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灰色の守護神~神は灰の中から蘇る~  作者: 八神 紫雲
第一章:敗北からの復活
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第四話:クイの村

 クイの村、小さな木造の家が10~12ほどある森に囲まれた小さな村だ。家は集合した形で立っていてその周りには畑が広がっているのどかそうな村だが・・・なぜか木でできた大人二人分ぐらいの柵に囲われている。ガンツさんから聞いた話だと森の端にあるこの村は魔物の被害も少なく森の恵みを国に提供する大事な村なのだと聞いていたが・・・今はなにかピリピリとした空気が村全体から漂っている気がする。するとガンツさんが馬車を止める。


「そこの馬車止まれ!中に誰かいるならそのものも出てこい!」


 村の入り口、柵の合間に大きな木でできた門の前に皮でできた胸当てをした青年がたっている。腰には剣、右手には槍を持っている・・・この村の門番か?


「おうお前は・・・懐かしいなバッチじゃねか。」


「ん?・・・あっ!?ガンツさんお久しぶりです!!」


 俺とシーナが馬車を降りるとガンツさんとバッチと呼ばれている青年は握手をしていた。どうやら知り合いらしい。シーナもバッチの方に向かっていくところを見るとシーナも知ってるみたいだ。シーナを見たバッチは顔を真っ赤にして慌ててシーナに駆け寄ってくる。なるほどバッチ君は片思いっぽいな。


「バッチ君、お久しぶりです!」


「シーナちゃん!久しぶりだね!元気だった?」


「はい。バッチ君のおばさんたちは元気ですか?」


「ああ元気いっぱいで困ってるぐらいさ。」


 確かガンツさんは運び屋・・・なるほどこの村には仕事でよく来るみたいだしシーナはその付き添いでって感じか。


「しかしなんでお前門番してるんだ?」


「俺もう17歳ですよ?門番ぐらいできるって言ってるのに母ちゃんが駄目って村長に言うからやってなかっただけでほんとは15歳の時からできたんですからね。」


「じゃあようやくおっかさんに許可貰ったわけか?」


「いえ母ちゃんはまだ許してくれてません。でも村長がやってくれって頼みに来たんですよ。それで母ちゃんは渋々って感じです。」


 つまり2年間バッチの母親の意見を尊重していた村長が頼みに来たってことは・・・やっぱ何かあったな。そんなことを考えながらバッチの前まで来るとバッチの表情が険しくなり俺をにらみつけてくる。

警戒しているみたいだな。


「あの・・・ガンツさんこの人は?」


「ああこいつか?こいつはアッシュってんだ。旅人で途中拾った。」


「すいませんが身分証明できるものありますか?今村は身分証明できない人は入れられない決まりになっているんです。」


 このピリピリした空気と柵、そして身分証明・・・やっぱり何かあったか。っとはいっても困ったな。基本何も持ってない(服とハンカチ以外)しなぁ。と考えているとシーナとガンツさんがフォローしてくれるみたいだ。


「この人は私たちを魔物から守ってくれた恩人なんです。」


「うむ、こいつは何も持っていないが安全はわしが保証する。」


「し、しかしそう言われても・・・。」


 困っているバッチにガンツさんが追い打ちをかける。


「お前がアッシュを村に入れてくれるなら・・・そうだなシーナと1回デートすることを許可してやろう。」


「マジっすか!?」


「おじいちゃん!?」


ガンツさんの発言にバッチは歓喜を上げシーナはガンツさんに困惑し怒りに似た感情を乗せ睨み付ける。ガンツさんはそんな二人の態度を無視して淡々と話を続ける。


「どうするバッチ?」


「う・・・ううん・・・本当は駄目ですけど・・・駄目なんですけど・・・いいです。通しましょう。」


「よっしゃ!」


「お~じ~ちゃん?」


「そう怒るなよシーナ。おいバッチ、お前いいっていったな?」


「はい!ので・・・デートを・・・・。」


「俺は1回デートをする許可をやっただけだ。OKはシーナ本人からもらえガハハハ!」


「え・・・・あ!?」


 どういうことか分かったらしくバッチはガクッと肩を落とし逆にシーナはほっと胸を下す。なるほど、保護者として許可は出すがOKは本人からもらえってことね。男の下心をうまく使ったえげつない交渉だ。ガンツさん・・・意外にあくどいな。ガンツさんはじゃあ通るぞと馬車を門の中に入れ俺とシーナはそれに並走するようについていく。バッチは恨めしそうに俺たちを見ながらまた肩を落とし門の守りに戻っていった。


