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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第二幕 『乙女ゲームが始まる一歩手前』 編
30/117

番外 前世と今世の2人の兄

 今回は番外編なので、別の人物視点となっています。


前半・後半の視点の人物が、同じ人物なのか、それとも…別の人物なのか…。

また、誰なのかということについては、今はまだ…ご想像にお任せ致します。

 私には、2つ年上のお兄ちゃんがいる。お兄ちゃんは、ちょっと我が儘なところもあるし、自分の妹を可愛がるような、優しいお兄ちゃんではない。けれど、私が近所のいじめっ子に泣かされて、家に帰って来た時には、お兄ちゃんが珍しく怒って、近所の悪ガキであったいじめっ子に、仕返ししてくれた。勿論、その時は年下の子に仕返ししたお兄ちゃんは、学校の先生からも両親からも怒られてしまったのだけど。それでも、お兄ちゃんは、何故か後悔していないみたいだった。


後日、私はお兄ちゃんが悪くないと、学校の先生に悪ガキに虐められたことを訴えに、お兄ちゃんが通っている小学校に出向いたのだ。だって、悪ガキはお兄ちゃんが怒られたことで、全く反省していなかったんだもん。まだ私は幼稚園に通っていたけれど、もうすぐ私も小学生になる。だから、思い切って学校の先生に言いつけに行ったのだ。


私から事実を知った学校の先生達は、慌ててお兄ちゃんに理由を聞き、うちの両親にも連絡して来た。お兄ちゃんは、私の為に仕返ししたことを、誰にも本当のことは言わずに黙っていたみたいで。学校の先生達は、お兄ちゃんに怒ったことを謝ってくれた。今度こそ、あの悪ガキ達を呼んで、彼らの両親も呼ばれて怒られたようである。悪ガキ達は小学1年生で、年下の園児である私を虐めたのは、お兄ちゃんの仕返しを帳消しにするぐらいに、悪いことと認められたのだ。


 「折角、僕が本当のこと黙っていてやったのに、何で態々、自分から先生に言いに来たんだ?」

 「だって……。お兄ちゃんが助けてくれたのに…。()()()()()()()()()()のに、怒られてたんだもん…。」

 「………。」


お兄ちゃんは、私が虐められた話を、態々(わざわざ)学校まで言いに来たことに、首を傾げるようにして訊いて来た。私はお兄ちゃんが悪くないのに、叱られていたのがショックだったから、そのことをお兄ちゃんに伝えたんだけど、お兄ちゃんは何だか照れくさそうな顔をして、黙ってしまった。…何だ~。お兄ちゃん、照れてるんだね?


いつもは、私の面倒を見るようにと、お母さんから頼まれる度に、面倒臭いと言いながらも、私の面倒を嫌々見ているお兄ちゃん。私が話し掛けても、面倒そうに顔を顰めては、それでも話を聞いてくれているお兄ちゃん。お兄ちゃんに付いて行って、お兄ちゃんのお友達に邪魔扱いされた時、私を他の友達の輪に入れてくれるように、さり気なく頼んでくれたお兄ちゃん。()()()()()文句を言いながらも、私の相手をしてくれていたんだね?…本当は…とっても面倒見の良い、お兄ちゃんだったんだよね?


両親は共働きで忙しくて、あまり私達に構ってくれなかったから、結局はお兄ちゃんが、私と遊んでくれていたんだなあ。流石に、夜は一緒に夕飯も食べてたし、お休みの日には、お父さんがどこかへ連れて行ってくれたりした。それでも、お父さんはただの会社員で、お母さんはどこかでパート勤務で、夏休みとか長い休みの時には、お兄ちゃんと2人でお留守番だったよね。


私も何だかんだ言って、お兄ちゃんの後ばかり付いて行ったっけ…。お兄ちゃんが「ちょっとお菓子を買って来る。」と言ったら、「私も行く!」とか言って、いつもお兄ちゃんの後ろばかり、歩いていたような気がする。お兄ちゃんが「宿題をするから、邪魔するなよ?」って言って来たら、私もお絵かき帳とか出して来たりして、「私もする!」とか言ってたかも…。


そう言えば…お兄ちゃん、私に「邪魔するな」とか「付いて来るな」とか、いつも言ってはいたけど、一度も私が邪魔だと追い払ったりしなかったし、付いて来た私を追い返したりは…しなかったよね?…嫌々だとしても、私の面倒をちゃんと見てくれていたんだね?


ここに居る私は、いつものようにお兄ちゃんと遊んでいる。それなのに……。

これが夢だと…何となくだけど、気が付いてしまって……。鏡に映る私は、満面の笑顔だというのに、顔を顰めて嫌そうにしているのは、お兄ちゃんの方だというのに…。今の私の気持ちは、何だか泣きそうなぐらいに、悲しさが溢れて来て…。


お兄ちゃんが目の前にいると言うのに、「お兄ちゃんは、今はどこにいるのだろうなあ。」とか、「また生まれ変わっても、どこかで元気にしているのかなあ?」とか、おかしなことを考えてしまっている。そして…今の私は、もう()()()()()()()()()()()()()のだと、心のどこかで気が付いてしまっていた。再び会えたとしてももう他人で、きっと…お互いに気が付かないのだろうと…。


心が痛い…。私って、結構、お兄ちゃんのことが好きだったんだなあ。嫌いじゃないぐらいしか、思ったことがなかったけど、本当は…案外と好きだったんだね?

