魅了魔法しかない序章9
草むしりを終えて僕らは馬小屋の隣にある空き部屋を借りていた。
小屋の壁を一枚隔てた先には馬が寝ている。
ダースが馬小屋ではなく、僕らと違ってベッドが用意されているのはもう、なにも言うまい。
馬小屋の隣の空き部屋に四人で藁を敷いて休息を取っている。
「草むしりは腰が痛くなるぜー!」
ドドルが横になりながら叫んだ。
「うるさいわね、馬が起きるから静かにしてなさいよ」
リカも苛々しているのかドドルに八つ当たりをしていた。
「お前は俺より体力無いもんなー!あっはっは!」
「黙りなさい」
リカを怒らせると分かっていても憎まれ口を叩くのはどうかと思うけど、ドドルはそれが心地いいようだ。
「黙らねえよ?なぁ」
ドドルは僕達に同意を得ようと振り返っていた。そういうのは止めてほしいものだ。
「女性に喧嘩を吹っ掛けるのは男としてどうかと思うけど?」
「お前らいい加減にしとけよ?」
僕がドドルに否定の意を示すと顔をしかめた。更にキースが二人に釘を差したようだ。
キースに言われると二人は気まずそうな雰囲気を出しながら、お互いにそっぽ向いて寝てしまった。
「あはは、ごめんね。二人はいつもこうなんだよ」
嫌な感じのパーティーだなと、思っていた僕にキースがフォローしてきた。
「そうなんだ」
「どうしてなのか、ナナシは詳しく聞かないんだ」
「誰にだって聞かれたくないこともある。それに僕らはそれを聞けるだけの信頼を築けているとも思ってないから。聞くだけ無駄」
「おぉ…。ハッキリと言うね。草むしりの時からキミという人を見てきたけど、口数が少ないわけでも、物怖じしやすいとかそういう性格じゃないみたいだ。キミはとても俺の好みだよ」
「告白してるの?」
「友人になりたいね、是非」
「……、何を考えているのやら。僕は考え事があるから先に寝るよ」
「それじゃ、一つだけいいかな?」
「いいよ」
「今まで魔法を使ったことないんじゃない?」
「……!?」
キースの言葉にドキッとしたが、これは告白があったからとかそんなんじゃない。魅了魔法について何かバレたとかでも無さそうだ。落ち着け、別に使ったことなくても可笑しなことはない。これについては隠す必要もない。
「そうだよ」
「やっぱり!草むしりの時に感じたのは魔法を使おうとしたヤツに似てるんだよね。あっ、これは誰でも出来る訳じゃないよ?魔力感知のスキルが必要だからね」
スキル?みんな持ってるのか?
「……予想外なことを話し掛けられるとバレやすいから気を付けるといいよ。キミの悪い癖だ。え、あっ!怒らせたい訳じゃないんだよ?!つまり、これまでステータスに魔法の種類しか載ってなかったかもしれないけど、その魔法に関するスキルは些細なきっかけがあれば取得できるんだ。技能とかセンスって呼称する人もいる。つまり、そこに関しては素直に受け入れておけばいい。ってことを伝えたかったんだ」
うん。
どこまでが本気か分からないけど、天然と呼ばれるものがあればキースはそれが該当するのだろうな。
キースの新しい一面を知り、更に知りたかった情報まで知ることが出来たのは大きかった。しかし、油断のならない相手であることも理解した。あまり、彼は敵に回したくないね。
それから、少しだけステータスについて考え事をして就寝した。




