十八話
今回は日常パートで、少なめです。
翌朝、眩しい日差しが指す中、眠りから覚めた俺はあたりを見回した。皆皆、酔って潰れて疲れ果て、机は移動して床に布団をしていてねいたり、椅子をベッドにして寝ていたりしていた。
俺はどうやら布団を敷いて寝ていたようだ。記憶が薄れているが、「日本人として、俺ぁ布団にー寝るのっ!」とかほざいていたような気がする。あと、お風呂もしっかり入ったような気もする。お風呂……というよりか、シャワーを浴びるっていうほうが合ってたかな。どっちでもいいが。
「……?」
おや。
おやおや。
ふと、見回していると、あるものが目に入る。サリバンは壁に背を預け寝ているのだが、掛け毛布がかけられている。しかも、俺達の用意した布団の掛け布団でなく、ここ、エルフの村でよく見かけるものだ。
周りの奴らが起きていないのが分かった俺は、今回だけだと呟いて起き上がった。パジャマ姿で少々恥ずかしいけれども、サリバンへと近づいて起こす。
「おい、起きろ。サリバン、お前ボコボコにされるぞ」
「ん……な、何です?」
だいぶ寝ぼけているような表情だ。とりあえず、ため息をついてこう言う。
「その毛布、どこの誰さんのやつかな?」
「?……あ、これは……」
段々目と頭が覚めてきたのか、その毛布を手にとって何かに気づいた。
「……他の奴らにばれたら、たこ殴りかいじられるのは確定だぜ?」
「あ、あ、ありがとうございますっ」
慌ててその毛布をたたみだすサリバン。だが、その表情はとても……とても……んー、うざいほどニヤニヤしてる。
とりあえず、俺はサリバンに返しに行っても構わないと許可を出して、外へと蹴りだしておいた。その背を見届けたあと、ふと店の入口にある鏡を見た。そこには恋話を聞いて、ニヤニヤを止められない、キャッキャしている系女子のニヤケ面が……俺も人のことは言えないな。
「さぁ……て、今日の夜に接敵予定となる、と……」
んーっと伸びをすると、まずは隊員の朝ご飯の準備をしようと、厨房へと向かった。朝の日差しは森の中であるせいか少なく、部屋の中はまだ薄暗い。そのためか、隊員達はサリバンを抜いて全員がすやすやと寝ていた。
「ん?」
いや、どうやらグルフと田中は違ったらしい。その二人はそこにはいなかった。どこかへと出かけているのだろうか……?とか考えつつ、洗面所へと向かった。寝癖、顔洗い、歯磨を済ませ、厨房に入ろうとして気づく。着替えを忘れちまってた……。
とりあえず、いつもの野戦服を着て、その上からエプロンを着用する。そしてそのまま厨房へと入ると数人のエルフ達が料理を作っていた。
「よ、おはよう。俺の部下たちのために、朝飯を作るんだ。借りていいか?」
「ええっと、もう既に作っている最中です」
どうやら、その作っていた料理こそ俺達の朝飯らしい。
「そうか、ありがとう……だが、俺も手伝わさせてくれ。今はやることが無いんだ」
そう言うと、エルフ達は顔を見合わせて、そして笑った。なにか可笑しかったのだろうか?聞こうとしたところで先ほどのエルフが答えた。
「すいません、暇だからと言って私達の手伝いをする人間を初めて見たので……良いですよ」
「ふぅん……まぁ、いいけれども。じゃあ、何をするといい?」
さて、その後俺は朝食を手伝ったのだが、エルフ達の表情が途中から変わっていった。ニコニコしてたのが引きつった笑みに変わったような、何だろうな。別段俺の料理は普通だと思っているのだが?メシマズなはずは無いんだ。
「どうした。なにかおかしいか?」
「……い、いえ……」
ほらやっぱり。なぁんもおかしく無いだろ?そういう感じに、得意げな表情を見せた。苦笑したり、微笑んでくれたり、反応は様々だったが……まぁ、ドヤ顔をしたら誰だってイラッてくるもんだ。うん。
「じゃ、運ぼうか。俺が腕によりをかけて作ったんだ、きっと喜ぶぜ」
「は、はい……」「そう、ですね……」
そう言って俺は鼻歌を歌うように酒場へと持っていったのだった。とても気分がいい。やっぱり料理は楽しいな。
