実
音が聞こえる。私の住処を爛々と輝く瞳で荒らそうと進む奴等の足がゆっくりと迫ってくるのだ。嬉々として創られた魔の道具に恐れを感じてしまいそうである。奴等は鬼だ。私達の命を平然とした顔で掻っ攫っていく。鋭く尖った大きな器具で強欲な姿を見せつけてくるのだ。
私が生まれたのは何時だったろうか、数ヶ月前なのかもしれないし、数年前だったのかもしれない。暖かい光が私の誕生を祝ってくれた。周りにいる仲間達も身体全身を使い、喜んでくれた。金色に煌めく空を見ると不思議な力を授かった気がした。
天から水が落ちてくる。私達はそれを受け止めて、激しい槍の攻撃すらも取り込んだ。緑色の何かが低く唸り、舌を伸ばす。痛みを孕む存在を、容易く消してしまった緑は途轍もない速さでその場を後にした。
少し寒くなり、私は大きくなった。金色の空が今は蒼に染まっている。世代交代のその時が迫っているのだろう。死を待つ私達に恐怖のきの字も無かったのだ。
奴等は仲間を切り倒して行く。獣のような荒い声で嘲っているのだ。私達が何をした。
「今年は豊作だぞ」