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灰色の守護神~神は灰の中から蘇る~  作者: 八神 紫雲
第一章:敗北からの復活
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第五話:陽動

「村長!?」


 俺たちが振り返るとガンツさんと緑のローブを羽織った七十代ぐらいの禿頭の老人が宿屋に入ってくるところだった。筋骨隆々な割に背が150cmぐらいしかないガンツさんとは対照的でその老人は骨と皮しかないように見えるほどガリガリで杖で体を支えながらふらふらとこっちに歩いてくる。リアさんの反応を見る限りこの老人がクイの村の村長のようだ。


「リアさん、この若者には私から話をしようと思う。」


「は、はい村長がそうおっしゃるなら・・・。」


「君のことはガンツから聞いたよ・・・君がアッシュ君だね?私はこの村の村長をしているジニンだ。」


 そういうとジニンさんは軽く頭を下げる。それにつられるように俺もジニンさんに頭を下げ自己紹介を済ませた。


「それでいきなりで申し訳ないが・・・この村の今の状況を聞き、そしてできれば君の力をかしてほしい。」


「どういうことです?」


「まずは・・・そうあれは3日前の話になる・・・。」


 そこからジニンさん深刻そうな顔をしながら話し始めた。

 話によると3日前この村の年に一度の誕生祭の準備をしていたらしい。誕生祭は村の家々の家長である男性が皆狩りに出て獲物を取りその肉を振る舞う習わしらしく今年も例年どおり家長たちは弓を持ち狩りに出かけた。すると普段獣たちがいるクイの森はとても静かで収穫はゼロ、警戒しながらも獲物が取れなければ誕生祭が行えないと森の奥に進むとゴブリンの群れに遭遇、いきなり襲われたらしい。弓で応戦するが数は多く、さらにオークまで姿を現し家長たちは慌てて逃げだした。しかしオークの追撃が激しく、それでも村にオークたちを近づけるわけにもいかなかったので遠回りしながら逃げた結果、皆が皆怪我を負いとてもではないが体を動かしていい状態ではないということだった。村の家のカーテンが閉まっているのはその中で今も家長たちの治療を行っているためのようだ。そんな深刻な状態でジニンさんは対策として家長ではない若い男達を使い村近辺の見回りを行うようにした。するとつい昨日、村の近くにゴブリンを見かけたとの報告が入ったらしい。ジニンさんは戦いの経験もない若者達ではかなわないと考え、すぐに若者達を村に呼び戻し家の守りを行えるようにそれぞれの家に帰した。っという状態らしい・・・なるほどね。今ゴブリンに村を発見されて襲われでもすればいっかんの終わりというわけか。


「なるほど・・・で村長は今後どういった対策を打つつもりですか?」


「できれば早馬を出して王都シャッテンの魔法騎士団に助けを求めたいのだが・・・ここから王都までは3日、騎士団の準備や出発、大規模な移動のスピードの遅さから考えて村につくまで5日・・・つまり往復8日はかかる計算になる。」


「8日か・・・村が発見されて襲われて全滅させられるには十分すぎる日数ですね。」


「そうなんだよ・・・今非常に困っている・・・がこのまま手をこまねいている間にも奴らがこの村を発見しかねない。それだけは何とかして阻止しなければならない。」


 さてどうしたものかな。王都までの距離は遠すぎて間に合えわない。しかし今の戦力は実戦経験のない若者と女性、子供、老人。襲われれば全滅は必至だな。


「ん~・・・そういえばシーナ、シーナは冒険者って職業なんだよな?」


「はいそうですが・・・それがどうかしましたか?」


「すまないがもう一回冒険者について説明してくれないか?」


「こんなときにですか!?」


 この一大事に何を?という顔のシーナにこんな時だから!!!と頼み込んで冒険者についての説明をしてもらうことにした。何分100年前にはなかった職業なので俺は冒険者についてよくは知らない。しかし前にシーナが教えてくれた冒険者の中にこの状況を打破できそうな大きなヒントがあった気がする。


