも、前世の日本と一緒なのです。こういうところだけ、同じでなくとも良いのに……。


後は…トキ様は、これ以上…一体何を頑張られるのでしょう?…もう既に完璧な貴公子様だと思うのですけれども…。そうわたくし思っていても、仕方がないことでしたのよ。そう言えば…わたくしが鈍いとか…言われましたような…?

トキ様から拝見されましたら、わたくしは…鈍いのですね…。確かに…トキ様と比べられましたら、何でも鈍いことになるとは思いますけれど……。そう言えば…、前世でも()()()()()()()()()を、仰られたお(かた)が居らしたような………。

…まだ記憶が8歳までの記憶しか、戻っておりませんので、その辺りは曖昧です。


そして…今のわたくしの表情を見事に当てたトキ様。そんなにも…お顔に出ているものかしら?…わたくしの表情を正確に読み取るお方は、トキ様ぐらいでしてよ。

これでも貴族令嬢として、完璧に表情を出さないように努力しておりますのに。

このように感単に読み取られますと、非常に…複雑な心境ですわね…。


わたくしらしくて良いとか、今はこれでも良いとか、トキ様がこれ以上は望まないとか、突っ込みたいような話題が多く出て参りましたが。…何なのでしょう?

何となくですが…わたくしは、このまま何も知らなくて良い、と言われたような気がいたします…。それで、合っておりますのでしたら、悲しいですわ…。

トキ様に何も知らされないのは……。まるで…わたくしには()()()()()()()()()()()()()から、もういいよ、と宣告されたようでは…ないですか…。


 「…うん…。その表情は、何か…誤解しているよね?」

 「あの…トキ様?…その表情とは…どうような表情なのでしょう?…わたくし…そんなにも、顔に出しておりますかしら?」

 「…う~ん。難しい…質問だよね…。どのような…って言われても、どう言ったら…良いのかな。…そうだね。捨てられた子猫?…とかみたいな感じ?…ああ、そんなに心配しなくてもいいよ。多分、僕だから見分けがつくのであって、他の人間には分からないと思うよ。カノンの表情を見分けるのは、難しいからね。」

 「………はい?………。捨てられた猫…?……犬ではなくて…?」

 「うん、ちょっと違うかな。捨てられた猫じゃなくて、子猫だよ。カノンは普段から…子猫みたいだからね。犬じゃあ、ダメなんだよ。」

 「………。」


トキ様にバレているとは感じましたが、その表情がどうような表情なのか、わたくし自身も知りたくて、お訊きしましたのに…。まさか…捨てられた猫とは…。

それは、犬の間違いなのでは?…そう思いながらも、トキ様が間違われる訳もないですし…。前世とは異なって、こういう時には犬の代わりに、猫と言うのかしら?

もしかして…犬は、この世界には存在しないのでは?…などと考えておりましたのに。トキ様の解釈に…今一(いまいち)ついていけません。わたくしが…子猫……。


 「…ふふっ。悩んでるね。本当にカノンは…真っ新(まっさら)で無垢だよね?…僕は、カノンの婚約者になれて、幸運だったよ。…ああ、そうそう。カノンの誤解を解いておかないとね?…このままではずっと、()()()()()()()()()()()()だからね?」


そう仰られたトキ様は当然、わたくしの目の前のソファから立ち上がられ、わたくしの隣に腰かけられると、わたくしの両手を包み込むようにして握られ、すぐお隣の至近距離から、わたくしの瞳を覗き込むようにして、話し掛けられます。


 「僕はね、カノには、今の()()()()()()『カノ』で居て欲しいんだよ。僕の為に変わって欲しくないんだよ。だから、カノが変わってしまうぐらいなら、今のままの方が良い、って思ったんだ。僕は…カノらしい方が好きなんだよ?」


知ってた?…と、耳元で付け加えられまして、わたくしの頭は…見事にショート致しましたわ。その後、一体何があったのかさえ、全く記憶にございませんもの…。






    ****************************






 気がついたら…夜になっておりました。いつの間にか、トキ様とのお茶会も終了し、彼は帰宅されておりました。わたくし…全く覚えておりません。ララとミリィにさり気なく装って、あの後のわたくしがどうしておりましたのか、探りを入れましたところ…何と!わたくし、()()()()()()()おりましたわ。…う~む。

わたくし、貴族令嬢…元社長令嬢だけありましたわ(笑)。普段からの礼儀作法が役立っておりましてよ。


ただ…トキ様には、わたくしの頭がショートしていて、機能していなかったのは…バレておりましたでしょう。それでも、これは彼の所為なのですから、仕方がありませんのよ。ですが、穴がありましたら…入りたいぐらいに、恥ずかしいです…。いくら…トキ様と言えども、男性と2人っきりの時に、何も覚えていないとは…。何かされたとしても、覚えていないのは…怖いことですもの…。

()()()()()()()()良かったものの…。トキ様でしたから…?!……。


今の自問自答で、再び頭の中がショートしかけた、わたくし…。恥ずかし過ぎて…暫く、トキ様にお会い出来ませんわ!…と言いますか、お会いしません!

