泣いた空
私の声が
雨音にかき消され
傘をささないと
今を失ってしまいそうな
不安が私を捕らえていた
泣きそうで
消えてしまいそうになる
ふと、空に誰かの泣き顔が
浮かんだ気がした
それが幻でも
それが夢でも
何故泣いているのか
そう聞きたかった
でも、その顔は
何も応えない
ただ、ただ
泣いていた
その泣き顔が
とこか恨めしく淋しく
僕を見つめていた
しばらく僕の顔を
睨みつけていると
顔はゆっくりと消えていった
しばらく空を眺めていると
目の前に人が立っていた
その顔は
空に映った顔その物だった
とても奇妙だったが
僕はその人を抱きしめ
静かに
囁いた
「大丈夫だから」