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神様に会いました。

目が覚めると、真っ白な世界に転がっていた。手元に本はない。誰かがとってくれているのだろうか………遼か安司ならいいが。

周りをキョロキョロと見回していると、


「目は覚めたかね、少年」


どこからか声がした。

ここはどこだ、なんのためにここに連れてきたなど、聞きたいことは沢山あった。だが、声を発することができない。

な、何だこれは!

もがきながら声をだそうとしていると、

「今どこにいるかわからないのだろう。説明するから、暴れないでいて欲しい。そのために声を発せないようにしているので、落ち着いて。」

その声に動きを止め、少し落ち着いて姿勢を整える。

「おや、落ち着いたようだな。もっと暴れるかと思ったのに」

うるせぇ。人間あきらめが大事なんだよ。

「では早速だが、説明に移ろう。実はこの世界は一つではない。幾千の世界はお互い触れ合わず………な、なに?巻け?そんなの知ってる?な、なんだと!なぜお前のようななんの取り柄もないような男が世界のトップシークレットを知っておるのだ!」

半眼で空中を見つめていると、そのような反応が帰ってきた。

いや、ラノベで定番のパターンですから。そしてあんたはその世界の神様だとかいうんでしょ?

「ふっふっふ………だが、私が神様だとは知らないだろう!どうだ!」

呆れた顔をしていると、どこかしらからぐぬぬ………と聞こえた。まあ、悔しがる神様は新鮮かな。


「ま、まあいい。このままでは本当に時間がなくなってしまう。簡単に説明しよう。君にいうことはいくつかあるが、


一つ、君は異世界に召喚される際に召喚陣か甘く、偶然できてしまった被害者だ。


二つ、君たちは救世主ではないので世界を救う必要はない。と言うかできない。


三つ、君たちが今から行く世界が救われようとそうでなかろうと必ず元の世界に返すから心配はいらない。


四つ、元の世界には同じ時間、同じ場所に戻すから周りに迷惑はかけない。しかし、世界の保存のために記憶だけは消させてもらう」

自称神様はスラスラと話していく。

そして、最後に言いにくそうに、

「そして五つ。もしお前たちが死んでしまうと、現実世界には返すことはできない。だから絶対に死ぬことのないように。

さて、これで以上だ。何か質問は?」

と、聞いてきた。

今までの話をまとめると、俺は異世界に巻き込まれた被害者で、何も心配しなくていいからとりあえず死ぬなよ、ということらしい。この自称神様がいうことが真実ならば。どうも俺は信用できない。

「ふむ。まだ信用できないか」

おいちょっと待て、俺は声を出せない状況なんだよな?なぜわかった?つーか質問自体できない筈なのになぜ質問があるか聞いてきた?

「決まっているだろう。神様ならば子である人間の考えや表情を読むことぐらいできるぞ。特にお前は表情が読みやすいからな」

神様怖ぇぇぇぇええええ!!!

なんじゃそりゃ!俺の考え丸分かりじゃねぇか!

「今頃気づいたのか?」

人の独り言に勝手に入ってくんじゃねーよ!

俺はひとしきり喚こうとしたが、未だに喋れないので、ただの駄々っ子みたいになってしまい、神様に笑われてしまった。ああ、死にたい………




「おっと、時間がもうないようだ。今私が言った言葉、忘れるなよ。君たち三人には本当に悪いことをしたと思っている。とりあえず、幸運を祈っている」

神様は急に慌てたようにバタバタと別れの言葉を告げる。しかし、俺は最古の一言に違和感を見つける。

ん?三人?ちょっと待て、俺以外のやつってまさか………


その答えを聞く前に、俺の視界は再び白く包まれた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



目が覚めると、そこはきらびやかな宮殿だった。金細工やガラス細工などの豪華絢爛なものが所狭しと並んでいる。

周りを見渡すと、遼と安司を発見した。生徒会の連中やボンボンたちもいるようだ。みな、一様に寝ぼけた顔をしているようだが、取り乱してはいない。さっきの神様がほかのみんなにもちゃんと伝えていたんだろうな。俺は安司達の方に寄る。

