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灰色の守護神~神は灰の中から蘇る~  作者: 八神 紫雲
第一章:敗北からの復活
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第八話:現状把握

 オークとの戦闘終了後《神の眼》と《分身体》をフルに活用した結果、アッシュとシーナの二人は無事ゴブリンの群れに気付かれずに村へとたどり着くことが出来た。村の入り口につくと村長とリア、ガンツについでにバッチが二人を出迎える。どうやら陽動に出てからずっと彼らの帰りを待っていたらしい。二人が無事だと確認すると村長とガンツ、バッチは安堵の表情を浮かべ、リアはいきなり二人に抱きついてきた。


「良かった。・・・あんたたち心配したんだからね!」


「おばさん・・・ごめんなさい。」


涙を流し抱きついてくるリアを見てつられて涙を浮かべるシーナを見てアッシュは表情を緩ませゆっくり口を開く。


「シーナ、そういう時はごめんなさいじゃなくて・・・そうただいまっていうんだよ。」


「そう・・・ですね。おばさんただいま。」


「ああお帰りなさい二人とも改めて無事でよかったよ。」


 アッシュたちを離し涙をぬぐったリアは満面の笑みで改めて二人を出迎えた。そこに村長が報告を頼みたいと言ってきたのでアッシュは結果を報告。ゴブリンは残り17匹、オークは残り2匹とあえて報告した。本当はオークは4匹いて全部倒してきましたなど言った日にはさすがに心配&不安にさせてしまいそうだったからだ。そこら辺を考慮してあえてそう報告すると撤退する最中にシーナにも口裏を合わせてもらうようアッシュがお願いしておいたのでシーナも同じように報告した。


「そうか・・・すまないね。陽動だけでなくゴブリンも減らしてもらった。こちらがゴブリンを倒せるとわかれば慎重に行動するだろう。村を防衛しつつ冒険者たちを待つだけの時間は稼げそうだ。」


「もし村まで奴らが来るよならその時は俺がまた時間を稼ぎますよ。」


「しかしそこまでしてもらうわけには・・・。」


「一度乗りかかった船です。最後まで付き合いますよ。」


「・・・すまない・・・・。ささ、今はとにかく二人とも休んでくれ。リア頼めるか?」


「えぇ任しといてください。さあうちにおいで!腕によりをかけてご飯つっくてあげるからね!」


「「はい。」」



 それからアッシュ、シーナ、ガンツ、リアはバッチ亭に戻りリアは食事の準備、シーナは水浴びに向かいアッシュとガンツは一階の食堂の椅子に座りくつろいでいた。アッシュはこれからもし村に魔物が攻め込んできたときどう対処するかを考えていたがふとガンツが異常に静かなことに気が付いた。自分たちが帰ってきて村長に報告したあたりから妙に考え込んでいるというか何か言いたいが我慢しているというか・・・。


「ガンツさん・・・どうかしましたか?」


「ん?・・・あぁ・・・・・・確信がねえから言うかどうか迷ってたんだが・・・・まあいい。言わないのは体に悪りぃわ。おめえ戦ったのはゴブリンだけじゃねえだろ?」


「え?」


「その剣の鞘の先端のへこみ。ゴブリンの軟な体にどうぶつけたってそんなにへこんだりしねぇよ。・・・おめえオークともやってきやがったな?」


 ガンツに言われ腰に差したさやの先端を見ると確かにへこんでいる。この先端の部分には鉄でできたカバーがされており鞘のパーツの中では一番頑丈な場所だった。その場所がへこんでいるのだからあのオークの力はかなりのものだったのだろう。攻撃をはじくためでなく全力で叩き潰しに来ていたらこの鞘は粉々にっなていたかもしれない。


「よく見てますね。」


「俺はこれでも元Aランク冒険者だったんだぞ?歳で体は衰えちまったが洞察眼までは錆付かせちゃいねえよ。どうせあめえのことだからいらぬ心配かけまいとわざと軽い報告に押さえてたんだろ?」


 アッシュはこれはかなわないなと観念し本当のことをガンツに報告した。最初報告を聞いたガンツは驚愕していたがアッシュが取り出したオークの魔石を見て本当のことらしいと諦め大きくため息をはいた。


「まったくおめえには驚かされっぱなしだな・・・しかしシーナが≪炎の魔力≫を持っているとはなぁ・・・。」


「彼女魔力の量もそうですが飲み込みも相当早い。才能の塊ですよ。」


「そっか・・・流石あいつらの・・・ってことか・・・。」


「あいつら?」


「あ、いやこっちの話だ。・・・それよかおめえそれだけの戦闘力と相手のギフトを見れる眼、そしてそのギフトの使い方を知っている知識・・・旅人なんてやめてどっかの国の騎士か冒険者やったほうがよくねえか?俺の見立てじゃ結構上まで行けそうなんだがな。」


