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十九話

遅くなって申し訳ありません!!

戦いは、次回からかな……

 戦闘に向け、いくつかのヘリと対空砲、戦車を用意した。戦闘機を出していたかったが、滑走路がないので却下となった。戦闘ヘリでの戦いが予想されるが、空の戦車と呼ばれるAH-64アパッチを出撃させるため、大丈夫だろうとは思う。だが、相手の大きさからしてそれに見合った戦いができるのか。不安は拭い切れない。

 だが、部下の頼みでもあるし、何より救うと約束したんだ。覚悟はもう決まっている。


「試運転は?」

「できてるわ。殆どは準備完了ね」


 そうかと呟いて、ちらりと隣を見る。田中はどうしたの?と聞いてきた。やっぱり、美人さんだわぁ……ではなく、こいつも不安に思っていないのだろうか。


「この戦い、どういった風に戦う予定なんだ?」

「……アーヴィングから聞いた情報から、敵の攻撃は物理攻撃がほとんど体当たりで、風圧による吹き飛ばしとかまいたちね」


 歩き出して、周りの準備を確認しながら話をすすめる。ヘリのロータの動作確認、銃器のチェック、戦車などの試走と試し撃ち等など。爆音と共に色んな怒号が響く。


「そして魔法攻撃が、ファイアブレスと、魔光線。だいたいあのSSSと同じ攻撃ね。でも、その動きが大きく早い分、前回よりもキツイと思うわ。まぁ、威力は格段に下がってるでしょうけれど……だからまず空対空ミサイルを使うの。それと、できる限り対空砲火で応戦して地上に引きずり込むことが私の作戦よ」

「地上での戦闘をするのか?」

「三次元的な戦いよりも、二次元的な戦い方の方が当てやすいでしょ?」

「なるほど」


 敵は自在に飛べるため、空戦は余りよろしくないのだ。相手は野生の生物と同様で、理性がない。だから、本能的に、直感で動く超機動的な相手にヘリでは戦い辛いだろう。それは、戦闘機でも言えるのかもしれない。

 だが、地上に下ろした後のリスクは俺たちも同じだ。魔法の攻撃ができる分、遠距離攻撃も可能だろう。


「で、地上に引きずり下ろした後、どうする予定だ?」

「戦車隊による一斉射撃、それでダメなら柔らかいところ……そうね、例えば口の中とか、粘膜系だとか」

「狙いづらいな……やれそうか?」

「信用しているわ」


 なんとも俺達任せな……そう思いつつ、情報がアーヴィングの持つものしかない今、詳しい作戦はたてられないだろう。


「具体的には、大きく散開して、歩兵隊と戦車隊による各自斉射、もちろん十字砲火でね。後は……状況次第で変更していくわ。とにかく、求められるのは敵との接触を避けることよ」

「当たればひとたまりもなさそうだしな」


 散開させ、多方向からの攻撃で敵を撹乱させるのだ。……また、散開させることで、万が一こちらに向かってきたとしても「少ない犠牲」で済む。おそらく、そちらの狙いもあるのだろう。


「じゃあ、俺たちも準備に取りかかろう」

「その前に、言っていた体力テストからね」

「あぁ、それじゃあ、白線だとか用意しようぜ」


 そういって、俺達は50m走だとか12分間走だとか立ち幅跳びだとかを行うため、そこら辺の土地を貸していただくことにした。

 村長の元へと向かい、話をすると二つ返事で了承を得ることができた。しかし、そんな時間はあるのかと心配そうにこちらを見ていたのは、見なかったことにした。時間はないだろうけれど、準備に関しては早々に完了できるし、出来ている。むしろ、避難誘導を俺はお願いしたから、そっちを早めに終わらせてもらいたいところだ。


 さて、上着を脱いで、半袖シャツになった野郎どもと私達はまず線を……


「おい、白線はどうしたんだ?」

「なかったわ?」

「え、じゃあどうするのさ?」

「だから、今銃口で削って地面に線を書いているの」

「!?」


 そう言いながら田中はさも当たり前のように地面を削って線を引いていた。しかも銃で。しかも銃で。銃で!?


