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アンドロイド三成くん  作者: 砂糖あきお
笹木朱里 -Akari Sasagi-
1/4

三成くんはアンドロイド

___三成くんは、人型ロボットだ。人造人間だ。俗に言うアンドロイドだ。

3年生の始業式の日に全校生徒の前で、綺麗に一礼をした彼は、いかにも人間で気持ち悪かった。

三成くんは、すぐに人に囲まれた。端正な顔立ちに作られているため、女子はすぐに彼に群がった。まるで飴を囲むアリのように。そしてその飴は地に足をしっかりつけ、ただ群がる女子に会釈をしていた。

躊躇もクソもなく女子はペタペタと三成くんに触った。

「三成くんってやっぱ生きてないんだね〜冷てぇ〜。」

「え、でも顔は綺麗。ツヤツヤだよ。ほら。朱里も触りなよぉ。」


男。


そう思った瞬間に掴まれた手を叩いた。

一瞬でそいつ、真綾の顔は曇った。やってしまった。

「…朱里?」

「…いや、ちょっと私そういうの慣れてないからさ。」

「あっ!そーなの?やだぁ、朱里ってウブだね!」

指の付け根までカーディガンを伸ばしてある手で、ちゅんと小さな口を隠し、真綾はクスッと笑った。

「そーかも。」

とりあえず、笑顔を貼り付ける。これが正解って私は知っているから。



___三成くんは、男だ。男なのに、無機質で、変な人。

「笹木さん。」

呼ばれてハッと振り返る。三成くんだ。改めて見て、整った顔立ちだ。無駄のない配置。まぁ、そっか人造人間だし。

「今日公民のノート集めの日なんだけど、笹木さんのだけ出てなくて。」

言いにくそうに、目を泳がせて三成くんは言った。

何人間みたいな態度とってんの、気持ち悪っ。

と言う目で彼を見つめると、三成くんは口をシュッとすぼめた。三成くんは、男?

男として、見るもの?

だとしたら、もう私の目の前に来ないで欲しい。

「はい。」

半ば投げつけるように三成くんに渡して、私は真綾達のいる下駄箱に向かった。


なるべく待たせないように、階段を駆け下りた。

途中で階段を踏み外しそうになりながらも、手すりにしがみついてなんとか耐え、下までおりた。

「おまたせ!」

下駄箱の隅の段差に座っていた真綾と結衣は同じタイミングで顔を上げた。

「んーん、待ってないよぉ。掃除?」

真綾は相変わらずの長い袖で手を振りながら、ニコッと笑った。

「いや、ノート提出忘れてて、三成くんに捕まっちゃった。ごめんねっ。」

ひひっと笑って上履きから外靴に履き替える。踵を踏んでいるけど、とりあえず歩き出す。

「いーよ、ゆっくり履けって。」

結衣は呆れたように笑う。ありがとうー、と返して人差し指を踵に突っ込み、入り込んでしまった靴の後ろを引っ張って履き直す。

少し先を歩いた2人に駆け寄って追いつき、2人の後ろに並ぶ。細い道だから、私は少し後ろを歩く。

時々、二人の会話が聞こえなくて寂しい。

聞こえる時だけ上手く返して、会話に参加する。

これで私は、このグループの1員…のはず。

「ねー、昨日の『初恋はティラミスのように』みた?」

「ねぇそれは録画して今日見るの。昨日塾だったからさぁ。…朱里はっ?」

み、見てねぇぇぇええええ。『初恋はティラミスのように』ってなんだよ。チーズケーキ?女児漫画?そんなの見ている時間はない。私はそのあいだ仮眠!!私はその後の後の後くらいのアニメがみたくて日々を生きているのに。

「見てない〜録画し忘れちゃったんだ。」

録画もするわけねーだろ、我が家のメモリーを馬鹿馬鹿しいチーズケーキのために埋めるわけにはいかない。だから必殺『録画し忘れ』で、興味のないテレビ番組からは逃れる。こういったおっちょこちょい系のキャラは楽だ。変に期待されないし。

そんな小さな積み重ねによって、『朱里』という女はじわりじわりと形成されていく。

そんな風に、あと残り少しの中学校生活を過ごして行ければいいなと思っていた。





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