Ⅱ
フェアリーキス大賞3への応募作品です。
私は今日も図書館で本の整理をしています。
今遣っている作業は、返却された書物を元の場所へ戻す作業。
まぁ、何時もの単調な仕事ですが、とても大杼な仕事です。
きちんと元の場所に置いておかないと、次に見つけるのに非常に困りますし、なにより利用者の方々が見つけられなくなります。
「少しいいかしら」
声を掛けられた私が振り向くと其処にいたのは、一人の女性。
ウェーブがかった奇麗な長い金髪に灰色の瞳をした、美しいドレスを身に纏っている麗人。
歳はおそらく二十代後半から三十代前半。
左手の薬指に指輪をされてるにで、ご結婚されているのでしょう。
穏やかに微笑まれた様子から、優しい人のような印象を受けます。
「はい、如何されましたでしょうか?」
「実はね、ルルシアーナ氏の刺繍本を探しているのだけれど、探しても何処にあるのかよく分からなくて・・・・」
ルルシアーナ氏は有名な刺繍作家で、沢山の刺繍を作られています。
刺繍は貴族の嗜みとしてされていましたが、多くに人に刺繍の素晴らしさを広めたいと思われたルルシアーナ氏は筆を執り、刺繍の遣り方を書いた本を出版されました。
そのおかげで今では平民の間でも刺繍の文化が広まりました。
「ルルシアーナ氏の刺繍本ですね。それなら此方ですよ」
「まぁ、貴女は場所を覚えていらっしゃるの?」
「はい」
「凄いわねぇ」
「有難う御座います。索引を使わずに案内すると、皆さんに驚かれるんですよ」
私と夫人は向かいながら少し話をしました。
夫人はルルシアーナ氏の刺繍が好きでよく本参考にしながら刺繍をされているそうなのですが、殆どの本を読みつくしたそうです。
しかし未だ読んでいない特別版がこの図書館にあると知り、借りに来たそうです。
「此処ですね。・・・特別版・・・・特別版っと・・・・。あ、ありました。此方になります」
「まぁ、有難う。これでもっと色んな刺繍が出来るわ。本当に有難う」
「いえいえ、お礼には及びません。それより、見つかって良かったですね」
「ええ!あ、そうそう、聞いていなかったけれど、貴女の名前はなんていうのかしら」
「私ですか?私はシェリア、シェリア・ファランドと言います」
「シェリア、そう、貴女が・・・・・うふふ」
「?如何かなさいましたか?」
「何でもないのよ。うふふふ」と夫人はそう言って美しく笑われます。
一体、如何したのでしょう?
「わたくしは『アイリーナ・ジェリファルコ』よ。アイリーナと呼んでね。今日は有難う、助かったわ。また会いましょう、シェリー」
アイリーナ様はそういうとドレスを翻し、カウンターへ向かって行かれました。
それから私は本を戻したり、利用者の方々の対応をしたりと忙しく動き回っていました。
仕事が一段落し、先輩に「もう帰っても大丈夫だよ」と言われたので失礼して先に帰宅しました。
そういえば、アイリーナ様に私の愛称を教えてないようなと思いましたが、気の所為でしょう。
読んで頂き、有難う御座いました。
そしてブックマークをして頂いた方々、本当に有難う御座います。
これからも頑張って行きますので、宜しくお願い致します。