「まず冒険者は魔物が活発に暴れだし小国が次々と魔物によって滅び始めた時期にできた職業だと聞いています。大国の騎士団は自国の・・・特に主要都市の防衛に集中したため辺境の町や村の治安が崩れさらにはそのせいで生活に必要な素材の確保が困難になり辺境の村や町は衰退していったそうです。そんな中4大国の人々、特に下級と呼ばれる人々がそれぞれお金を出し合って冒険者ギルドを立ち上げ腕に覚えのある人たちを募った、というのが冒険者の始まりらしいです。最初は主に町や村の治安を回復させたり、魔物から町や村を守ったり、生活に必要な素材の調達したりなど報酬次第ではなんでもOKな何でも屋として機能していたらしいのですが、だんだんと4大国の治安が回復してくると冒険者にランクをつけてそれに応じた依頼を出し、それに似合った報酬を出すというシステムになったようです。ランクはF、E、D、C、B、A、Sとあってこれは素人から玄人まで幅広い人たちを抱え込めるからという理由があるらしいんですけど本当のところはよくわかりません。でも実際このランク分けのおかげで簡単な依頼を誰でも出せるようになりましたし、冒険者ギルドの収入は安定してそれなりの町にはギルドの支部ができて依頼をさらに受けやすく・・・。」


「まった!」


「え?どうしましたアッシュさん?」


「それだ!冒険者ギルドの支部!そこなら王都より近いんじゃないか?」


「おおそうか!その手があったか!」


 俺の言葉の意味を理解したジニンさんは手をたたき大きく頷いく。ガンツさんは逆に深く考え込んだように腕を組み唸りながら口を開いた。


「確か・・・ここから一番近いギルドはラクの町のギルドだ。早馬を使って依頼を出してここまで冒険者たちを連れてくる・・・まあざっと3日ってとこだがな。・・・・ジニンじいさんよぉ・・・依頼するだけの金・・・この村にあるのか?ゴブリンはFランク冒険者でもなんとかなるやつだが数が多いんだろ?」


「う、うむ・・・家長たちの話では30匹はいたとのことだ。」


「30かぁ・・・Fなら5~6人、Eなら3人は必要だな。さらにオークはDランク冒険者1人に対して1匹ぐらいの実力はあるぜ?」


「オークは3匹いたらしい。」


「Eランク3人、Dランク3人分雇うとなると金貨20枚は行くんじゃねえか?」


 ガンツさんの言葉に今度はジニンさんが腕を組み唸り始める。この世界の通貨は銅貨、銀貨、金貨、白銀貨とあって銅貨が一番下、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白銀貨1枚といった価値だ。金貨20枚となると・・・確か・・・王都で家が買えるぐらいの価値だとシーナが言ってたような気がする。


「金貨20枚・・・私の財産が金貨10枚、村の者たちの財産を集めればあと10枚は集められるが・・・怪我人の治療にも金はかかる・・・村の者たちに負担はかけさせたくはない。」


 村が助かっても怪我人の治療ができず後遺症が残る、もしくは死んでしまっては意味がない。かといって騎士団に討伐を頼みに行くには遠すぎるか。・・・ここは俺が動くべきか?しかしどうやって納得させよう?ゴブリン30匹とオーク3匹を一人で倒しに行くといっても信用してもらえないだろうし・・・オークとゴブリンかぁ・・・あれ?


「村長、そのオークたちの眼・・・赤く光ってませんでしたか?」


「ああ・・・そういえば家長たちがそんなこと言ってたような・・・。」


「あ・・・ガンツさん?」


「なんだ?」


「ガンツさん達を襲ってたゴブリンとオークってこの村の人を襲ったやつらの仲間じゃないですかね?」


「お?」


 ガンツさんは少し考えた後ああああ!と大声を出し納得したように手をバシバシとたたき始めた。その姿を見たジニンさんとリアさんは唖然とした表情でガンツさんを眺めていた。


「ガハハハ!ジニンじいさんよぉ何とかなるかもしれないぜ!」


「本当かガンツ!!」


「ああなんせゴブリンは20匹、オークは2匹だ!これなら金貨10枚でも依頼が出せるってもんだぜ!」


「どういうことだ?」


「さっきも話したろ?そこにいるアッシュが俺たちを魔物から助けてくれたってよ!その魔物ってのがゴブリン10匹にオーク1匹だ!しかもそいつらはこいつ一人に倒されてる。な?いけそうだろ?」


