魅了魔法使い不幸者の称号3
なんと、パーティーに亀裂が?
「ん……んぁ?」
僕は目を開けた。
「……もしかしなくても寝てたよね」
体は温かい毛布にくるまって横になっていた。ギルドの一室を借りられるとアルベドさんは言っていたから、修練場を出てから寝てしまったのだろう。
「暖かかったなぁ。アルベドさんの手」
毛布を畳んで起き上がると窓を開けると朝日が登ろうとしている。どれだけ寝たのかよく分からないな。修練場でも一度気を失っているから外の時間は分からないし、とりあえず部屋を出てみることにした。
荷物を持って通路に出ると案内板を見つけ、その通りにギルドホールを目指した。ホールに出ると受付の人達がホールの掃除をしていた。その中にちらほらと年の近そうな冒険者たちの姿があった。
彼らも掃除をしているみたいだから僕も手近にあった箒を手にとって習って床を掃いた。
掃除をしていると受付の女性がこちらによって来た。
「ナナシさんですね?」
「はい。僕はナナシです」
「アルベドさんから伝言を預かっています。今日の夕方にまた修練場で待っている。とのことです」
受付の女性はそう言うと一礼してまた、戻っていった。
アルベドさんの約束を守るためにもダースに事情を説明して今日受ける依頼は日没までに終わるものにさせてもらおう。そんな都合の良い依頼がはたしてEランクにあるだろうか、掃除を終えると僕はEランクの掲示板を確認しに向かうのだった。
ーーーーー
冒険者ギルドの扉が開いた。
外からギルドを訪れる人達を迎える時間になりました。
ぞろぞろと強そうな冒険者から駆け出しの冒険者まですぐにホールは人で埋まってしまった。それから三十分ほどしてダースが歩いてきた。僕は彼のそばまで駆け寄ると挨拶をした。
「おはよう、ダース」
「…おはよう。それで今日はどうするんだ?」
「その事なんだけど、僕はギルドで稽古を受けることにしたんだ」と言うとダースは納得したように話し始めた。
「ああ、あのギルドで泊まり込める上に先輩冒険者に訓練をつけてもらえるやつだな。それを受けるには結構金が掛かったはずだが?」
「もちろん、全財産突っ込んだよ!」
「……馬鹿だろ」
「なんで?」
「泊まり込めるだけで強くなれる保証もない。飯とかも自分で食べていかなければいけない。その為のお金も稼ぎながら強くなる?馬鹿馬鹿しい。それに何で俺に相談しない。これはパーティの活動にも影響が出ることだ。俺も昨日考えていたんだがお前との関係についてだ」
文句の言いようがなかった。言い過ぎじゃないかと言い返したかったけど、パーティの都合も、何もかも自分の都合を中心に考えていたからだ。どこかでダースなら納得してくれるような甘えがあった。例え一昨日に嫌悪な眼差しで見られていたとしても、それくらいアルベドさんから言われたことが嬉しすぎて浮かれてしまっていたんだ。
「俺はEランクからDランクに上がるために依頼をこなさなければならない。その為にお前とパーティを組んでいる。お前の都合など知ったことではない。所詮、俺とお前は依頼を受けるためのパーティ関係にすぎない。調子に乗るなよ?」
「酷くない?それは言い過ぎだと思う」
「酷いのはお前の方だ。一昨日にリカから言われたことを何も生かせていない。行動の前に一度思案しろと言われただろう?今回だけは許してやる。今日は反省して明日答えを聞かせろ」
「でも、それじゃ依頼を受けられないよ……」
「じゃあ、今すぐ答えを出せ」
ダースの顔は不満に満ちている。
「分かった……。僕はダースと」
「はい!そこまで!」
昨日ぶりに聞いた声は紛れもなくアルベドさんで。
「お前ら朝っぱらから陰鬱な雰囲気だしてんじゃねえよ。それにこのナナシには俺が指導してやることになってんだ。ちゃんと結果を出してやるからお前さんの不満も少しは抑えな」
「これはパーティの問題だ」
アルベドさんに喧嘩腰のダースだ。どうにもダースは怒りで我を忘れているように見えた。それほどに僕が勝手な行動をしたことを許せないのだろう。
「お前さんの評判は聞いてるよ。ダースさんや、Dランクになりたいんだって?ならEランクの討伐依頼を受けることが出来るだけの信頼をギルドから得るのが先決だ。なら、その態度を改めるべきだ。先輩からの大事な忠告だぜ?」
「分かった。勝手にしろ、俺はお前とのパーティを解消する!」
それだけ言うとダースはずかずかとギルドを出ていってしまった。
「アルベドさん……。ダースは」
「アイツも領主の息子だし色々と急かされているのかもな」
「かもしれません。僕はどうしたら良いと思いますか?」
「自分で考えな、大方もうわかってんだろ?言ってみな」
「僕を強くしてください」
「予定を早める。俺は元々一匹狼でな、依頼も基本一人で受けてんだわ。だから、一週間くらいお前に付きっきりで稽古してやれる。それと、ちゃんとステータスを小まめに見ておけよ?力の把握も大切な仕事だからな」
「はい」
「じゃあ行くか、時間は有限だ」
僕はアルベドさんに付いていきながら修練場に向かった。ダースにあれだけ言われたけど、なんか放っておけないんだよな。その為にも僕はもっと強くならなければいけないんだ。ちゃんと自分のステータスとも向き合うんだ。
アルベドさんの好意にも感謝しながら、
僕は覚悟をもって稽古を望む。




