彼の日記3(前半終了)
7月4日
最近雨ばかりで退屈だ。梅雨に入ったのな。まあ病室から外が見えるわけじゃないんだけど、窓の外からは雨の音ばかり聞こえる。
この病室には天井近くに窓があって、僕たちは直接窓から外を覗くことができない。部屋に大きな窓があれば気分転換になるのに。そうみるちゃんに言ったら、
この病院には著名な医師の集まる精神科もあって、昔は入院した患者が下手に窓から身を乗り出したりする事件もあった
と、言われた。それから病室には比較的高い位置に窓がつけられるようになったらしいと教えてくれた。
最近は一日中、そこに雨が打つ音が聞こえる。雨って冷たいんだろうな。たまには外に出てみたい気持ちもあるけど、ここではお医者さんの許可を取って、かつ看護師が付いていないと外出させてもらえない。それもきっと昔の患者が派手な行動を取ったりしたせいなんだろうな。
僕も前、みるちゃんをこっそり屋上まで連れ出してしまった。これは怒られるかも…僕もちゃんとした外出許可が取れるくらい元気になったら外の空気を吸いに行きたいな。
8月14日
今日で目が覚めてから5ヶ月だ。もう5ヶ月も経ったなんて信じられない。最初は大変だったけれどこうやって思い返すとあっという間だったな。
今日は夏祭りがあったんだ。夏祭りといっても病院の屋上で開催されたちょっとした催し物なんだけどね。
何しろ暇な僕たちにとっては非日常で楽しかったよ。なんとなく懐かしい雰囲気のお祭りだった。僕はみるちゃんしか知り合いがいないし、みるちゃんもそんな感じだったから、2人で回ることにした。もちろんこの日も機械漬けの時間があったから、一緒に回れる時間は少なかったんだけどね。
みるちゃんはいつもポーカーフェイスなんだけど、今日はちょっと楽しそうだった。何もしないのもあれだから、ヨーヨー釣りとかして、2人で貰ったヨーヨーで遊びながら歩いたよ。
そしたらみるちゃんは突然、「みけは外の景色を見たいと思う?」とか聞いてきて、いつも自分から喋り出さないみるちゃんにしては珍しいなと思ったよ。
そんな話をしてたら、ちょっと嫌な予感がしたんだ。すごく大きな音の予感。嫌な感じがした。
そしたらやっぱりだ。屋上中にサイレンが鳴り響いた。一瞬どよめきが起こって、看護師さんやお医者さんがたくさん走ってきたよ。植物の間からちょっと覗いたら、患者さんが塀の横で倒れていた。どうやら鎮静剤を打たれたみたい。
この病院では塀にちょっとでも触るとサイレンが鳴るみたいだ。みるちゃんいわく安全上の対策らしい。
まあこんなちょっとした事件はあったけど、みるちゃんとたくさんお話できてよかった。なによりみるちゃんが楽しそうだったからよかった。