豪華絢爛な建物にいるとしたら次に予想できるのは………

「初めまして、異世界から召喚されし救世主様」

召喚主であろう、姫様からの挨拶だよな。



★ ★ ★ ★ ★ ★


話を聞くと、姫様は自分とその他数人の魔導師たちとで俺らを召喚したらしい。と言うことは、姫様はそこそこ強く、勇者パーティーに加わる路線ってやつだろう。


「私の名前はクレリア・バルダム・トゥアール。この国の姫です」

クレリア様は素晴らしく美人だった。金髪に翡翠色の眼、スタイルもよく、気品に溢れている。

でもどうせ勇者に惚れて結婚なんだろうな………

勇者でもなければパーティーの一員でもない俺は少しふてくされながらも聞いていた。


「では父上、説明をおねがいします」

お、じゃああの見るからに国王ってやつが今からしゃべるのか。

「うむ。私がこの国の国王、ハイオリア・バルダム・トゥアールだ。突然ですまないが、この国は滅亡の危機に瀕しており………」

国王の説明が続く。魔王に攻め込まれている、助けてもらうために君たちを呼んだのだ、どうか助けておくれ。テンプレのように話していく国王に、半ば先が読めている俺は若干眠たくなっていた。

「どうか、宜しくお願いします」

国王をはじめ、姫、臣下たちが一斉に頭を下げる。

「王様、頭を上げてください。皆様も」

そう促したのは生徒会長だった。



彼の名は天野 光希〈あまの こうき〉。

生徒会会長、サッカー部キャプテン。

世界を牛耳る超巨大企業の社長の跡取り息子の癖にそれに驕らず、誰よりも正義の味方である。

イケメンで女子の人気も高く、スポーツ万能、文武両道ここに極めり、と言う感じのスーパーマン。

俺たちも、ヲタクなのを理由にイジメられていたのを、見かける度に毎回諌めてもらい、また目障りであろう俺らに気軽に接してくれるやつなどほとんどいないので、大変な恩義を感じている。



王様たちへの対応は天野がやってくれるようで、俺たちは後ろに待機していた。

「先程の話なのですが、私達は、そちらに協力します。しかし、その前に叶えて欲しい願いがあるのです」

「わかった。まずは協力、感謝する。して、お願いとは何事だ?我々が呼び出した手前、できることならなんでもしよう」

ん?今なんでもって言ったy(ry

やべぇ………!マジで口が滑るところだった………!

となりでは安司と遼がダラダラと冷や汗をかいている。よかった。俺だけじゃなかった。

「まずは衣食住の確立。この国の現状を嘘偽りなく話すこと。そして、巻き込まれてしまった三人の安全を守ること」

そんなことはつゆ知らず、天野はつらつらと話していった。

「どういうことだ?我々の召喚は失敗したのか?」

国王も不思議に思っているようだ。そして、天野の説明に耳を傾けていった。


〜〜〜少年説明中〜〜〜


「そうか、神様の手を煩わせてしまったか」

「帰れることが約束されていたから、協力することを即決なさったのですね」

「それもあるが、人が困っている時に助けるのは当然だろ」


天野の説明かだいたい終わると、姫たちはいろいろと納得したようだ。

その間に、俺はこの世界の設定について考えていた。

まず、ここはかなり豪華絢爛な宮殿であり、なおかつ鎧をかぶった兵士がいることから、よくRPGなどに出てくる中世ヨーロッパあたりの時代内容だろうと予想がつく。となると、この世界は銃や機械を使った近未来戦闘は少なく 、どちらかというと肉体戦になるだろう。よかった。あまり機械には明るくないんだ。

