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運命の転生劇 ~乙女ゲームの世界へようこそ~  作者: 無乃海
第二幕 『乙女ゲームが始まる一歩手前』 編
25/117

22話 3人目の転生者

 いつも通り、前半は、主人公視点です。


後半は、別の人物視点となっています。

 サンドル侯爵家は、ラドクール公爵家並びに、アルバーニ侯爵家と同じく、歴史も古く由緒代々続く家系です。ラドクール公爵家が、宰相を代々生み出す家系であるならば、アルバーニ侯爵家は、王家の重要な政治を行う機関である文官の家系でありますの。そして、サンドル侯爵家と言いますと、男性は全て騎士を目指すという程に、騎士を輩出する家系なのでして。次男であるエイジは勿論のこと、嫡男であるリョー様も騎士を目指し、特訓をされておられます。


サンドル侯爵様は、実はご結婚されてからも暫くは、王家の騎士団の第一部隊の団長をされておられました。しかし、お子様が大きくなるにつれて、この国に対して紛争など何か問題が起これば、団長として真っ先に向かわなくてはならなくなり、家族の残して行くことに不安を持たれたのでしょうね?サンドル侯爵家も、わたくしの父と同様に、家族思いのお方だと思いますのよ。しかし、とても不器用なお方と……、お見受けを致しますが……。


サンドル侯爵様は騎士団の第一部隊の団長を辞職なされて、その後は騎士団の見習いの指導の方へ転職なされました。実際には退職した訳ではありませんので、異動といった感じなのですが。見習い騎士達のご指導を担当されておりますので、当然の如く、騎士志望の少年達の面倒も見ておられます。その騎士志望の少年達の中には、サンドル侯爵様のご子息も含まれておりまして…。つまり、リョー様とエイジのことなのです。


以前からご自宅の方でも、大層厳しく指導なさっていたご様子でしたが、騎士団の騎士見習い用の訓練所でも、サンドル侯爵様はそれ以上に厳しく、指導や態度を取られているようなのでした。何でも…他の騎士見習いよりも、厳しい態度で接してみえるそうですから、一時期はリョー様も、お父君(ちちぎみ)とご対立なさっていたとのことでしたわ。


今はもう、リョー様は父君と和解されていらっしゃいますが、今度は如何やら、エイジの番ということらしいですわ…。然も、エイジに対しては、リョー様も厳しく接してみえるそうですから、エイジは尚更のこと、自分が嫌われていると感じてしまっているのでしょう。


お父君ももう少し、ご自分のお気持ちをお伝えされれば、誤解も解かれるのでしょうに……。同じくそれは、リョー様に対しても言えることですが…。特にリョー様は、ご自分も同じような経験をされたのですから、もう少しご配慮されればよろしいのに、と思ってなりません。サンドル家の方々はその点では、本当に()()()()()()()()だとしか、思えませんですわね?


まあ、そういう訳ですから、エイジとお父君と兄君は、専ら仲違い中なのでありました。エイジの性格は…この貴族社会には珍しく、只管に真っ直ぐな思考の持ち主でして、こういう裏の顔や表現を見抜くことが、不可能な程の真っ直ぐさなのですよね。前世の世界ならば、好感の持てるタイプと言えるでしょう。


良い意味では、素直で実直なお人柄と言えますでしょうが、この国での貴族という立場からは、悪い意味では、生き残るのが難しいと思われますわね。この国というよりも、この世界全般で考えますに、貴族とは本来、()()()()()()()()()()()()()()()()なのですわ。これほどまでに真っ直ぐ過ぎますと、貴族社会では即、騙されてしまうことでしょうね?


では、エイジの性格は誰に似たのでしょうね?一般的にこの場合は、お母君と思われますよね?確かにエイジのお母様は、物静かなおっとりしたお方に思われます。しかし、ただのそれだけのお方では、サンドル家の主人がいない留守を守り、あのサンドル侯爵様を理解することなど、出来ませんでしょうね?


ああ見えて、サンドル侯爵夫人は、結構強かな心の強いお方だと、わたくしはそうお見受けいたしましてよ。でなければ、あのサンドル侯爵家一家を、背後から守れないと思われますわ。エイジはそういう点でも、お母君さえ似ておられませんものね。勿論、似ておられる部分は…他にはありましてよ。


では、本当に誰に似たのか?…ということになりますが、その点はきっと…()()()()()()()()、と言わざるしか負えませんね?…多分なのですが、この性格は前世の性格にも、由来するものではないでしょうか?…エイジが本当に、前世の記憶保持者ならば、十分にその要素はあり得るのです。


そう言えば…実はリナも、初めてお会いした頃とは、何となくではあるのですが、言葉使いが時々乱れますし、態度も少々砕けた感が出て参りましたし、前世の性格に多分に引き摺られているご様子も見られます。きっとこれが…本来の、リナの姿なのでしょう。


そういうわたくしも、わたくし自身は全く変わっていないと思っておりましたが、もしかしたら…前世の記憶に引き摺られておりましたように、性格も引き摺られておりますのかも…しれません。リナに尋ねても分からないでしょうから、今度トキ様にお尋ねしてみましょうか…?






