1.レンタル
俺は桂木 大輔。元会社員だ。というのも、先ほど勤め先の会社をクビにされたからだ。
ショックで落ち込みながら帰り道を歩いていると、体レンタルという変な店を見付けた。
いつの間にこんなのが建ったのか。
面白半分で入ってみると、裸の男女が数人ほどケースの中に入っており、カウンターに男が立っていた。
「ここは何ですか?」
「体をレンタルする店です。いらっしゃいませ」
「体をレンタル? ダッチワイフの貸し出しか何かですか」
「違います」
「じゃ何?」
「肉体を貸す店です」
「は?」
「説明ではわからないと思うので、実際にやってみますか?」
「はあ……?」
理解できずにいる俺を他所に、店員は話を進める。
「お客様は男性と女性のどちらが好みですか?」
「そりゃ女性ですよ」
「それでしたら、これを」
店員はカタログを見せてきた。
「こちらの中から好みの女性を選んでみて下さい」
俺は端正な顔立ちをした黒長髪の女子高生を選んだ。
「この子で」
「わかりました。では奥へ」
店員に付いて奥へ行くと、俺は椅子に座らされた。
「こちらをお飲み下さい」
「これは?」
「服用タイプの麻酔です」
「麻酔?」
「はい。眠ってる間に全て終わります」
「はあ……?」
俺は躊躇いながらもそれを飲んだ。
強烈な睡魔に襲われ、視界がブラックアウトする。
やがて、目が覚めた俺は、何も変わったところがないのか、先ほどの椅子に座っていた。
もよおした俺は、トイレを探した。
うん?
背中に違和感を覚えた俺は、そこを手で確認すると、黒くて艶のある長い髪の毛があった。
更に気付いたことに、股間に一物の感覚がなかった。
ズボンの内側に手を突っ込み、中を確認してみると、確かにソレはなかった。
どうやら俺は女になっていた。
そこに先ほどの店員がやって来る。
「目を覚まされましたか」
「トイレは?」
化粧室を聞いた俺は、トイレを済ませて鏡を見た。
「これが俺?」
鏡にはカタログで選んだ女の子が映っていた。
「これはどういうことですか?」
「あなたの魂を別の肉体に移し換えたのです」
「この体は持ち主がいるんですよね?」
「いいえ」
「どういうことですか?」
「そのお体は特殊技術を駆使して作った擬骸で、本物ではありませんが、本物と同様の機能があります」
「そうなんですか」
「それでは、お楽しみ下さい」
俺は店を出てみた。
店の外はそのままだった。
夢ではないみたいだ。
俺はとりあえず家に帰宅した。
「ただいま」
家に上がると、妻がやってきた。
「誰?」
「あなたがお兄ちゃんの奥さんね? 初めまして。私、大輔の妹なの」
「そうなんだ」
「しばらく厄介になるからよろしくお願いします」
「え? あ……うん」
俺は自室に移動した。
それにしてもよくできてる。
俺は胸元を見た。揉んでおくか。