表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

2.その男、女

 翌朝、目を覚ました俺は、妻の作った朝食を食べていた。

「あいつ、どこで何をしてるのかしら」

 妻が俺のことを考えながらそう言った。

「今まで外泊の時はメールくれたのに……」

 忘れていた。

「ママー」

 健太という男の子がやって来る。

 俺と妻の子だ。

「このおばさん誰?」

「おばっ!?」

「ああ、おはよう、ケンちゃん。この人はパパの妹さんなのよ」

「聡美って言うの。よろしくね」

「健太だよ。よろしくね、聡美おばさん」

 おばさん。間違っちゃいないが……。

「健太くん、私のことはお姉さんと呼びなさい」

「うん、わかった」

「それじゃ、健太くんは学校ね」

「聡美お姉さんは?」

「私はフリーターよ」

「フリーター? 仕事してないってこと?」

「まあ……そんなことはいいから、早く食べて行きな」

 健太が食事をして学校へ登校していく。

 俺も朝食を摂ると、家を出た。

 もう一度あの店の前に行ってみるが、建物はなく空き地になっていた。

「え?」

 なぜ店が?

 俺は周辺をくまなく探したが、しかし、店はない。

 どこへ行ったのだろうか。

 どうしたものかと考えていると、目の前に忽然と建物が現れた。

「うわ!」

 びっくりした俺は腰を抜かした。

「これはこれは、桂木様」

「今、何が?」

「失礼しました。ちょっと未来へ行ってたものでして」

「未来? ひょっとしてこれはタイムマシンか何か?」

「ご明察。この店はタイムスリップができるのです」

「そうですか」

「それで、今日はどういったご用件でしょうか?」

「俺の本体はどうなってるんですか?」

「コールドスリープカプセルに入ってますよ」

「凍結されてんの?」

「はい」

「いつでも戻れるんですか?」

「もちろんです。戻られますか?」

「いや、まだいいです」

「そうですか。それでは、私は過去に行かなくてはならないので、失礼」

 店員はそう言って、店に戻ると、建物ごと消えてしまった。

「そんなところに座り込んでどうしたの?」

 学生服を着た男子が声をかけてきた。

 腰を抜かしていたのを思い出した。

 俺はすっくと立ち上がって言った。

「何でもねえよ」

「俺、山田やまだ 健二けんじ。君は?」

 無視して歩き出す。

「待ってよ。名前だけでも教えてくれたっていいじゃん」

 立ち止まり、答える。

「聡美……桂木 聡美」

 俺は再び歩き出す。

 健二が頬を赤らめる。

「君、もしかして男?」

「え?」

 立ち止まって振り返った。

「ここに用があったんでしょ?」

 健二が店のあった場所を指差した。

「俺、元々は女だったけど、ここで男になったんだ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