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魅了魔法しかない序章10

次の日、いつもと変わらず草むしりをしている。


このペースなら今日中に終わるだろうと思う。ダースが手伝ってくれれば早く終わるのだろうけど、期待するだけ無駄だから終わるのは夕方になるはずだ。


僕たちは黙々と作業に取り組んだのだった。




夕方になり、無事に依頼は終了した。


「ぜひ、また来てくださいませ。今後も同じような依頼は出しますから」


「了解した。今後も父上への協力をお願いします」


「もちろんですわ!」


僕らと並びながらダースが代表してリリーシャ夫人と会話をしている。


リリーシャ夫人は鼻息を鳴らしながら胸を叩きながらダースに心意気を見せた。頭をリリーシャ夫人にお礼を言い終わると僕らはギルドへ戻り報酬を受け取った。


報酬を合わせて僕は安いところの宿舎なら泊まれるだけのお金は手に入れられたわけだ。今後も草むしりの依頼を受けながら少しずつ金銭面の懐に余裕を持たせていこう。


「キース、昨日と今日は助かったよ」


「こんなことでもいいならいつでもしてあげるさ。草むしりの依頼なら次からは他のパーティーと組んでみるのもおすすめするよ」


確かに一宿を共に過ごして、もっとパーティーの知り合いを増やすのも大切な仕事だよな。そうしようかな、僕はキースとドドルとリカにお礼を言った。ダースは何も言おうとしないので、催促した。


「え、俺も言うのか?」


「当たり前でしょ」


渋々といった感じでダースも三人にお礼を言ったのだった。


「別に良いってことよ!俺達はもう仲間だ!」


ドドルの元気に心を温められ、


「次からはもっと無様を見せないでほしいかしら」


リカからはちょっと厳しめな言葉を頂きました。



三人と別れた後にダースはどこに泊まるのか聞いてみた。


「俺は実家に帰る。宿を使わなくても家が目の前だからな」


「そっか、僕はどこか泊まれるところを探してそこにするからまた明日の朝ギルドに集合でいいかな?」


「じゃあ、また明日な」


「うん、今日はありがとう。また明日」


僕はダースと別れて冒険者ギルドの中をうろちょろしていた。実は宿に泊まるお金が惜しくなったのだ。かといって、泊まらなければ寒さで凍えてしまう。正直、街の特徴から探せば新参の冒険者向けの宿屋はいくらでもあるだろう。それなら、使わなくてもいい方法を考えてみた。


野宿、それも悪くない。村で暮らしていたときに比べると宿に泊まる事自体十分すぎる暮らしのようにも感じる。寝ることの出来るシーツと上から被る布地、壁は風を通さないだけ室温なんて気にならなくなる。


さて、どうしたものか。


「おい兄ちゃん、一人で何を考えてんだ?」


僕に話しかけてきたのはドッグタグがEランクとは違うので上の冒険者だと分かる。全身の防具が揃っているし、装飾もそこそこあるような物を身に付けているから、Dランクでもなさそう。


「僕ですか?」


「そうだよ。兄ちゃん以外に話しかけてねぇよ」


「僕が今考えていることはですね。どうすれば宿屋を使わずに一夜を越せるかってことです」


「身なりが村民って感じの癖に中々に丁寧な口調だな。もしや、どこぞの坊ちゃんだったりすんのか?」


「いいえ、昨日なりたての冒険者です。生まれも村民です」


「ふーん、そうか。話しかけて悪かったな、もちっと愛想を良くしてくれれば良いんだがな!」


武骨なおじさんといった感じの冒険者から背中をどしどしと叩かれて、よろけて前に転がった。


「よわっ!そんなんじゃ、死ぬぞ!?せっかくだから良いこと教えてやるわ。Eランク冒険者はギルドにお金を払うと、上のランクの人から指導を受けられるシステムがある。まぁ、指導をしてくれる冒険者はギルドが探してくれる上に利用するとギルドの宿舎に泊めてくれる特典付き。金を全部突っ込んでいいなら利用するといい」


ご都合主義のような美味しい展開に僕は素直に乗った。


「お、おい!?」


僕は受付に先ほど聞いた旨を説明して、そしたら快諾をされたので持っていたお金を全て払った。冒険者を探すのに時間がかかるかもしれないということで、それまで宿舎を自由に使用していいという好条件のまま無事に依頼を出すことに成功した。


受付が依頼書を作っていると先ほど会話をしていた冒険者が後ろから声をかけてきた。


「マジかよ、お前はしっかり物事を考えてるように見えたんだがなぁ。しかし!その即日即決断ってのは嫌いじゃないぜ!ってことで俺が面倒を見てやるわ!受付の姉ちゃん!それでもいいかい?」


「構いませんよ。しかしアルベド様が教授するには些か依頼料金も少ないと思われます」


「気にすることはない!何か気に入った!それだけで理由は充分!」


「ふふ、アルベド様が良いのならいいのです」


「話が……勝手に進む……えっと、ああ」


僕はこの依頼を出したとき、指南してくれる冒険者が見つかるまで宿舎が自由に使えると言うのでこれは良いものと思った。冒険者が見つからなければそれで宿舎を自由に利用できるから。それがまさかこんなに早く見つかるとは……。速すぎですよ。


「俺の名前はCランク、アルベド・ルルカだ。アルベドって呼んでくれ」


「はい、アルベドさん。よろしくお願いします」


「なんだよ、嬉しくなさそうだな」


「宿舎……長く使いたかったのに……」


思わず本音が漏れてしまった。


「そういうことか!愛想良くねえっと思ってたがそうでもなさそうじゃねえか。宿舎は俺が指南してる間は利用できるから気にすんな!早速お前さんの実力を見せてくれ」


「い、今から!?」


「思い立ったが吉日ってな!ほら、行くぜ!」




そう言って連れてこられたのは部屋はギルドの中に備わっている修練場という所だった。ちらほらと似たように指南をしてもらっている冒険者も見掛け、また修練場の名に相応しく体や技を磨きあっている人達も居た。


「お前はここに来るのは初めてみたいだな。そんなにキョロキョロしてたら皆お前を見るぜ?ま!俺はそこそこ有名だから勝手に注目を集めちまうけどな!はっはっは!」


アルベドさんは確かに有名みたいだ。色んな人がアルベドさんを見ている。ついでに一緒にいる僕まで図るようにじろじろと見られるので嫌な感じだ。


「じゃ、いつでも良いからかかってこいや」


僕の実力を図るということか。


よし、初の対人戦だ。やれるだけやってやる!