……いやあ~!!! 

(※再び、頭の中はパニックとなる。表情は変わらず、身動きもしていない。)






    ****************************






 「ねえ、ミリィ。今日のカノン様、トキ様が帰られる時から、ちょっとおかしくなかったかしら?…何だか、まるでお人形が行動されているような、そんな感じがしたのだけれど……。」

 「…えっ?…そうですか?…私はいつものお嬢様と、お変わりないと思いましたけど?…カノンお嬢様は、普段からお人形みたいな可愛らしいお方ですし…。ララさんの考え過ぎではないでしょうか?」

 「…そうよね?…考え過ぎよね?…ですが、何となく、いつもより冷たい雰囲気と言いますか…。」

 「…冷たい雰囲気ですか?…でも、カノンお嬢様は、初対面では滅多に笑顔をお見せられないお人ですし、そう勘違いされることも多いそうですよ。」

 「…う~ん。それとは…何となく違うのよね~。何だか、()()()()()()()()()()()()()動いているような、と言ったら的確な表現になるかしら?…兎に角、そんな雰囲気だったのよね…?」

 「…はあ~。私には、ララさんが言って見える意味が、分かり兼ねますが…?」

 「…そうよね…。わたくしも何を言っているのか、よく分からないの。お嬢様を操る誰かなんて居るわけないし、居たら困るわよね?…だから、これは例え話よ。

でも、長く勤めているあなたが言うのだから、わたくしの気のせいね?」


カノンの専属メイドである、ララとミリィがカノンの部屋から出て来た後、廊下で2人は立ち話をしていた。自分の主人であるカノンが、何か変だと気が付いたララが、ミリィに確認したのだが、ミリィはいつも通りだと言うのである。ララは納得が行かないまでも、長年カノンに仕えているミリィが言うのだからと、無理やり納得しようと思っていたのだが…。


 「…あら、面白そうなお話ね?…興味深いわ。ぜひわたくしにも、()()()()()()()くれないかしら?…ここでは何ですから、場所を移しましょう。」

 「お、奥様…。その…これは……。」

 「あら。責めている訳ではないのよ?…ララは、カノンのことを心配してくれているのでしょう?…わたくしも、娘のことは心配なのよ?…あの子は…物心つく前から、妙に大人びた…物分かりの良い娘でしたもの。そのあの子が、変だったと言うならば、母親として何でも聞いておきたいのですわ。それが、ララの勘違いだったとしましても。…ですから、正直に詳しく教えてくださいね?」

 「…はい、奥様。」


2人が話し終わった頃に、第三者の声が2人の真後ろから聞こえて来た。慌てて振り返った2人の前には、このお屋敷のアルバーニ侯爵夫人である、アンナベート・アルバーニが優雅に立っていた。2人は慌てて夫人に礼を取る。夫人は全く気にした風でもなく、2人の会話に興味を示していた。…不味い!…ララは瞬時にそう感じていた。アルバーニ夫人は気さくなお人柄ではあるが、娘と息子を大切に思っている。そんな夫人の前で、娘であるカノンのことを、『操られたお人形』と例えてしまったのだ。流石に…不味いでしょう、これは…。


しかし、夫人の反応は違っていた。娘を心配するあまり、どんなことでも話が訊きたいということらしい。取り敢えず、咎められずにホッとした2人は、夫人にカノンの様子を伝えることにした。夫人から話を求められては、2人には拒否権もないだろう。それに、何でも娘のことを知りたいと言う母親に、ララもミリィも微笑ましいと思っていたのだから。


そうして、2人は夫人と共に、廊下から夫人の部屋に移動し、夫人には()()()()()()()()()()()()なったのである。


 前半は、前回からの続きで、カノンがトキとお茶会の様子となります。トキによって、混乱させられているカノンが見られました。早速、『カノ』呼びが……。


中盤は短めで、カノンの狼狽えぶりが、分かる内容となっております。


後半は、第三者視点となります。ララとミリィから見たカノンの様子となっています。本当は、機械仕掛けとかロボットとかで、表現したかったのですが、この異世界にあるとおかしいので、止めました。結果、お人形になったのですが、上手く伝わっているでしょうか?


後半の続きは、特に今はありません。いつか母親の視点から、書いてみたいとは思っています。

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