皆はそれぞれ起きており、布団や机を片付けたり、元に戻したりし、掃除までしている。日本人としての考え方として、来た時よりも綺麗にするというものがある。俺は彼らを尊敬していたが、更に評価は上がっていく。やっぱり、こいつらは凄い。
俺はフッと笑って台車を進ませた。
「あ、おはようございます!」「おはようございます」「おはようございます!」
「あぁ、おはよう諸君!アーヴィングはいるか?」
そう呼ぶと、一つあくびをしてアーヴィングがこっちに来た。
「何です?」
「一応エルフがこの料理の手伝いをしてくれていたんだ。疑うのは申し訳ないが、万が一がある。頼んだぞ」
「……了解です」
眠たそうにしていたが、俺からの頼みを聞いて両頬を叩いて目を覚ました。隊員たちの命に関わるから、お遊びの感覚で確認を怠ることのないようにしなくてはならない。アーヴィングもそう俺が言いたいのが分かっているのだろう。
「よし、じゃあこのスープを見てくれ」
「了解です」
彼は手を右目にかざし、撫でるようにまぶたの上を擦る。その右目が開くと、色が漆黒から黄色くなっていた。昨日はよく見えなかったが、こんなふうにしてたのか。
順調に料理を見ていくアーヴィング。顔色を変えないところからおそらく大丈夫なのだろう。次々料理を見ていく。
「……!?」
「ん、どうかしたか?」
表情が固まった。なんか、冷や汗が出てるような気がする。俺はその料理を見てみるが、何だ、俺の料理じゃないか。一応エルフが手伝ってはくれていたが、ほとんどは俺が作ったものだぜ。
「え……と……せ、先輩方、集合願います!」
「おう、どした」「どうしたん」「なんやなんや」「なんだろう」
「どうしたんだ? なんかまずったか?」
「た、隊長は朝食の準備を願います!隊長の料理がとても美味しいってことを伝えるだけなので」
「な、なんだ、照れるな」
頬をかいて笑う俺。やっぱり、人に料理が美味しいんだと言われると素直に嬉しいものだ。しかし、あの魔法って料理の旨さまで分かるのかぁ。すげぇな。
感心している俺の傍らで、皆はヒソヒソと話していた。何だろうな、少し恥ずかしいな。えへへ。
「では、幸運を……」
アーヴィングのその一言にみんなは頷いた。何を幸運を願うことがあるのだろうか。とりあえず、料理はエルフ達とともに並べたので、後は朝食を食らうだけである。各々、昨日のように席へと座ると、前に立つ俺に注目をしてくれた。
「あー、諸君、そのままで聞いてくれ。朝食後は一応、体力テストを行うため、しっかり食っておくように。いいな?」
『イエス、マム』
「では、両手を合わせ、いただきます」
皆、いただきますとそれぞれが言って料理を食べ始めた。
「……!!!!」
「あ、俺のを食ったか。どうだ?美味しいか?」
……なかなか咥えたスプーンを口から出さないな。まるで固まったようだ。……不味かったのかな。それだったら、本気でショックなんだが……。すると、隣のやつが言い出した。
「あ、こ、こいつ、美味しすぎると固まるのですよ。ほら、笑顔でしょう?」
そう言って顔を見せる。確かに良い笑顔だ。そんなに一口を味わおうとするなんて、まったく……。
俺はフフッと笑った。一口で固まるなんて、馬鹿だなぁ……でも、うれしいよ。
「沢山あるんだ、一口だけじゃなく、もっと食ってもいいんだからな?」
「……は、はい!」
そう言って俺は他の席へと向かう。他のやつはどんな感想を言うのだろう。自信が出てきたから、気になるのだ。足取り軽く他の席へと向かうのだった。
俺には聞こえなかったが、去ったあとはこんな会話があった。
「……隊長、涙目なんだもん、仕方ないだろ?」「綺麗な顔してるだろう……?……死んでるんだぜ、これで」「飲めっ……!飲み込め……!噛まなくていい、飲みさえすればいいんだ……!」「はら、括るか……ゔっ」「ふー、ふー、はむ、ゔぅ」
それから、少しして。グルフと田中が帰ってきた。
「ただい……ま……?」
「な、何があったんじゃ……?」
田中が言うには、 数多の屍の中心で天井を眺めて放心し、突っ立っている俺がいたとのこと。
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