「買いかぶりすぎですよ。それに騎士なんて堅苦しいのは俺には合いませんよ。冒険者は・・・これからお金もいりますし・・・どうしよっかな...。」


「なんだぁえらく歯切れの悪りい答えだな。」


「いえ・・・あまり組織に入って縛られるのが好きじゃないってだけですよ。」


「ふむなるほどなぁ・・・自由を愛する冒険者って謳い文句な冒険者ギルドでもルールはいろいろあるからなぁ。」


「だと思います。ルールがないと組織は成り立ちませんしね。まあここの宿屋代と村長から借りた装備の修繕費ぐらいは稼がないと・・・。」


「一応ここの宿泊費は厚意でタダにしてもらってるしジニンじいさんのほうは気にしないと思うけどなぁ。」


「それでもいつかはその恩を返したいですよ・・・ならやっぱりこれがひと段落したら冒険者やるしかないかなぁ・・・ほかのことで稼ぐのもいいけど戦うことぐらいしかとりえないし。」


「ガハハほんと変わったやつだなおめえは。…でもよこれだけは覚えとけ。人のため人のためって動くやつは確かに正しい…だがそういった奴から死んでいく…この世界ってのはそういう風に出来ちまってる。嫌な話だがな。」


急に真面目に語りだすガンツを見てアッシュはにっと笑って見せガンツの顔をまじまじ目始めた。


「な、なんでぇい?」


「いやぁ…顔は全然にてなくてもやっぱりシーナの家族なんだなぁって思っただけですよ。…昨日の夜シーナにも同じようなこと言われましたよ。」


「そ、そうなのか?…てかてめえ何さらっとうちの孫と夜会ってやがる!!」


「まあその時も言いましたけど…。」


「スルーしやがった…。」


「俺は死にませんよ。まだやること一杯ありますし、そのために強くならなきゃならない。それに…。」


「それに?」


「俺結構わがままなんです…だからいろいろなことに対して諦めたくないんです。守ることも生きることも…ね。」


「フッ……ほんっとうに変わったやつだな。」


シーナが水浴びから宿に戻ってくるとそこにはまるで子供のように笑い合う大人の二人がおりシーナはしばらく困惑することとなった。



ガンツと打ち解け後、何事もなく翌朝を迎えたアッシュは早朝からバッチ亭の裏庭を借りてこれまた村長から借りた片手剣で素振りを行っていた。とりあえずこの世界での戦闘を2回ほど経験はしているものの改めて今の自分の実力を考察する時間はなかった。そこで今日はゴブリンの襲撃に備えつつ現状把握の時間にしようと考えたのだ。剣の技術、体さばき、魔力探知、午前中丸々使って調べた結果、筋力は通常の男性の約1.5倍ぐらい(バッチとの模擬戦調べ)。神であったころと比べると約1/10程度に落ちている。たったそれぐらい?と思うが有り余る魔力による身体強化と主神からもらった豊富な加護のある神にとって差して筋力は必要ない、よって素の身体能力はそんなものである。体力のほうも同じく1/10程度に落ちていた。次に技術面だが知識としては神であった当時と何ら変わりがない。しかし筋力、体力が落ちている今では体が思うようについていかず使えない技が多い。今は元Aクラス冒険者より少し高いぐらいだ(ガンツとの模擬戦調べ)。これはいち早く筋力強化しなければ今後の戦闘に支障が出てしまう可能性がある。最後に魔力に関してはやはり格段に落ちており今現在の魔力量は神であったころに比べ1/100程度、まあ魔力感知能力が神であったころと全く変わらなかったのが唯一の救いだった。とりあえず現状把握を終わらせ昼食をとった後、シーナが魔力の使い方を教えてほしいと言ってきたので午後からは裏庭で村長に借りた魔法教本の入門編を読みながらシーナにこの国の魔法を教えることにした。


「したのはいいけど・・・えっと何・・・この効率の悪い手順?この威力とこの魔力消費でなんで詠唱が必要なんだ?」


「アッシュさん?」


「この魔法理論なら逆に詠唱すると魔力消費増えないか?えーっと無詠唱の方法は・・・あこれさらに非効率だ。なら概念だけ真似て自分で理論構築して・・・とにかく魔力消費を押さえて最大レスポンスを・・・。」


「アッシュさん!」


「ふむふむこれなら普通の人間でもやれそうだ。いやここをもっとこうしたらさらに楽に・・・。」


「アッシュさん!!!!」


「どわぁ!!!!」


 完璧に自分の世界に入り込んでいたアッシュはシーナの大声に対応できずひっくり返りその反動で後頭部が地面に直撃した。激痛から後頭部を押さえゴロゴロ転がるアッシュをしり目にシーナはその小さな頬を膨らませている。


