俺の彼女の週末
俺の彼女は可愛い
どのくらい可愛いか、それはこの世の言葉では足りないくらいに可愛い
透き通るような、白磁の肌
細くしなやかな腕
繊細な指先
まだまだ発展途上な、慎ましやかな胸
きゅ、と括れたウエスト
細くも柔らかな太股
想像しただけで、愛しさと共になにかが込み上げてくる
この上、成長とともに現れた美しさに、自らの煩悩との戦いは日々著しく劣勢になりつつある
そんな俺の彼女である九条院和葉は、今日も机と大の仲良しである
「ん……すぴー」
昼下がりの教室
昼食後ということもあって、辺りは穏やかな雰囲気につつまれている
そんな中、珍妙な寝息を立てる和葉
“すぴー”ならまだいい
たまに、“すぴょー”とか“ふみゅー”とか
意味不明な寝言を言っている
その上、寝顔が大変可愛い
写真撮って飾りたいくらいに可愛い
いや、実際何枚か所持している(これは彼女に秘密である)
隣の席の奴が羨ましい
というか、代われ。今すぐ
「んぐ~」
未だに目覚ます気配のない和葉に苦笑いしつつ、俺は彼女を起こすべく
ほんの少しだけ勿体ないと思いながら右手を上げ、彼女の背中に照準を合わせた
つんつん
「おい和葉…。もう授業始まるぞー」
「……ふぇ、もうぅ?」
俺が後ろからつつくと、ぴくりと肩を揺らして起きた
寝ぼけ眼をこすり、小さくあくびをする
寝起きも相変わらず可愛いと思いつつ、それを顔に出さないように話かける
「あと三十秒だな」
「ぇえっ!? ちょ、もっと早く起こしてよっ!」
理不尽な怒りの声を聞き流しつつ、彼女の小さな背中を眺める
はわはわと慌てながら授業の準備をしている彼女はとてつもなく可愛い
後ろの席も悪くないと、今年に入ってなん十回も考えたのは、俺だけの秘密だ
慌てる和葉の頭上に無慈悲な鐘が鳴り響き、ガラリと音を立てて教室の扉が開いた
「授業始めるぞー」
「あ、もう着いたね」
帰り道
いつもと同じように、彼女と並んで歩く
夕日を背にし、他愛もない話をしながら
「ん、そうだな」
楽しい時間は、過ぎるのも速くて
より一層、お互い離れ難くなる
「じゃあ、またな」
そっけない挨拶と共に去ろうとする
が、小さく袖を引かれる感触
振り向かなくてもわかる。彼女がそうしている
そうこうしていると、背後から蚊の鳴くような声が聞こえてきた
「……その……き、今日は………家に、泊まらないの……?」
和葉さん、貴女はなんという爆弾発言を
しかも、頬を染め、潤んだ瞳をこちらに向けている
和葉のほうが背が低いので、必然的に上目使いになる
大変可愛いです
本日は金曜日。別段断る理由も無いので、俺は我慢せず振り返り、彼女を抱き締める
そして、耳元で了承の意を伝えると、彼女は嬉しそうに俺の背中に腕を回した
「んじゃ、もう中に入ろうか」
そう言い、九条院家の門を並んでくぐる
勿論、俺達の手は堅く結ばれている
かくして、俺の理性と煩悩との戦いは、最早戦況を覆せぬほどに激化し、ついに敗北宣言をした
どちらがかって?
そんなの、聞かなくても解るだろう?
―――実は、このやり取りは毎週末行われている―――
続く?