「なっ!?・・・あ、アッシュ君それは本当かね!?」


「えぇ・・・まあ・・・。」


 俺はポケットの中から倒したオークとゴブリンの魔石を取り出しジニンさんに見せる。するとジニンさんは、おお!!と細い目を見開き食い入るような目で魔石を見つめ始めた。どうやら本物の魔石だと確認すると興奮を押さえるように大きく深呼吸したあと細い目をさらに細くしゆっくりと喋りだした。


「これはまさしくオークとゴブリンの魔石だ。早速依頼書を書こうと思うが・・・しかしもしこの魔石の持ち主だった魔物が奴らの仲間でなかった場合冒険者たちには追加報酬を払わなければならない・・・。」


「そこは俺が何とかします。」


 なかなか話が進まないのでとりあえずそこは何とかしようと考え発言してみるとジニンさん、リアさんだけでなくガンツさんとシーナまで驚きの表情を見せ俺を見てきた。


「早馬を走らせるにしてもそこで襲われてしまったら元も子もないでしょう?だったら俺が早馬が出発するのに合わせて奴らに陽動をかけます。その陽動中にゴブリンとオークの数を把握して依頼数より数が多ければその分間引いておきます・・・・でどうでしょう?」


「確かに陽動をかけてくれることはありがたいが・・・かなり危険な役回りだ。それも魔物の総数を把握し依頼数以上の数を討伐するなど・・・確かに君には力をかしてほしいとは言ったがそれは応援が来る間村の防衛を手伝ってほしかったからで・・・よそ者の君にそこまでの危険をお願いはできんよ。」


「そうだよ。村長の言う通りあんた一人がそんな危険を冒す必要はないんだよ?」


「まあ逃げ回らなければ死にはしませんよ。それに今やらなきゃならないことは確実にこの村を魔物から守ること・・・違いますか?」


「むぅ・・・そうだが・・・。」


「ならあなたは村長だ。村の長であるなら村を守ることに手段を選ぶ必要ないと思いますよ?」


「確かに私は村を守りたい・・・しかし何故君は見ず知らずのこの村にそこまで協力してくれるんだ?」


 なぜ・・・か。目の前で困ってる人を放っておけない1割。魔物暴走から人々を守る1割。少しでも強くなりたい2割。とりあえずせっかく見つけた人と情報源を失いたくない1割。自己満足1割。あとの四割は・・・。


「たぶん今からリアさんの作ってくれた夕食を食べてここのベットゆっくり寝ます。何分一文無しなのでタダで泊めてもらわなきゃならない。そこからこの陽動が終われば村長にいろいろな事聞こうと思っています。何分旅人なのでこのあたりのことさっぱりなのでせっかく村長に会ったのならいろいろ聞いてみたいと考えています。そこにもお金は出せません。・・・たぶんそれ以外にもこの村にはお世話になることが多々あると思います。その恩を先に返しておこう・・・って感じですかね?」


「恩って・・・まだ受けてない恩を君は返そうとしているのかね?」


「まあおかしいですかね?」


 ここにいる俺以外の人がおかしいだろという顔で俺を見ているが俺はおかしいとは思わない。身一つでこの世界に来た俺にとって最初は周りにいる人間に頼らないと生きていくことすら困難な状態だということはわかりきってる。その状態で自分ができることは恩を恩で返すこと。もしまだ受けてない恩でもとりあえず返すことによってこっちもいろいろ頼ろうと考えだ。むろんそれを利用しようとする人間も出てくるだろうがそういった外道には外道で返せばいい。でも今ここにいるリアさんはシーナの無事を本気で喜び、助けた俺に頭を下げお礼に料理を振る舞うと言ってくれた。ジニンさんも村のことを本気で考え素性も知らない俺に力をかしてほしいといってきた。さらに俺が陽動をするといったら本気で心配してくれた。そういう人たちだからこれから受ける恩はきっとたくさんあるだろう。それにそういった人たちを守りたい。『守護神』としてではなく人間アッシュ・グレイビアードが守りたいと思ったから守る。ただそれだけだ。


「ふ、ハハハハ!ふう・・・変わった青年だ。・・・君の言う通り私はこの村を守りたい。・・・もう一度お願いしよう。この村のために力をかしてくれ。」


「はい。そのつもりです。」


「ただし・・・無茶はしないでくれよ?」

  



