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序章
碧蘭国。玉琴に首都を置くこの国の皇帝には、現在三人の皇子がいる。彼らは兄弟仲良く、しかし各々国中で噂される人である。
第一皇子は尚武の人で、質実剛健という言葉の体現者でもある。正妃とは持ちつ持たれつの鴛鴦夫婦であり、二人の妾妃たちとの関係も良好。老若男女問わずの尊敬を集めている。
第二皇子は博雅の人で、温厚篤実を地でいく人柄で人望も厚い。正妃ただ一人を愛し、妾妃の一人も持たない万年新婚夫婦であり、国中の夫婦の理想として憧憬を集めている。
さて、末の第三皇子はといえば、文武どちらが優れているとは言い難い。兄皇子達が優秀すぎるためか、人目に触れることも少なく、いまいち目立たないのだ。
しかしこの皇子、兄皇子達とは別の意味で有名であり、国中の注目を集めている。
いや、正確には、第三皇子とその正妃が、である。