また、姫様が魔法を使っていたことから、基本は剣と魔法の世界。

次に自分のステータスだが、レベル制なのか、それともプレイヤースキルを上げていくものなのか。これは救世主と言う単語もあることから、レベル制だろうと思う。ズブの素人が、レベル上げ以外での鍛錬をつもうとしても、相当に時間がかかるからな。

そんな風に思いを巡らせていると、姫の方から声が聞こえた。

「それではみなさん、お待たせいたしました。大体の事情はコウキに聞きました」

さすが天野。姫様をもう懐柔しやがった。やっぱりこの姫と結婚するのはこいつなのかもな。くぅ、羨ましい………


「これから救世主の選別を行いたいと思います。この世界にはステータス、というものがあり、個人の能力値から、職業など、幅広く載せられています。

これは、基本的には自分しか見ることはできませんが、他人が見ることを了承することにより、カードとして顕現させることができます。ここで確認するためにも、心の中で''ステータス''と唱えてください。救世主だった場合、職業の欄に載っている筈です」

ふむ。俺の推理が当たっていたようだな。この世界はRPGのようなステータスがあるらしい。

そんなことを思っていると、何やら安司が声をかけてきた。

「おい忍、姫様にステータスの基本値を聞いてくれ」

少し考え事をしたかったので、

「自分で聞けばいいんだぜ」

と言ったが、

「これはお前の仕事だろ」

と真顔で言われた。遼も同じく気になっているらしい。

「このコミュ障が」

全く人に言えない言葉を口にすると、二人は悲しそうな顔をしていた。

しょうがない………やるか。

俺の固有スキル発動………ッ!

「なぁクレリア様、ステータスの数値は一般的にはどうなっているんだ?他にも何かわかることがあれは教えて欲しいんだが」

クラスメイトと接する時には考えられないほどスラスラと喋る。

そう、これが俺の能力、『赤の他人なら物怖じしない程度の能力』!

クラスメイトや、年の近い人にはコミュ障のような態度しか取れないが、年が離れていたり、今後一切関わらないと分かるような人物ならば、少し図々しいくらいの態度をとることが出来るのだ!