「ぶっ壊れたらどうするんだ!? あぁあぁ! 黒光が削れちまってるよ!?」


 塗装が禿げて、メタル感が出てきてる銃口を見て焦る俺。しかし、田中はそれを腕の倉庫へとしまってこう言う。


「大丈夫よ。一度実験したんだけれど」

「実験て、何したんだ……!?」

「銃が壊れても、再び使用が可能か。または修復できるのか、よ」

「あ、あー……なるほど」


 納得する俺。おそらく、修復ができたのだろうな。だからドヤ顔で銃を使って、線を引いてみせたんだろう。なんか腹立つ。


「で、こうして倉庫に入れると修復できるってわけ。ほら、簡単でしょ?」

「へぇ……だが、でも気をつけろよ?暴発してしまうからさ、弾倉は抜いておこうぜ」

「……忘れてたわ」

「おい……」


 そんなやり取りをしつつ、線引きを完了させた俺達は、他の隊員を呼び出し、ついに体力テストを行い始めた……!


「ドキッ♂男だらけの、チキチキ体力テスト、開催だぁ! さぁ、まずは50m走だぜ! 一番早いやつは誰かな!?」


 マイクの代わりに大きいスプーンを使って、俺は司会者を始めた。ノリに乗りまくっているのは無視してほしい。

 田中も俺の隣の席、司会者席()で観戦するように眺めている。若干俺と距離をおいたのは無視してほしい。


「優勝者には、田中のあつぅいチッスがゴバァ!?」

「……ふふふ、頑張ってね?あ、ちなみに最下位は私からの罰ゲームよ? あとーーー」

「ギブ! ギブギブギブギブ!! 決まってる! 死ぬ!」


『……………………』


 皆が真剣な表情へと変わった。同時に俺の意識が遠のいた。はは、マ○ラタウンよ、さよならバイバイ。ようこそ、サンズリヴァー……。

 それから少しして、気がつくと恐ろしい状況が目の前で繰り広げられていた。

 全力で、豪速で50mを駆け抜ける男達はそのタイムを競い合っている。何をそんなに真剣になることがあるんだ?そんなに田中のお仕置きが……まぁ、痛いわな。

 納得するのは些か問題ではあるけれど、でもしかし確かに真剣になる理由になりえるのだ。それくらい奴の女子力(物理)は高威力なのだから。まぁ、それくらい感じ取れるというのは、さすが戦士の感と言ったところか。すげぇなこいつら。


「ほらほら、隊長のコスプレショーが遠のくわよ! 本気で計りなさい!」

『押忍!!!』


 前言撤回。こいつら心の奥底からバカで変態だったわ。


「田中ぁぁああああ!!何吹き込んだ!」

「あら、誰かさんがしようとしたことを、代わりに誰かさんを対象に言っておいてあげただけよ?」


 とんでもない笑顔をこちらに見せた。可愛いぜコンチクショウ!


「俺は許可してないぜ!」

「どこかの誰かさんも私の許可無くキスさせようとしたわよねぇ?ん?」

「返す言葉もございませぬううう! しかしお慈悲をおおお!」


 その場にへたり込んで言うが、ダメだ言い返せねぇ。土下座して、田中に情けをかけてと乞う俺。傍から見たらもうリーダーでも何でもねぇな。

 田中は、いつの間にか出していた扇子をンバッとひらき、口元を隠すようにしていった。


「そうねぇ……あの人達に勝てたら、免除してあげてもいいわ」

「やっーーー」

「ただし、一種目でも負けると……分かっているわね?」

「……くああああ!!! やぁってやるぜぇぇええええええ!!!」


 よく見たら、いつの間にかエルフの男も多少混じってるじゃないか。ええいくそ、負けねぇ!負けられない戦いが、ここにある!



    *



 さて、そろそろ話を戻そうか。服装をひらひらしたフリルがいっぱいの魔法少女スタイルに変えているのは無視してほしい。結果から言うと、皆超人的な体力になっていた。

 素早く、力持ちで、戦闘も強い。魔力系等はアーヴィングぐらいしか分からないが、おそらくそれを抜いて平均を大きく上回っていると言えるだろう。

 皆に昼食を取るように言うと、俺は即刻座るように誘導された。


「……まぁ、あの情景を見たらなぁ……」

「メシマズはモテないわよ?」

「るせぇ……」


 肘杖をテーブルにつき、彼らの料理を待つ俺。時折ため息をつくのは、俺が作った料理が実はとんでもなく不味いという事を自覚させられたからだ。俺が見つめる先では部下とエルフが和気藹々と料理を作っている。そして、味見をしてサムズアップをしているのを見ると、説教をたれさせられてる気分だ。

