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そんな彼らの戦い方

突発シリーズ第1弾☆

お約束勇者パーティー、ラスボス戦直前

 ゴリゴリゴリゴリ……


「おい!まだか!……くそっ、毒で目が霞み始めたか……」

「危ない!ライル!目の前に魔物が!!」

 叫びながら、魔術師である彼女はライルに今にも鋭い爪を突き立てようとしている魔物に向かい、巨大な火球を飛ばす。

「熱っちぃ!!フィリスてめ、俺まで巻き添え食らっただろうが!!」

「ライルが突っ込んで来るのが悪いんじゃない!」

「普通目の前に敵がいるって言われりゃ、攻撃するだろうが!!」


 ゴリゴリゴリゴリ……


「あ~……駄目だ、冗談抜きにぶっ倒れそうだ」

 ぐらり、とライルの身体が揺れ、そのまま後ろに向け頭から倒れる。

「もう倒れてるじゃない!」

 フィリスが倒れたライルの上をかすめるように今度は鋭い氷の刃を放つ。


 ゴリゴリゴリゴリ……


「フィリス、後は任せた~。やべ、もう指先まで痺れてきた。あ、何か花畑が見えてきた……」

 ライルの手から、長い戦いを共に歩んできた剣が滑り落ちる。


 ゴリゴリ……ゴリ。


「ちょっと、何言ってんのよ!縁起でも無い事言わないでよ!!」

 残り数体になったとはいえ、一人で戦うにはフィリスは不向きだ。魔法を詠唱している間に攻撃を喰らったらひとたまりも無い。何とか使える程度の短剣を振りかざしながらライルを振り向いたフィリスが、ライルに今にも牙を突きたてようとしている魔獣を見て絶望の声を上げる。

「……ライルーーー!!」



 げし。

 今にもライルに牙を突きたてようとしていた魔獣の顔面に長い足がめり込んでいた。

「よし、出来た。ライル、口を開け」

 周りの状況など見えていないかのように、男はライルに淡々と語りかける。

「………」

 パクパクと口を僅かに動かすだけのライルが、最早しゃべることも出来ないことに気付き、男は呆れたように溜息を吐き、ライルの鼻をつまみあげる。

「………っ!!!!!!!!」

 顔を真っ青から真っ赤に変え、酸素を求め思い切り口を開いた所に、毒々しい紫色をした液体を注ぎ込む。声にならない悲鳴をあげるライルを投げ捨て、男は襲い掛かってきた魔鳥を張り飛ばす。

「鬱陶しい」

 虫を払いのけたかの風情で、男はフィリスに向き直り、告げる。

「最後の一匹だ、とっとと仕留めろ」

 やたらと偉そうに告げる男に、文句を言いたいものの、フィリスの唇は詠唱に向けられる。

「これで、終わりよ!!」

 鎌首をもたげていた巨大な蛇を氷漬けにすると、フィリスは疲れきったように、へなへなと座り込む。そんなフィリスの隣では、ようやく全身の感覚が戻ってきたのか、ライルがゆっくりと起き上がり、大きく溜息を吐く。



「疲れたのか……なら、食え」

 ごそごそと荷袋の中から干し肉を取り出し、二人に差し出す。だが疲れきった二人は食べ物など喉を通らない。少し休ませろとばかりに見事に同じ動きで首を左右に振る。その表情が妙に必死なのも同じだ。

「わがままを言うな、食わねば体力は戻らんだろう」

 その言葉が終わる前に、言い返そうとした二人が口を開いたのを狙い、硬い干し肉を小さくすることも無く、塊のまま二人の口に捩じ込む。

「……っ、ごほ!て、め……っ」

「何を吐き出してるんだ。勿体無い」

 不恰好に頬を膨らませたまま涙目になっているフィリスをそのままに、咳き込んで肉を吐き出したライルが怒りに声をあげかけ……再び黙らされる。

 吐き出したはずの、砂どころか、魔物の血までついてしまった干し肉を無理やりまた押し込まれ、さらには頭と顎を掴まれ、無理やり咀嚼させられる。

「……っ!!……!!」

 必死に吐き出そうとしているのに、男の腕は容赦なく顎を動かしライルにそれを食べさせる。

「~~~~っ!!」

 そのまま口一杯に含んでいると、窒息してしまいそうで、ライルは死ぬ気で肉を飲み下す。その光景に青ざめながらフィリスは同じ目に合わされないように、必死で大きすぎる肉を噛み砕き、何とか食べ終える。



「いい加減にしろ!カイン!!」

 俺を殺す気か!!ライルが息を切らしながら叫ぶが、すでにカインは立ち上がり、いそいそと荷袋の整理をしていた。

「む……回復薬が足りんな。一度町へ行って補充するか」

 ガシャリ、と硬い音を立てるその荷袋の中には重そうな小瓶が数え切れないほど入っていた。

「このままでは、最後の戦いまで持たない。さあ、行くぞ」

 しれっと、告げながら二人の返事も待たずに歩き出すカインを、最早無言で二人は追った。……カインと同じく、大量の小瓶を持って。



「……何が悲しくて俺ら、最初っから、最後まで、回復剤やら、解毒薬片手に戦ってんの?」

 疲れきったようにライルが呟くと、フィリスが遠い目をする。

「そりゃ、あんたのせいでしょ。こんな奴を仲間にするから」

 二人の恨めしい視線を一身に浴びながら、カインはやはり遅れる二人を気に留めず、すたすたと進んで行く。





 最高の白魔法を使う男として有名な男、カイン。

 ───彼が、回復系の魔法だけは一切使えないのを知ったのは、共に旅に出てしまってからだった。



……不意に思いついたと同時に書き上げた品

会話ばっかりとか一切気にせずノリだけでごぅ!!

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