アルベドさんは鎧を脱ぐと防具を地面においた。鎧の下からはふてぶてしいほど立派な筋肉が見えている。皆、そんな彼を見ている。実力もちゃんとあるんだ。そんな人に教えをこえて僕は、僕はこのチャンスを無駄にするわけにはいかない!


「アルベドさんの胸をお借りさせていただきます!」


「どんと来いや!」


「はあああああああ!」


アルベドさんに向かってダッシュする。


「ただ、突っ込むだけか?」


アルベドさんの拳の間合いに入らないようにしっかりと目を見て観察する。先読みのような感覚がぼんやりと思考に浮かぶ。どう動いてくるのか考えるんだ。


見ていた目に力が宿った。何か仕掛けてくる!


「ああっ!ああ!」


「考える余裕、あると思ってんのか?」


目の前にいた。目を見て攻撃が来ることは分かっていてもそれに反応するだけの動体視力も経験も足りなかった。アルベドさんの拳が素手にお腹に添えるように置いてあることに気付いたときには拳が腹にめり込んだあとだった。


「ぐえっ、がっ!ううぅ゛……はぁ、げほ!げほ!」


地面に横たわる僕に問いかけられる言葉は無慈悲だった。


「何で魔法を使ってこない。誰でも持っているものだし、センス……お前らルーキーには魔法スキルって伝えた方が良いか?だって何かしらあるもんだろ?全力で来いや!ふざけてんなら、依頼を破棄してやる!出し惜しみするやつに指南するやつなんか居ねぇんだよ」


「……っ!(お前に僕の何が分かるっ!)」


虐げられ、生まれ持っただけで罪、それがどんなに理不尽か。僕はこんな力要らなかったのに!さっさと消えてしまえばいい力なのに!僕だって死にたくないのに!なんで、世の中はこんな僕を産んだ!言いたくない!言いたくない!言いたくない!言いたくない!言いたくない!言いたくない!言いたくない!言いたくない!言いたくない!言いたくない!……!


「良い目すんじゃねえか、お前に一発当てられるとも思ってねえよ。殺す気でもねぇと、無理じゃねえかな?それに俺は既にお前を見切る気でいる。野垂れ死んでくのが目に見えるが知ったことじゃねえ」


「……(殺す?そんな簡単に言わないでよ。言いたくない!言いたくない!……けど、本当は、本当は僕は!産んだ両親さえ恨んだ!言いたくないのに!それを、言わせたな?どうせ死ぬんだ!なら、見せてやる。禁忌って呼ばれる魔法を!僕に力を寄越せ!全部を!何もかもメチャクチャにしてやる!)」


「……何か策でも考えたのかと思ったが動きもしねえ。俺の見当違いだったか。さっさと終わらせるか」


「……殺してやる。死んでしまえ、僕は!こんな力!望んじゃいないのに!ふざけんな!ふざけんな!」


威圧(小)を使う。


「なんだ、いきなりキレやがって……!?この肌が一気に張り詰める感覚は……威圧スキル?にしては、範囲が広すぎる!」


アルベドは周囲を見渡すとルーキーは指南している冒険者と対峙したまま体が動かなくなっている。指南をする冒険者も何事かと辺りを見渡すので間違いなく威圧はほぼ全員に行き届いている。


だが、ルーキーが出せる範囲を越えているのでアルベド以外はまだ犯人を特定できていない様子。


「お前、名前聞いてなかったな」


アルベドは僕に言う。


「……見切るんでしょ?なら、どうせ死ぬやつの事なんて知る必要……ある?」


魅惑の眼は常時発動にしてある。万が一に備えてだが使う気は先ほどまで無かったが、使ってやる。熱い、あの時の感じだ。草むしりの時に身体中に熱がこもって目にそれが伝わっていく感じ。


「(魅惑の眼!)」


「……っ!?(動かねぇ、なんだこれ。あのルーキーから眼が離せねぇ。これはヤバイ、ヤバイやつ。これ以上見たら、なんかアイツの事が気になる?ああ、好きになりそ……え?は?なんだこれ、これはまさかこれは!」


アルベドは先ほどナナシが叫んだ言葉を思い出した。

「こんな力!望んじゃいないのに!ふざけんな!」


「(あっちゃー、特例中の特例ってわけか、ちっと本気でやらないと不味いな)ウオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!!」


アルベドは自信の持つスキル咆哮(大)を使った。これは相手を確実にひるませる事が出来る魔物にも、魔獸にも有効な手段だ。ルーキーに聞かないわけがない。


「……ひぇっ!」


ナナシは腰を抜かしている。


「じゃー、なんだ。これからよろしくパンチってことでな!」


アルベドは本気でナナシを殴り付けた。


「……!!!」


痛みで意識を飛ばしながらナナシは倒れてしまった。




この続いたタイトルもここで区切りを付けようかなと思います。書きたいことを書けて良かったです。誤字などありましたら、訂正しますので、活動記録などで御手数をおかけしますが一言お願いします。

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