魅了魔法しかない序章4
キースから言われたことを改めて思い出す。
「あいつの名前とかは直接聞くと良い。あいつは壁役としか使えないぞ。本人もそう言ってる。自分から敵に攻撃しようとしないのが俺達がパーティーに入れなかった理由な。それじゃ、頑張れよ」
一息つくと、僕は大男に話し掛けた。とりあえず今は依頼を受注することが目的だ。すぐに魔獣や怪物を倒しに行く訳じゃない。冒険者の活動はそれだけじゃないはずだ。
「あの、パーティーメンバーを探してるって聞いてきたから僕と組んでくれないかな」
後ろから声をかけた。僕の身長は155センチくらいだけど、目の前の男は180センチはあるだろう。僕は彼の背中に話し掛けたようなものだ。
「え?」
声も太い。変声期も迎えてるのかな。
「俺は壁役。ダース・トーチ・ウルダ、それでも良いか?」
名前にトーチと付いている。この町と同じ名前だ。
皆が気を使ってしまうということは間違いないのだろう。
「僕は……。冒険者になりたての初心者です。壁役というのも良く分かってないし、かなり未熟だから当分は討伐を受けない予定です。それでも、良ければパーティーメンバーになってください」
「構わない。よろしく頼む、名前は気軽にダースと呼んでくれ、歳は15歳だ」
「よろしくっ、え?本当に15歳?」
無事にパーティーを組むことに成功したが、それよりも驚くことがあった。ダースの年齢が同い年だと聞いたことだ。思わず聞き返してしまった。
「15歳だ」
「同い年なのに、この差……」
悲しすぎるよ。まぁ、僕はまだまだ成長の伸びしろもあるはずだからその内身長も体も大きくなる……はず。
「それじゃ、ダース。よろしくね」
「おう、ところで名前は?」
僕の名前は
「名無しだよ」
「ナナシか、よろしく」
ダースと僕の凹凸コンビが結成された。