「よかったんですか彼?」


「バッチの奴、いざって時の押しが足りねえからな。これでシーナをデートに誘えないようじゃシーナを嫁にはやれないな」


「おじいちゃん!!」


「ガッハッハ」


「仲いいんですね。ガンツさんはこの村出身とかですか?」


「いやあ、違うが主にここと王都シャッテンの荷物の行き来を仕事にしてるから自然にな。ここ1年ぐらいはあまりなかったから別の仕事してたがな。」


「へえ・・・で気が付いてます?」


「ん?ああ・・・なんかあったみたいだな。」


 やはり普段のこの村を知ってるガンツさんはこの村の変化に気が付いているようだ。改めて村の中を見渡す。出歩いている人が少ない。いやいることはいるのだが女性ばかりで男性や子供がいない。それなりに古くはなっているが建物自体に損傷がないのを見るに争いがこの町で起きたわけではないようだ。それでも今は昼なのに家々の窓のカーテンが閉まっているのは不自然さをさらに増させている。そんな様子を読み取っていた俺を見てガンツさんは少し考えこみ口を開いた。


「おいアッシュ、ワシちょっと村長のとこ行ってくるからシーナと先に宿屋に行って部屋取っといてくれないか?・・・言っとくがワシとお前で1部屋、シーナで1部屋だからな。」


「わかりました。」


 馬車に乗ったままガンツさんは村の奥に行ってしまい、残された俺とシーナはこの村唯一の宿屋に向かうことになった。ほかの家が1階建ての平屋に対して宿屋は二階建てですごくわかりやすかった。【バッチ亭】と書いた看板がでかでかとかかげてある・・・ああさっきの青年の家はみたいだな。宿屋の名前からして親バカぐあいがうかがえるな。看板を眺めながらとりあえずシーナに確認をとる。


「あそこかい?」


「はい。見てのとおりバッチ君のお母さんがやってる宿屋さんです。」


「やっぱりそうなのか・・・まあいいけど。」


 どうやらバッチの母親に早く会いたいみたいでシーナは小走りで宿屋まで行き、勢いよく扉を開き中に入っていった。続いて俺が宿屋に入ると恰幅の良い人の良さそうな40代ぐらいのおばさんとシーナが抱き合っているところだった。


「ホント久しぶりだねシーナちゃん!1年ぐらいだったかしら?」


「はい!おばさんもお元気そうで何よりです!」


「また一段と綺麗になっちゃって・・・また大きくなったかい?」


「あ・・・はい・・・この頃服が少しきつくって・・・」


「ハハハ女の胸が大きくなるのはいいことさ!その方が男どもも喜ぶってもんさね!」


「お、おばさん!?・・・もう・・・アッシュさんに聞かれちゃったらどうするんですか。」


 最後の方少し聞き取りずらかったがばっちり聞こえている。ごめんよシーナ、元神様なので耳も規格外にいいんだ。しかし・・・改めてシーナを見る。確かエルフ族って一般的にはスレンダーで胸は控えめな女性が多いはずなのだがシーナの胸は確かに大きい・・・今は皮の胸当てをしていて少し押さえられているがそれを外したらさらに目立つ大きさになりそうだ。だって胸当てから胸がはみ出てるし・・・。それでいて顔立ちは整っていて胸以外の体系はエルフ特有のスレンダーボディ・・・ほかのエルフが見たら発狂しそうだな。

 そんな考えをしているとようやく俺に気が付いたようでおばさんとシーナは抱き合うのをやめて俺の前まで歩いてきた。


「いらっしゃいませ。お客様1人ですか?」


「あ・・・いやぁ。」


「おばさん、この人はアッシュさん。私とおじいちゃんを助けてくれた恩人なの。」


そこからシーナは今までの経緯をおばさんに話した。おばさんははじめ魔物に襲われたと聞いたときは血相を描いてシーナの肩を両手で掴み、大丈夫だったのか確認していたが俺に助けられ自分もガンツさんも無事なことを伝えるとようやく落ち着いたようで大きなため息をついていた。そして俺の方を向き頭を下げてきた。


「ありがとね。私にとってシーナちゃんは娘みたいなもんだからさ。ホントにありがとねえ。」


「いえたまたま通りかかっただけですから・・・それより頭を上げてください。なんかそう改めてお礼されるとこっぱずかしくって。」


「あら?そうなのかい?まあいいか私はリア。ここで宿屋をやっている。シーナちゃん達を助けてくれたんなら今日の夕ご飯はちょっと奮発しなきゃならないね。」


「もうおばさんたら・・・。」


「ところでリアさん。」


「ん?なんだい?」


「急にこんなこというのもなんですが・・・この村、今大変なことになっていませんか?」


「!?」


リアさんの顔がこわばる。やはり何かあったみたいだ。どうもシーナの前だからあえてそういう顔を見せないよにしてたみたいだ。


「なんでそう思うんだい?」


「一つ、村全体からピリピリした雰囲気だ出ていたこと。二つ、今まで門番したことのないあなたのお子さんが門番しなきゃならない状態だってこと。三つ民家すべてにカーテンがしてあって男性が出歩いていない・・・まあこんなとこでしょうか?」


「アンタすごいね・・・・はあ・・・そう今この【クイの村】はじまって以来の一大事が起きてるんだよ。シーナちゃんやよそ者のアンタにはうまいこと隠しておきたかったんだけど。」


「一大事?本当なんですかおばさん?」


「ああホントさ。・・・さて村長の許可なく話していいものか・・・。」


「それについては私が話そう。」


 俺たちが話していると誰かの声が聞こえてきた。







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