 でも、溜息をつく理由にはもうひとつある。こいつらの力は、常人レベルじゃない。安心する一方でそんな俺らは他の人間から見てどういう対象になるのか、それが心配なのだ。

 まさしく人間じゃないエルフとかなら神格化されたり、畏れられたりするのは若干分からなくもない。しかし見た目が同じ人間なだけに俺達は……もしかすると、一般人にすら、殺そうだとか思われかねない。

 だからといって一般人をも畏れさせると今度は俺達は孤立する。それは避けたい。自給自足の生活はここに来てから行ってきたことだが、畑耕して一箇所に留まるというのも……悪くはないが、味気ない。俺達はチームで家族同然だが、それだと早々に離反者が現れるだろう。たぶん……たぶん……。

 俺達は辛い現実(中にはそうでもない奴もいる)から抜けだしたチームでもあるし、そうでない奴も、いずれ限界は来る。ちょっとした娯楽のために、毎日のサイクルから逸脱するために、あの戦場にて銃声を始めたのだから。

 そう、俺はもうひとつ、これからのことについても悩んでいたのだ。安全かつ、他の人間と友好関係を保ち、平和で時たまスリルを味わう……わがままみたいな生活を送るために、どうするべきか。

 そうして悩んでいると、田中がふっと笑ってこういう。


「何か、他のことでも悩んでいるようだけれど……大丈夫よ。あなたの判断が間違いだろうが、いくらでもやり直せるもの」

「……ん、ありがとう」

「いーえー……ふふっ」


 天使のような笑みに、俺もつられて苦笑した。そして、タイミングよく目の前に料理が並べられていく。どれも美味しそうで、自分のものとは比べものに……比べ……いや、もうこの話はよそう。


「よーし、皆ぁ、席につけ!」


 そう大きな声をあげると、皆が一斉に席へと座りだす。まるで椅子取りゲームのような素早い動きに、どれだけ腹が減っていたのかがわかる。全力で体力テストに挑んでたんだもんな……。

 そして、アーヴィングが毒味魔法を使い、安全が確認できたこと、皆が手を合わせることを確認して俺は言う。


「いただきます」

『いただきます』


 その合図を皮切りに皆がむしゃぶりつく勢いで料理に手を伸ばした。中には涙を流すものもいた。しかもそいつは俺の飯を食って一番最初に犠牲となったやつじゃないか。後でブトバーシマス。

 俺も普通に食べ始める。……な、なかなか美味しいな。やるじゃん。そう自分の中で対抗意識を持ちながら箸?を進める。

 でも、そんな食事中でも気になることがあった。俺は隣に着席したアーヴィングに小突いて耳元で囁くように言う。


(なぁ、テレパシー的な魔法はないか?)

(ありますけど……どうしてです?)

(盗聴されないぐらいのテレパシーで会話がしたい)

(む、難しいことを……もちろん、食事を続けながらですね?)

(そうだ。頼むよ)

「お? 隊長、何こそこそ話をしてるんだ?」


 酒に酔った山中が絡んできた。昼間っから酒て……お前……。はぁ、とため息をついてふっと微笑んだ。……アーヴィングは隠し事ができない奴の典型的な特徴を示していた。ようは出来ない口笛を吹いていたってことだ。


「いや、なんて言うのかな……これは話しちゃ、少しまずいってぇか……」

「え、なんですか羨ま……けしからん。アーヴィング、後で覚えてろよ! で、で、何と?」


 食い気味に聞いてきやがる山中に、クックックと笑って返した。


「いやぁ、サリバンがあるエルフとイチャラブ―――」

『サリバァァァァンンンンン!』

「ギャアアアアア!」


 想像以上に話しちゃまずい話だったじゃないか。サリバンが血祭りにあげられる、楽しいお昼ごはんを過ごせそうだなぁ。なんて白目になりそうな惨状を眺めつつ、ボケーッとしているアーヴィングにこれまた肘で小突いた。

 アーヴィングはそれに気づいて飯を食べ始めた。俺もそのまま食事を始めた。


(こ、これでいいですかね)

(おお、すげぇ。上出来だって聞こえてるか?)

(はい、大丈夫です)


 これ、すげぇ美味しいとか呟きつつテレパシーを交信し合う。


(この交信を田中にも聞こえるようにしてくれ)

(うぅ、が、頑張ってみます)


 ちらりとアーヴィングの反対の席、つまり田中の方を見てみる。髪を手で避け、スープを音を立てずに啜る。とてつもなく上品かつ、女の子っぽい。うわ、こいつもう心の中の男を消しやがったな。そう思わないと惚れてしまいそうであるくらい、魅力的だった。

 そして、一度そのスプーンが傾くのが止まる。が、何も無かったように食事を開始した。こいつすげぇ。


(急に何かな?)