お兄ちゃんと会えないと気が付いてから、自分の気持ちに気が付いた。こういうのが、後悔って言うんだね?


お兄ちゃんは前々から、絶対に素直じゃないって思っていたけど、私も…相当に素直じゃなかったんだね?…私達、やっぱり()()()()()()()()んだね、お兄ちゃん!






    ****************************






 わたくしには今も、お兄様がおりますの。年齢は3歳年上なのですけれど、とても優しい面倒見の良いお兄様です。…()()()()とは違いまして。両親もこの世界では珍しい恋愛結婚でして、わたくし達兄妹も出来るだけ幸せになって欲しいと、婚約者を選ぶ際にも、気を遣ってくださっております。お兄様は外見もとても素敵ですし、性格も全く問題のないお方ですから、婚約者の申し込みも早くから来ていたそうですのよ。但し、お兄様には幼馴染であるお姉様がおられますが。


お兄様は、お姉様のことが大好きなようでして、頻繁に会いに行かれますのよ。

そのお姉様は可愛らしいお(かた)で、とても素敵なお人なのです。礼儀作法も既に今から完璧ですし、才女と噂されるほど頭の良いお方です。我が家の両親とお姉様のご両親が、王立学園時代からのお友達とのことで、今も仲良くされているのです。


そのお陰で、お姉様とも懇意の関係となりましたのよ。…うふふ。お姉様とお兄様が婚約される前には、お姉様も既に婚約の申し込みが殺到されていた、とお聞きしておりますわ。危なかったですわ。幼馴染で良かったですわね、お兄様?


お姉様と初めてお会いした時、お兄様は呆けておられたと、メイド達の専らの噂ですのよ。「きっと、一目惚れされたんですよ。」と、うちのメイドが申しておりまして。そうですわね。お姉様にお会いした時のお兄様は、いつも以上に優し気な視線を、お姉様に向けておられますものね。そんなにもお姉様に夢中なのでしたら、もっと早くに婚約されても良かったですのに…。まあ、お姉様のお父君が、異常なほどにお姉様を溺愛されておられますから、申し込みに中々許可が出されなかったのかもしれませんわね?


「我が家の生まれた子供が男で、あいつの家で生まれた子供が女だったら、婚約させても言い、と昔に約束したことがあったのに、その通り生まれた途端に、あいつはその約束を反故にしたんだよ。お陰で…2年も、会わせてもらえなかったよ。」


お父様が、そう愚痴を零されておられましたわ。お兄様にお姉様を盗られたくないと、いつも仰られていたそうでして…。トーマ小父様って、大人げないのですわ。わたくしもお姉様のことは大好きですから、漸くお兄様の婚約者となられ、とっても嬉しく思いましてよ。


わたくしも物心がつきました頃には、お姉様がお兄様の婚約者候補だとお聞きしまして、あのお姉様がわたくしの姉になってくださるかと思えば、わたくしもお姉様を見本とし、完璧令嬢を目指して、礼儀作法やお勉強を頑張っておりますの。

まだまだ、お姉様には敵いませんけれども、少しでも憧れのお姉様に近づきたいと、毎日自分磨きをしておりますわ。


ですから、お姉様がお兄様の正式な婚約者となられた今は、本当に飛び上がって喜びそうになりましたのよ。わたくし、生まれてきてから一度も、そのような()()()()()()()をしたことも、ありませんのに…。その時は、それだけ喜びが大きかったと思い込みまして、気がついておりませんでしたが……。


今更ながらよくよく考えましたら、それだけ喜びが大きかったとしましても、やはり貴族の令嬢としては、不自然なことと考えるべきでしたのよ。もう既にその頃から、わたくしは()()()()()()()()()、これまでのわたくしとは微妙に異なっておりましたのかも…。そして…その頃から、お兄様に対する違和感も、出て参りましたのよ。わたくしと血の繋がったお兄様の筈なのに、何故か別人だと思う時がありますし、()()()()()()()()()と、わたくしのお兄様を比較してばかりで……。


ですが…最近になって、漸くその誰かが…誰なのか、正体が分かって来たのです。お誕生日会を終えたその日から、急に生々しい夢を…見るようになったから、なのです。夢は白黒ではなく、カラーで色がついており、まるで映画を鑑賞している気分でしたわね。…映画?…はて?映画とは…何でしょう?


わたくしの頭の中に、今まで聞いたことのない言葉が、次々と…浮かんで来ます。当初はそういう言葉の意味が、自分で思い付きながらも意味が分からず、混乱ばかりしておりましたのに…。最近は暫くすれば、意味も分かるようになりまして、余計に混乱しておりましたのよ。


そして…その夢に、必ずというほど登場する人物は…。前のわたくしにとっては、とても大切な人なのでした…。どうしても…今と比べてしまうけれども、わたくしにとっては…どちらも大切な人、に違いないのでして…。


ですから、()()()()()()くらいならば、お許しくださいませね、お兄様?

 今回は番外編の為、前半と後半で視点の人物が、主人公ではありません。

今のところは…まだ内緒とされていただきます。…と言いますか、前半は兎も角も、後半はバレバレですが。


副タイトルの意味に関しても、今はまだ、詳しくは伏せさせていただきます。

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