表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cosmo  作者: きのこ
2/2

雪の日

鬱陶しいアラームの音で目が覚めた。

まだ眠たい目を擦りながら、モゾモゾとベットから這い出る。

「…さむ…」

今日は、また1段と冷え込んでいるようだ。僕はブツブツと不満を漏らしながら、部屋のカーテンを開ける。

その景色に、僕は一目で驚いた。

空は灰色に濁っていて、静かに、雪を降らせていた。真っ白なその世界に、僕は思わず窓を開ける。

僕の地方では、雪というのは珍しいのだ。滅多にお目にかかれないその雪に、僕はすっかり興奮した。

「月牙?起きてるのか?」

ふと、ドアの向こうから聞きなれた声が聞こえた。兄の声だ。相変わらず早起きだなあ

「うん。おはよう」

返事をすると、兄は僕の部屋の扉を開けた

「月牙が起きてるなんて珍しいな。大半は寝坊するのに」

と兄は、意地悪な笑みを浮かべる。

「悪かったね。それよりさ、雪、降ってたんだね」

「あぁ。珍しいよな。あまりはしゃぐなよ?月牙」

「ちょっと、僕が遊ぶ前提で話を進めないで」

僕が反抗すると、兄はまたクスリと笑った。そして、朝ごはん出来てるから、とだけ言い残して、僕の部屋を出る。

いそいそと制服に着替えて、リビングへ降りた。朝食は兄がトーストを焼いてくれている。


トーストを齧りながら、兄に話しかけた。

「兄ちゃん、今日は仕事だよね。雪だから、事故には気を付けてね。車でしょ?」

と言うと、兄は面倒くさいと言わんばかりに頭をかく。

「そうなんだよなぁ。危ないから、今日は電車で行くことにする」

と、兄はコーヒー片手に窓の外を眺めた。

「月牙も、今日は自転車は危ないと思うぞ。歩いて行くのか?」

「うん。そうするよ。めんどくさいけどね」

ふふっと笑ってやった。確かに面倒くさいけど、雪を楽しみながら登校するのも、また面白そうだ!


残りのトーストを口に詰め込んで、鞄を背負った。もごもごと行ってきます、とだけ伝えてから、僕は家を飛び出した。

雪は大粒で、しんしんと降り積もっている。まだ誰も踏んでない新雪を踏みしめた。ぎゅっぎゅっと心地よい感触がする。

真っ白に染まったいつもの街並みを眺め、時折頭に積もる雪を何度も払い除けた。



学校の近くまで来ると、見慣れた顔が近づいてきた。

「よぉ月牙。おはようさん。」

その紺色の髪には、たくさん雪が降り積もっている。あまり気にしてないのか、巻いていたマフラーを巻き直していた。

「おはよう、愛久。頭に凄い雪積もってるよ」

こいつは、工藤愛久。僕の大の親友で、小学校からの付き合いだ。僕の数少ない友達である。

「まあな。にしても雪すげぇよなぁ」

愛久はそれこそ口が悪いが、とても良いやつだ。見た目より世話好きだし、何より正義感が強い。女子にもモテるし…。

「でも、昼には晴れるみたいだぜ?」

と、愛久はニヤリと笑った。

「え!そうなの?残念だなあ」

「なんだ、遊びたかったのかあ?お子ちゃまだなお前も」

と愛久がいつもの様に馬鹿にしてくるので、僕はそこにあった雪を掴んで、投げつけてやった。


愛久の言うとうり、3時限目が終わる頃には、すっかり晴れてしまっていた。太陽がさんさんと照りつけていて、外は結構暖い。

まだ残っている雪を愛久と投げつけあいながら、僕らは屋上で昼食をとっていた。

「そういえば、昨日UFOを見たんだ」

と話すと、愛久は意地悪げに笑った。

「ほんっと好きだよなぁ。で、どんなのを見たんだよ?」

赤い光を見た、と話すと、愛久が驚いた様子で口を開く。

「それ、昨日俺も見たぜ。赤い光が、たくさんあってよ」

「え、本当?!同じやつを見たのかな」

「なんだ、奇遇だな!」

と愛久が笑った。驚いた。まさか愛久も見ていたなんて!

「そういえば、愛久はUFOとか信じてるの?」

疑問をおろむろに口にすると、愛久はじっと空をみつめ、ぼそりと呟いた。

「…宇宙ってよ、限りなく広いじゃねぇか。地球だけじゃなくて、他の生命っていうのは存在すると思うぜ。俺は。ただ、空飛ぶ円盤なんてよ、そこまで技術が進歩した星って、あまりねぇんじゃねぇかな」

あー、もう分かんねぇ、と呆れ出したかと思うと、僕をちらりと見て、愛久はふっと笑った。

「宇宙人ってのも、きっといるんじゃねぇか?」

愛久が真剣に自分の考えを話してくれるなんて、めったになかった。いつもふざけてるイメージしかなかったのに、今日だけで愛久に対するイメージが、少し変わった気がする。

そんな愛久を見れた事が何だか嬉しくて、僕はついニヤけてしまった。

「んだよ。そんな俺の言うことがおかしかったか?」

「いや。愛久が、こんなに真剣になるなんて、なんかおかしくて」

「なんだよそれ」

愛久は怒る様子もなく、くすくすと笑いながら、またパンを一口齧った。

僕も、最後の一切れを食べて、愛久にそろそろ行こう

、と一言かける。

ふと立ち上がろうとしたその時だった。

僕の目に微かに映ったのは


――青空に浮かぶ、無数の赤い光だった――



ここまで読んで頂きありがとうございます。

新キャラの登場です。

愛久は個人的に気に入っています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