「もう!アッシュさん!私にもわかるように説明しないと練習できないじゃないですか!」


「いてて・・・あぁ~ごめんごめん。じゃあ順を追って説明していくからわからないことがあったらその都度質問して?」


「はい!お願いします!」


 裏庭の芝生にチョコンと正座し目を輝かせているシーナに対しまだ頭に声が響いているアッシュは耳を手で押さえながら話し出した。


「えーとまず魔法っていうのはイメージが大事なのは使ってみたからなんとなくわかるよね?」


「はい。前使った炎の球はそんな感じでした。」


「で、この本に書いてあるのはそのイメージの補助に詠唱を使うって方法なんだけど・・・ぶっちゃけ初歩の魔法って詠唱しちゃうと逆に効率悪くなっちゃうんだよ。」


「え?どうしてです?」


「詠唱はイメージしづらい魔法に対して言葉を発することで体からそれに必要な魔力を引き出す目的で唱えるんだけど・・・これ魔力の循環を感じることができる人間にとっては意味がないというか逆に魔力が出すぎちゃって感じかな?10でいいのに11も12も魔力が出ちゃう感じって言ったらわかるかな?」


「えっと・・・つまり魔力の流れがわかる人は魔力の形が分かってイメージしやすいから詠唱は邪魔ってことですか?」


「うん。もちろん上位の魔法になれば話は変わってくるけどこの本に書いてある魔法なら魔力の循環が分かれば頭でイメージして無詠唱で魔法使ったほうが魔力消費は少ないはずだよ。本には無詠唱の手順も書いてあったけどこのやり方だと逆に魔力使っちゃうからうま味ないね。だからシーナが魔力の循環をもっと感じれるように訓練してもらってる間に俺がこの本をもとにイメージしやすい理論作ってみるって方法がいいかな・・・シーナもそれでいい?」


「魔法理論を?そんなことできるんですか?」


「ん?できるよ。むしろこの国の魔法が堅苦しすぎるんだよ。もっと簡単にしないとね。」


「やっぱりアッシュさんはゆ・・」


「違うって・・・。」


 そこからの二人の行動は早かった。シーナは神経を集中させ魔力を全身に走らせその感覚を感じ取り続け、アッシュはその間に教本を読み漁りその中でシーナでもできる魔法を厳選しイメージしやすい理論に書き換え紙に興していく。2~3つ魔法を完成させた後は二人でそれができるまでひたすら訓練を行った結果・・・。


名前:アッシュ・グレイビアード

種族:人族

年齢:20歳(推定)

職業:旅人(自称)

レベル:12

ギフト:神の眼

    守りし者

    灰色の魔力

     ―アクシオンメタモルアームズ

     ―アクシオンドライブ

     ―アクシオンリンクス

     ―アクシオンミラージュ  

     -アクシオンボール

     -アクシオンウォール

     -アクシオンランス

    守護者の心得

     ―守護者の格闘術

     ―守護者の牽制術

     ―守護者の剣術 

     -守護者の魔力感知


名前:シーナ

種族:エルフ

年齢:17歳

職業:冒険者(E)

レベル:12

ギフト:守り人の因子

    剣士の因子

    炎の魔力

     ―ファイヤーボール

     -ファイヤーウォール

     -ファイヤーランス

    体力強化(魔力)

    料理上手

    裁縫上手

    家事上手


 ・・・と魔物撃破によるレベルアップとともにアッシュは魔法5つと魔力感知、シーナは魔法3つを習得した。


「すごいです!魔法3つも覚えられました。」


「いやぁ・・・まさかこんなに簡単にイメージしちゃうなんて・・・シーナがすごすぎるとしか言えないんだけどねぇ。」


「いえアッシュさんが書いてくれたイメージがわかりやすかったからですよ!」


「そうかなぁ?」


 シーナの異常なまでの飲み込みの速さに疑問を持ちながらもまあいいかとも考え空を見上げるともう空はオレンジ色に染まっている。気が付けば夕方までやっていたらしい。いやむしろ夕方までで魔法3つも覚えたともとれる。そんなことを考えているとどこからともなくクーっと音が鳴る。


「あ・・・。」


 どうやらシーナの腹の虫が鳴ったようで顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。そんなシーナを見てアッシュは自分の手を彼女の頭にのせ軽く撫でる。


「今日は頑張ったもんな。リアさんに頼んで夕食にしてもらおう。」


「・・・はぅぅぅ。」


 恥ずかしそうに頷くシーナの頭からアッシュが手を離したときそれは起きた。




・・・・・・森の奥から激しい風、轟音とともに天に伸びる氷の柱が現れた・・・・・・




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