2段ベッドの扱い方
学校の行事にしろ、何かの行楽にしろ。旅とは家と違った場所で寝泊りをするものである。
スペースを上に広げて、工夫された寝床も開発された。
「広嶋くん!広嶋くん!2段ベットだよ!2段ベット!」
「はぁ……。2回も言うな。2回も……」
「ギリギリ一部屋空いていて、ラッキーだよね!」
例えばカップル。
「カップルだって!あたし達!サイコーのコンビだもんね!」
「はしゃぐな、ミムラ」
でれでれになっている彼女が、赤い両頬を抑えて。彼氏はそんな彼女の元気に溜め息こぼして、からかってやる気になる。
「俺、下のベッドな」
「いいよ!いいよ!なら、あたしは……」
「お前は床でいいだろ?」
「2段ベットの意味は!?せめて、その……一緒に寝ちゃおうとか……」
「ない。明日早いんだから、寝るぞ」
「んもー……」
一度限りや数日限りの居場所に、人々は様々な経験をする。
「くーっ……くーっ……」
「特に何もなく、寝たー!?広嶋くん、話しでもしようよー!えーっ!?上にいるんだから、昇ってきてもさぁー!ぐすん……」
何もない。あるいは、相手にされないというのも経験である。
◇ ◇
「2段ベットですか。贅沢は言ってられませんか。台風ですし」
「伊賀。お前は上に寝ろ」
例えば、ボディガード。
取引先に向かう途中、急な嵐で足を止められ、近くのホテルに入った事。
「なぜですか?王くん。私、ムダが嫌いなんで、下がいいです」
「俺が警護役だからだ。下の方が対応しやすい。お前はいつもみたいに気兼ねなく、休息しろ。上の方が休めるものだ」
「なるほど」
休む場で、休む事ができない人もいるものだ。
「旅で興奮する男の子的な気分ですか」
「ガキじゃねぇよ!」
肝心な場面で寝過ごしちゃう。
そんな感じ
「ふふっ、こーいう時はなかなか眠れないですよ。1日、2日程度。寝ないでも平気です」
「ったく。読書するくらいなら寝ろよ」
気遣って、お互いが絶妙な距離の上下関係を作ってくれる。灯消える事無く、ずーっと起きている。
分かり合って、信頼しあう事。
◇ ◇
「2段ベッドだが、どっちがいい……?」
「舟はどっちが良い?」
例えば、ゲイ。
「…………四葉は?」
「ふふっ、決まってるだろ」
男と男が一緒の部屋だ。
「舟が選んだベッドに、俺も入る」
「誰か部屋を代えてくれ。助けてください」
危険な匂い。
「ダブルだったらもう止められないじゃないか」
「止めろ!おい、ホントに誰か助けろ!ホント!」
「こーいう機会は滅多にないぞ」
「滅多なんて事、起きない方がいいわい!俺、上!四葉、下な!」
結局、イケナイ情事はありません。
舟は避難する形で上のベッドを選択し、いつでも上がってきても、蹴り落とせる上で寝ずに待機していました。一方、下にいる四葉は普通に寝ていました。
2人で2段ベッドはやっぱり。
「一緒に寝る奴による!!」
ですよね?