この能力を使うと、出店のおっちゃん達から大量におまけをつけてもらうこともできる。だが、みんなのパシリに使われてしまうという諸刃の剣なのだ………

姫様は俺とは違う世界にいるような美しい人だからな、スキルの発動は容易だった。

生徒会の連中はいつもと違う俺の様子に少し戸惑ったらしいが、質問の方に興味をそそられたのか、そっちに集中する。

「クレア、とお呼びください。

そうですね、基本的には大体の能力値は10程度だと思われます。そこから適正によって増えたり減ったりするものと考えたらよろしいかと。

その他にはスキルなどがあります。

これは一つ一つにレベルがあり、それが上がるにつれて使える能力も強力になったり、便利になったりします。

しかし、スキルは増えることは少なく、開花することは難しいです。普段自分が頑張っていることがスキルに直結するので、地味な努力が大切になります。

他には神様から承ることにより開花するスキルもありますが………期待しない方がいいでしょう」

「おう、よく分かった。助かったぜ」

俺はそう締めくくる。

「では、自分のステータスを確認してください」


姫の言葉と共に、俺達はそれぞれのステータスを開示した。



杉本 忍《すぎもと しのぶ》


種族:人間

性別:男

職業:肉屋

年齢:17



〈レベル1〉

魔力:14

攻撃:14

防御:2

俊敏:18


【固有スキル】

言語理解

アイテムボックス



【スキル】

解体作業 Lv.1

モンスターからのドロップがひとつ増える

外部伝達 Lv.8

自分と相手の関係が浅ければ浅いほど円滑に対話ができる


【称号】

巻き込まれしもの



【所持金】






………orz

どうしろってんだ………



◆◆◆◆◆


い、いや、さすがにこれはないだろう………この防御力は。

農民が大体10くらいらしいから、リアルワンパンで死んでしまうやないの。どこのスペ○ンカー先生ですか。

しかし、一つ救いなのは、スキルが二つあること。でもバトルにはほぼ使えず、職業に準じるものだろう。

となりを見ると、遼は顔が真っ青になってるし、安司に至っては涙まで流している。

ああ、あいつら俺と同じなんだろうな………仲間がいて安心した。

と、いうことは神様が言っていた召喚の被害者というのは俺らヲタク三人組のことだろう。若干察してはいたがな。


ん?と言うことは………


「ふ、ふははははははは!!!俺が救世主だ!しかも勇者でもある!」

何やらボンボンが急に叫び出した。

そうか、俺たち三人以外が救世主だった場合、あいつらも救世主になるのか。

「誠様が勇者なのですか?」

姫様が問い返すと

「そうだ!ククク、ついに俺の実力が認められたようだな。

さぁて、お前らは俺に跪け。俺の命令に背くんじゃないぞ」

その他にも、ボンボンは俺を優遇しろだのなんだのと、救世主らしくないことを言っているが、

「俺にはこの国がどうなろうと知ったことではない!」

と言う言葉には流石に呆れた。それ、救世主の前提崩れてません?

「そうだそうだ!誠さんがそう言っているんだぞ!いうことを聞け!」

金魚の糞が何やら騒いでいる。誠って誰だ………?ああ、ボンボンか。

つーかよ、俺たちヲタク三人組以外が救世主ならば、あいつらも救世主ってことだろ?嘘だろ………俺たち金魚の糞以下?



「やめろ、誠。俺がこの人たちに言った条件のひとつはみんな平等に扱うこと。その中には俺たちを特別視しないことも含まれているんだ」

「うるせぇ!俺に指図するなと何度言えばわかる!」

また口論かよ。壊れるなぁ………


「ところで、勇者というのは特別な役職なのか?」

天野は口論の合間に姫様に問う。

「そうですね、勇者というのは救世主の中でもリーダーとなりうる素質を持つ者だけがなりうるものです。この世界にも何百年も現れなかった、逸材中の逸材ということです」

姫様も、少しいやいやながら答えていた。まあ、ボンボンがその逸材とか言われてもなぁ………俺だって嫌だわ。


それを聞いたボンボンはより有頂天になり、周囲を物色するように見回した。

「それ以上の行動はやめろ、誠。勇者はたった一人ではない」

天野は少し躊躇しながら、ボンボンに語りかける

「はあ?今の聞いてなかったのか?俺は数百年に一度の逸材なんだよ!お前と違ってな!」

ますます喚き散らすボンボンに、天野は

「俺も………勇者なんだ。お前と同じ」

「何っ………!」

「本当なんですか?!コウキ!」

ボンボンの詰まった声と、姫様の嬉しそうな声が同時に響く。天野はあまり多ごとにしたくなかったんだが………と躊躇っているようだ。


俺はその時、少し離れて考察していた。

ボンボンが勇者というのは驚いたが、天野が勇者であろうことは想定内だったし(というか天野でなければ誰がやるんだと思っていた)、そうなるとあいつらはパーティー組んで魔王討伐かー大変だなーと他人事のように思っていた。

だが、その時に見たボンボンの表情に戦慄した。天野を親の敵のように、一生分かり合えない敵のように睨みつけていた。

あ〜あ、こりゃボンボンダークサイドに堕ちるなぁ………と、少し身震いしながら考えていた。

どうも、タバサです。


今回は少し長くなってしまいました………本編と同じ区切りにしようとするとどうしてもこうなります。良い区切りも見当たりませんしね。

しばらくは説明回が続くので短調になりがちですが、もう少し辛抱していただけたらと。


では、今回はここで筆を置かせていただいて、次回にて皆さんとまた会えることを楽しみにしています。




P.S.思っていたよりも真面目路線多過ぎて焦っている今日この頃

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