第一章
物事の始まりは一概にして突然である。
様々な要因が積み重なった結果としての出来事はそれがどれ程難解であったとしても、何がそれを引き起こしたかは比較的容易に憶測がつく。
例えば、ある民家の一室無残にも粉々に割れた花瓶がある。その部屋には誰もいなかったが窓は開け放たれており、花瓶の近くには少し泥が付着し使い込まれたボールが転がっている。以上のことを踏まえて、なぜ花瓶が割れているのかを問いかけると、人々のうち殆どが「開け放たれた窓から部屋の中に飛んできたボールが花瓶に当たったことが原因だ。」と答えるだろう。
この例えは単純だが、他のケースでもどのような結果が得られるかということは想像に難くない。
しかし、何事にも例外がある。
その例外とは、何かの原因があった末に引き起こされたと確信できるのに、その原因が全く皆目見当もつかないというものだ。これは非常に難儀なもので、いくら長考し続けても原因を解明できるという保証はどこにもない。
そんな難儀な出来事に私-キュリス・カーミリアは直面していた。
その出来事は何の前振りもなく、しかし確かな兆候を見せながら私の前に現れた。