 すごく怒っていらっしゃるようで。テレパシーの声音はそのまま彼女の声だった。


(エルフの動向が気になる。戦闘に入られると邪魔になるんだが、彼らはどういう動きをしているんだ?)

(大丈夫、再三私の方から戦闘に参戦してはダメだと言っておいたから)

「と、すまん、それとって」

「はいはい」

(だが、今のところ俺達はのんびりしまくっている。料理然り、体力測定しかり……それともうひとつ、その動向は龍を利用して俺達を殺し、あの国に引き渡―――)

(大丈夫よ。もし何かあったとしても、私が対処するわ。あと疑心暗鬼過ぎよ。気楽に行くのがあなたの努めでしょ?隊長)


 上品に食べながらテレパシーでそう言った田中。すげぇこいつ。格好いい……。

 俺は俺で何度か手を止めそうになっていたが、田中の方を見ないで何とか普通の食事をとった。近くにいるエルフもあまり気づいてはいなさそうに感じる。

 暗殺を狙っているだとか、少し疑心暗鬼になりすぎてたかな……だが、隊員の命を預かっている以上、最悪なケースをいくつか想定しておくべきだ。

 だが、まぁ、今日は、今回は……今回も、田中(こいつ)を信じよう。そう決めた俺は、そのまま楽しみながら食事を終えたのだった。




  ※



 さて、日は傾き、この森の木々の間にオレンジ色を帯びた陽の光が所々に差し込むが、だいぶ暗くなってきていた。そう、ついに決戦前となったのだ。武器の確認、兵器の調子の確認等、様々な準備を完了した。昼前の体力測定も結果を報告し終え、戦車の試走や試し撃ち、戦闘ヘリの動作確認等なども含めて最終準備も完了間近だ。

 アーヴィングの報告(サーチ)によると、多少右往左往しつつも、敵はしっかりこちらへ向かってきているようだ。予定時刻通りに会敵するだろう。だが、アーヴィングによるともうひとつ不穏な動きがあるらしい。俺達はその報告を五十嵐から聞き、田中と共にアーヴィングに直接会うため作戦会議室とした の扉を開いた。


「で? もうひとつの不穏な動きってなんだ?」


 俺に気づいたアーヴィングは敬礼をして話を始める。


「はい、彷徨う婿に比べたらまだ小さい敵の反応です。おそらく野生のモンスターか何かでしょう」

「へぇ、じゃあ無視で構わないかもしれないわね」

「だが、一応動向を確認する必要はあるな……」

「俺が見ておきます」

「すまんアーヴィング。負担をかけるな」

「大丈夫です」


 そう言うとアーヴィングは自身の持つ拳銃、デザートイーグルの弾倉を確認して、ニッと笑った。


「俺からの申し出を受け入れてくれた隊長に、むしろ感謝しています」

「本当なら、またSSSと戦うとか勘弁してほしいしね」

「うぅ、すいません」


 田中はアーヴィングにニッコリと笑みを見せた。まぁ、でもこれでエルフたちと仲良くできる、信頼を抱いてもらえるのは今後何かに役立つだろうし、と俺は笑った。扉から幾つかの声が聞こえ、扉の方へと足を向けた。その先には、皆が笑って整列している。戦闘前なのだから、気を抜くなと注意の一つでもかけるべきだろうと溜息をつくと、俺は扉をぱっと開いて皆の前に立つ。うん、どうやら最終準備とやらも終わったようだ。


「さて、それじゃあ全員戦闘配置! 状況開始までに配置を終わらせ、作戦行動をしっかりイメージしろ! 気を抜くとたとえ俺達であろうと死ぬ! 気を抜くんじゃないぞ!」

『了解!!!』


 勇ましく、かつ強気の返答に俺の口角はにやりとつり上がった。あぁ、だめだ。俺自身も注意しねぇと気を抜きそうだぜ。安心感がハンパねぇ。

 そんなことを考えている間に、皆は自身の配置へと走って向かう。後ろにいるアーヴィングと田中はそれを聞いた後にくすっと笑った。

 状況開始。気を引き締めて……勝つぞ、皆のために、エルフたちのために――――

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