 どこまでが村長の言う無茶なのかよくわからず苦笑いしながらうなずくことしかできなかったアッシュだった。


 




 あれからすぐに村長は家に帰り依頼書の作成とそれを持たせる早馬の壮者の選別を行っている。明日の朝には準備を済ませ、決行する言っていたので俺も早朝には森に入る予定だ。村長が帰ったあとリアさんが夕食の振る舞ってくれた。下界での食事は初めてではなかったがその中でもリアさんの食事は大変おいしくちょっと食べ過ぎてしまった。そのあと風呂で汚れと疲れを落としたかったが風呂、というよりは入浴設備はこの世界では富豪層しか持っていないらしく仕方なく水で濡らした布で体をふき汚れを落とした。その後夜となり、リアさんが俺たちに宿屋の個室を各自にかしてくれたので二階の自分に割り当てられた部屋のベランダで涼んでいる。森から吹く夜風は心地よくとても心が落ち着く。この世界に来た時も思ったがこの森の風にはそういった効果があるのかもしれない。そんなことを考えながら夜空を眺めていると隣の部屋から誰かがベランダに出てくるのがわかった。この宿屋の2階は4部屋横1列にあり2部屋で1つのベランダを共有するという構造になっている。まあ今俺たちしか宿泊客はいないから誰だかは大体わかった。


「どうしたシーナ?」


 振り返るとやはりシーナだった。今彼女は装備を外し、薄めの白いキャミソールと葵色で丈の短いスカートに着替えている。髪が少し濡れているところを見るとどこかで水浴びをしてきたみたいだ。


「あ・・・いえ・・・その・・・」


「俺にはいい風だけど髪乾いてないみたいだし・・・ここにいたら体冷えちゃうよ?」


「ちょっと・・・ですね・・・聞きたいことがあって・・・ですね」


「聞きたいこと?」


「はい。さっきのことです。本当に村長のお願い受けてよかったんですか?」


「う~ん・・・もしかして心配してくれてる?」


「あ!いえ!そういうわでは!じゃなくて心配ですけど!じゃなくて!」


 顔を真っ赤にして頭をぶんぶん降りながら一人問答しているシーナ・・・・なんか可愛いけどどうしたんだろうか?そう思いながらシーナの顔を覗き込もうとすると突然シーナが顔をばっと上げ

真剣な眼差しで話し始めた。


「私!私ですね・・・おじいちゃんがまだ冒険者だったころからいろいろな人に会ってきました。その中にはアッシュさんみたいに他人のために率先して自分から危険に飛び込んでいく人も結構いたんです・・・。でもその人たち結局それが原因で死んじゃって・・・私もその人たちにとてもよくしてもらってたからとても悲しくて・・・アッシュさんもそうなっちゃうんじゃないかって思って・・・。」


「やっぱり心配してくれたんだね・・・ありがとう。」


 彼女は大切な人を失ったようでまた知ってる人間がいなくなることをひどく怖がってるみたいだ。俺はそんな彼女の頭に手を乗せ優しく撫でてやった。


「あ・・・・」


「でもね。シーナ、誰かが誰かを守りたいと思うのは当たり前の感情なんだ。その感情から逃げてしまったら後悔だけが残ってしまう。むろん守り切れなかったり自分自身が死んでしまっても後悔と悲しみが残ってしまう。・・・だからさ・・・俺は死なないし守ることも諦めない。今はまだ100%それができる自信はないけど・・・俺はまだまだ強くなる。そして守りたいものを守ってみせる。」


「アッシュさん・・・。」


「まあ明日の陽動で俺が死んだらシーナが悲しむなら、シーナを泣かせないためにも絶対生きて帰ってこないとな。」


「・・・決めました。」


「ん?なに?」


「明日の陽動私もついていきます!」


「はぁ!?なんでそうなるの!?」


「だってアッシュさんお強いですけどなんか危なっかしくって・・・誰かがそばで見ていないと・・・。」


 おいおい、俺は物心ついた子供か?まあ確かに俺の考えはこの世界の世間一般のものとは少しずれてるのは自覚はしているけどさ・・・。


「私これでもEランク冒険者なんですよ!足手まといにはならない・・・はずです。」


「いやぁ・・・ゴブリン達に囲まれてなかったっけ?」


「はぅぅ!!・・・確かにちょっと油断して怪我しちゃうしそれでおじいちゃんも怪我させちゃったしアッシュさんいなかったら確かに死んでたかもしれないけどブツブツブツブツ・・・」