    ****************************






 「……エイジ。……エイジ!…わたくしのお話を聞いておりますの?」

 「なんだよ……リナ。うっせえなあ…。行き成り訪ねて来て、俺とお茶会とかしたいって…、一体何なんだよ。オレ、今日は自主練(じしゅれん)しないと、いけないんだぞ!」

 「………。エイジこそ、何を言っておられますの?…抑々、お茶会の件は、もうだいぶ前から、お約束しておりましたでしょう?…今日、突然訪れた訳ではありませんことよ?…最近のエイジは一体、どうされたのですか?…いつもこのように、イライラなさって……。エイジこそ、変ですわよ?」

 「……本当にうっせえなあ!…()()()()()と…同じことばかり、言うなよ!オレだってなあ、色々と我慢したり……してんだよ。…兎に角!…オレにも…色々と事情が、あるんだよ!…女のリナには、分かんないんだよ!」

 「………。エイジの姉貴?…とは、どなたのことでいらっしゃるの?…わたくし初めて、お聞きしたと思いますけれど?…もしかして、わたくしの知らないお方なの?…でも、親戚にもお姉様と呼ばれるようなお方が、いらした…かしら?」


エイジがこの日だったら大丈夫だと言われましたので、そのお約束の日に伺いましたのに、彼は物凄く不機嫌でしたわ。ゴネているエイジを、見兼ねたエイジのお母様が彼を説得し、こうしてお茶会をしておりますけれど…。エイジは(すこぶ)るご機嫌がお悪いのです。不貞腐れたようなお顔をして、ムスッとしたままそっぽを向かれていて、わたくしのお話をきちんと聞こうとされないのです。


然も、最近はずっとこのような感じなのです。彼のお母様である侯爵夫人のお話に依りますと、どうやらお父様である侯爵様と、お兄様であるリョー様が、エイジに厳しく指導されていることが()()()()()()()()()らしい、とのことでしたわ。

流石に、わたくしもそろそろ不満が溜まりまして、エイジに問い詰めようとしましたら、彼は意外な言葉を口に出したのです。


…オレの姉貴?…エイジの姉貴って…どなたのこと?…勿論、彼にはお姉様をおられません。亡くなられたという訳でもありません。彼には元々お兄様であるリョー様と、2人きりの兄弟なのです。姉がおられる訳がないのです。そうすると…親戚にそういう人がおられる、ということになりますね?…しかし…わたくしは、彼が言うような姉のような人物に、お会いしたことがないですし、今までお話で聞いたこともありません。親戚にいらしたら、きっとお会いしたことがある筈なのです。だってわたくしは、エイジの婚約者なのですもの。


ですから…聞いた瞬間から、何か変だと思ったのです。先程の会話での言葉で、自主練と言われておられましたけれども、自主練って…()()()()()()()()ではないかしら?…前世の日本では、言葉を短くする習慣がありましたものね?…残念ながらこの世界では、そういう短縮する習慣はない、と思われるのですよね?


エイジは突然黙り込みました。都合が悪くなって黙ったということではなく、単に考え込んでいるようでした。もしかして…ご自分でも、気がついておられなかったのかしら?…ふと、エイジも前世記憶保持者なのでは?…そう思いましたわ。

エイジは顔に皺を寄せ、首を傾げながら懸命に思い出そうとしている、ご様子でしたの。エイジ自体も全く気にしていなかった、ということでしょう。


 「……オレ、そんなこと…言ったか?…リナの聞き間違いじゃあ、ないのか?…オレは兄貴って言ったんだろ?…兄貴のように……って。………あれっ?」

 「……いいえ。わたくしは…ちゃんと聞いておりましたわ。エイジは確かにはっきりと『オレの姉貴』と、仰いましたわ…。」

 「………。」


エイジは誤魔化すというご様子ではなく、本当にわたくしが聞き間違いをした、と思っていらっしゃるようでした。しかし、自分でそう言っておきながらも、おかしいと思ったようでして、再び考え込むような素振りが見られます。わたくしもこのまま有耶無耶にされたくありませんので、はっきりと否定致しましたわ。

エイジは今度こそ、具合が悪そうなお顔をされます。


 「エイジ…。前世という言葉の意味が分かりますか?…もしかして、あなたには記憶があるのではないですか?…そういう過去の夢を見ませんでしたか?」

 「…… !?………。」


わたくしは意を決して、彼に真っ向からお話を切り出します。エイジは転生者ではありませんか?…ということを。この世界には、前世や来世という言葉がないようなのです。いえ、言葉自体はありましても、そういう概念がないということなのでしょうか?…ですから、前世と聞いても意味が分からないようですの。


 「……前世?…生まれ変わる前のこと?…そういう過去の夢?……オレは…()()()()()()()()なのか?」

 前半は、カノン視点となっていますが、後半では、リナ視点となっています。

一応、リナが体験した出来事を、カノンに語っている内容ということになるでしょうか。


しかし、エイジはこの時点で、まだ覚醒しておりません。エイジとの遣り取りは、次回へ持ち込みとなりました。もう少し続きそうです。



サンドル侯爵:サンドル侯爵家の当主。リョーとエイジの父親。

       この頃は30歳前頃。今のところ、名前は決まっていない。

サンドル侯爵夫人:サンドル侯爵家の当主の正妻。リョーとエイジの母親。

         夫より1歳年上。今のところ、名前は決まっていない。

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