 あ、やっちゃったかな?シーナが肩をがっくり落としてぶつぶつと何かつぶやいている。しかし実際問題彼女を連れていって大丈夫なのだろうか?さっき見た彼女の眼は本気で真剣だったからなるべく連れていってあげたい気もするし1人より2人の方が陽動は派手にできそうな気もするし・・・・とりあえず彼女の能力を見てみよう。


「ちょっとごめんね」


 俺はシーナの頭から手を放し右手の親指で右瞼を軽くこすり《神の眼》を発動させる。


「あ、アッシュさん!?その目は!?」


「いいからちょっと見せてね。」


 《神の眼》でシーナをじっと見つめる。すると彼女の前に光の文字が浮かぶ。むろんこの文字は俺にしか見えていない。


名前:シーナ

種族:エルフ

年齢:17歳

職業:冒険者(E)

レベル:10

ギフト:守人の因子

    剣士の才

    炎の魔力

    体力強化(魔力)

    料理上手

    裁縫上手

    家事上手

    


 正直驚いた。まず《守人の因子》、これはギフト《守りし者》を持つ親もしくは師が死ぬ時に自動的に子もしくは弟子に継承される守りし者の・・・いや『守護神』の因子だ。この因子を持つものは経験を積むことによって《守りし者》へとギフトをランクアップさせることができる。《守人の因子》事態は守る対象がいるときランダムに能力を1.5倍に引き上げるというものだがそれでもかなり強力な戦闘ギフトだ。自画自賛じゃないよ?ほんとだよ?

 次に《剣士の才》、これは剣を扱う上ではかなり有効なギフト・・・にランクアップするギフトだ。つまり才能はあるがまだそれを使いこなせていない状態だな。逆に修練を積めば才能が開花しギフトがランクアップする可能性があるってことだから今後に期待なギフトだ。

 《炎の魔力》は文字道理炎属性の魔法が使えるギフトだ。しかしシーナはまだ魔法を覚えていないようだから出来て体内の魔力を炎に変換して放出ぐらいなのだろう・・・・あれ?でもなんでゴブリンの時使わなかったんだ?

 《体力強化(魔力)》は体内の魔力の量に応じて自身の体力を上昇させるギフトだ。長期戦などにたいへん重宝するギフトなので機会があれば俺も習得したいな。

 最後に《料理上手》、《家事上手》、《裁縫上手》の上手シリーズだが・・・達人ではないが上手な人が持つギフト、以上。シーナはいいお嫁さんになれるってことだけわかればいい・・・たぶん。


 このレベルに対してこのギフト数・・・戦闘向けじゃないのもあるけどかなり恵まれたギフト数だ。それに《守人の因子》まで持っている。この娘の育ての親か、生みの親かが守りし者だっのか?それに炎の魔力あるのに戦闘で使ってる雰囲気じゃなかったし・・・もしかして知らないのか?


「なあシーナは自分のレベルとかギフトか把握してるか?」


「いえ・・・レベルはギルドで確認できるのですが、ギフトを見るには専用の道具が必要でそれを持っているのは鑑定屋という職業の人たちと一部の富豪層の人たちだけなので・・・うち結構貧乏なんです。」


「その鑑定屋っての高いのな。」


 シーナの顔がまた赤くなる。なるほど把握、ギフトを見る道具〔ギフトチェッカー〕は今や希少な道具になっているようだ。100年前は一家に1台はあったのに・・・これもあのお遊び大好き野郎の入れ知恵か?・・・まあとにかく彼女は磨けば光る原石だってことはわかったからあとはこれを教えてうまく使ってもらうだけだな。俺は《神の眼》の効果を多少はしょって説明した後、シーナのギフトの内容を彼女に伝えた。自身のギフトの量の多さに多少驚いてはいたが喜びの方が多かったのだろうさっきまでがっくりしていたのに今ではウキウキしながら俺の話を聞いている。


「私ってそんなにいっぱいギフトあったんですね!?」


「うん知らなきゃ使えないからね。今度からギフトに合わせた修練を行えばゴブリンぐらいには負けないと思うよ?」


「はい!!・・・アッシュさん?」


「ん?」


「アッシュさんってもしかし勇者様ですか?」


「ぶっふぅ!!・・・なわけないじゃない・・・。」


「だって他人のギフト見れるギフトなんて聞いたことありませんよ!?そんな特殊なギフト持っているのは異世界から来た勇者様ぐらいです!!」


 つい吹き出してしまった・・・ああ・・・やめてそんな期待に満ちた目でみないでくれ。俺はただの人間(元神)なんだから・・・それにあれの操り人形でもないし一緒にもされたくない。


「いや・・・期待してるとこ悪いけど俺はただの旅人だよ?遠くから来たから君たちが知らなギフト持ってても不思議じゃないだろ?」


「そうです・・・そうですよね・・・。」


 ああ~そんな落ち込んだ顔しないでくれぇ・・・・罪悪感が・・・。






 とりあえずシーナを慰めた後、明日シーナも連れていくことを伝えた。シーナは張り切り気合を入れた後嬉しそうに部屋に帰っていった。遠足じゃないんだよ?大丈夫かなあの娘?

 その後せっかくなので自分の能力も確認することにした。



名前:アッシュ・グレイビアード

種族:人族

年齢:20歳(推定)

職業:旅人(自称)

レベル:5

ギフト:神の眼

    守りし者

    灰色の魔力

     ―アクシオンメタモルアームズ

     ―アクシオンドライブ

    守護者の心得

     ―守護者の格闘術

     ―守護者の牽制術

     ―守護者の剣術


なんか推定とか自称とかついてるけどとりあえずプロフィールっぽくはなってきたなぁ。《神の眼》、《守りし者》は変わらずで《灰色の魔力》と《守護者の心得》に派生が出ているな。レベルが上がったからか?いやたかがレベル5でそんな増えるわけがない。《守護者の心得》の派生の方は元々守護神時代に俺が持ってたギフトを使用することで表示されたって感じだな。しかし《灰色の魔力》の方は一見知っているような魔法だが灰属性に変わってしまっている。

 《アクシオンメタモルアームズ》は自身の使用する武器を灰の粒子に変化させ強度と攻撃力をアップさせる効果があるようだ。さらに斬撃可能な武器だと切れ味が上がるだけではなく切った対象を任意に灰に変化させる効果があるようだ。しかしあくまで強化は自身が持っている武器の質基準で行われるのでたいしたことない武器ではたいしたことのない強化しかできず破壊されてしまう可能性があること、灰化の効果は魔力の貯蔵量が多い相手だと弾かれてしまう可能性があるなどそれなりにデメリットもあるようだ。

 《アクシオンドライブ》は手に灰色の魔力をまとわせ対象の体のみだけではなく状態をも灰にすることができる魔法だ。シーナやガンツさんの怪我を治療できたのは彼女らの怪我という状態を灰にしただけのことである。なので通常の回復魔法とは違い流れた血液が戻ることはないしもし腕や足を切断されていたのならばくっつけることはできなかっただろう。あくまで灰にするだけで再生させることはできないのである。この魔法は応用は効くが制限もあるなかなか難しい魔法のようだ。


 まあ何はともあれ今まで知っている魔法を使えば灰色バージョンの魔法が増えるならいろいろ使えば・・・・あ・・・ダメだ。たぶん今まで使ってきた魔法は《神の魔力》の派生魔法・・・魔力を馬鹿みたいに消費する。『守護神 カイトデウス』ならばそんなの気にせずバンバン使えるだけの魔力保有量をしていただろうが今はただの人間だ。今の自分の魔力保有量からすると魔力消費を抑えた魔法でもおそらく2回使えば魔力枯渇を起こす・・・。まあ1発1発がそこそこ強力だからそこら辺の魔物には負けないはずだが早急にレベルアップとこの世界の魔法教本を読んで普通の魔法を習得すべきだな。



「はあやることいっぱいだなぁ・・・。」


 それからさらに1時間ほど夜風に吹かれたあと俺は眠りについた。



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