十五話
あの曲を歌いながら、俺達の輸送ヘリは森の上空を駆け抜ける。攻撃ヘリはその護衛に付いてくれており、数機のヘリでの編成になっていた。窓から見渡せる緑一色の光景に、若干の飽きを感じつつも目的地へと向かう。
「悪いな。そろそろ運転変わるぜ」
「いえ、隊長は少しお休みになられてください」
「ははっ、いや何、同じ風景をジーッと眺めるのも悪かないが、そうしている方が暇すぎて死にそうなんだ」
ふっと微笑んで隣に座り、操縦を変わる。
「ちょ、無理やり……全く」
「はっは、じゃ、後ろに下がってくれ」
「はぁ、了解です」
両手を離し、上に挙げてお手上げをする。それにふっと微笑むと俺は正面を向いた。まだまだ緑広がる森にうんざりしつつ、操縦する。
バババという風切り音が耳障りのないBGMになるほどの暇。それを約半日くらい過ごした俺達はその殆どが夢の中へと誘われてしまっていた。護衛機はなおも俺達の前や後ろ、左右についていてくれており、配置はそれほど悪くない。それに、今まで特に変わった報告も受けていないし、特に心配事もない。
ずっと飛んでてもらっているし、彼らには後ほど何かしらの見返りを用意してやろう。そう考えていると、おぉ、という感嘆の声が無線で聞こえた。
「どうした?」
『隊長、見えてきました……しかし、予想よりも……いや、おかしい。森を抜けていないぞ』
『森の中に村がある。街というよりは村だ。とても小規模なものだぞ』
その報告を受け、すぐに田中は反応を示した。
『了解したわ。対空攻撃がある可能性がある。迂回して行くわよ』
「そうだな。田中の言うとおりだ。迂回して……何だ?」
その村から何かを感じた。第六感ってやつ?それとも女の勘というものだろうか。何かしらの悪寒を感じた。
「護衛機、確認急げ。何か異常はないか?」
『ヤー、今確認を……対空攻撃を確認! 戦闘態勢に入ります!』
「全員シートベルトを!」
それ見たことかと田中は無線越しに呟くと、ヘリを大きく旋回させる。きっと中の皆は洗濯機のような状態だろうな。しかし、こちらも同じように旋回する。先程までトランプをしていた部下たちは叫び声を上げるとゴロゴロと転がっていた。
「バッカ!いてぇんだよ!」「うるっさいわ!このどあほ!ってあー!トランプがぁ!」「あははっ!君も十分にうるさいよ!?」「取舵いっぱぁい!進むのじゃ!」
サリバン、大和、ウェルキン、グルフが騒ぐ。他のやつだってわいのわいの笑い声だったり笑い声だったり笑い声だったり……
「馬鹿どもがぁ!こちとら回避行動頑張ってんのぉ!呑気にこの状況を楽しんでるんじゃないのぉ!」
ツッコみつつ機体を揺らす。なんかすごい光がこちらへ飛んできたり、あちらへ飛んでったりしていて、一瞬花火かなんかかと勘違いしそうになる。
「た、隊長!」
「んぁ?どうした、アーヴィング!」
「あれは多分、エルフの村です!あ、た、対空魔法攻撃!」
「うおっと……あぁ、これやっぱり魔法なのか!?」
「はい!そしてこれは光魔法だから、おそらく高貴なる種族、高貴なる血族のものかと……そうなると、森で小さな村を作る高貴なる血族といえば、エルフしかいません!」
大声で話し合う俺達。でも今はそうでもしないと聞こえないのだ。しかしまぁ、エルフの村か。
「エルフだと!?あの耳が長い――」
「そうです!そしてエルフは通常人には攻撃してきません!そもそも村を見つけられるようにはしない魔法がかけられるくらいで、――」
「話はできるか!?」
「――できます!今その許可を取りに来ました!」
「でかした!解説は後で聞く!準備にとりかかれ!無駄な戦闘を避けられるかもしれない!こちらリン、聞こえるか!?応答求む!」
俺はそう言うと無線機に手を出し、他の戦闘ヘリや輸送ヘリに声をかける。アーヴィングは俺の命令に返事をすると急いで後ろの方へと戻っていった。アーヴィングが居てくれて助かった。少し前に聞いた話によると、エルフとの会話は古代の文字、話し方になるらしく、一般ピーポーには通常のカイワすら無里だと言われているのだ。その上、ここから声を届かせるには魔法くらい使わないと無理だろうしな。
俺は話をつけてくれるのを期待し、少し待つ。すると、耳を劈く大きな声が森に響いた。
『対空攻撃を中止してください!』
「ちょ、おま、ネタ武器かよ!」「あっはっはっは!魔法やと思ったのに!」「ぎゃあああああああ!耳がぁん!」『さ、サリバーン!』
「あ、あぁ……拡声器、使ったのね……」
説明しよう。ネタ武器、拡声器とはとあるアニメとのコラボがあり、そのアニメは拡声器を武器として学園のルールをぶっ壊すという趣旨であったからこそ生まれた武器なのだ。画面内の敵に対してショットガンのように食らわせることができる。また、近ければ近いほど閃光弾を食らったような状態にさせるというものなのだ。
俺に向けた声掛けでないことが幸いし、俺にはそれほどの被害はなかった。……サリバンは、その、ご愁傷様。
「さて、これで一安心、か?」
そう呟きつつ村を見つめ続けると、ふと対空魔法攻撃がやんだのが確認できた。
『リン、聞こえる?』
「あぁ、聞こえるぜ、田中。どうするよ」
『うーん、とりあえず、アーヴィングに「相手へ「攻撃はしない。一度ここで休息を取らせてくれないか」と伝えて」と伝えて欲しいわ』
「ややこいな。あいあーい」
てきとうに返事を返しつつ、コックピットからアーヴィングを呼びだそうと……と、来てくれたようだ。どことなく申し訳無さそうな表情をしている感じからして、サリバンの現状を見たのだろう。後でグチグチ言われるぞぉ?弄られるぞぉ?くっくっく
「と、アーヴィング、丁度いいところに」
「なんですか?」
「いや、エルフたちに俺たちは戦闘の意思はないということと、ここで休息を取らさせてほしいことを伝えて欲しくてな」
「りょ、了解です」
俺がそう頼むと、アーヴィングはまた後ろの方へと下がり、拡声器を使ってまたも何かを話す。ちなみに、俺達からするとアフリカ大陸あたりで使われてそうな言葉だなぁと思うような言葉である。すると、村から天高く花火のように何かが打ち上がり、パンと破裂した。
「あー、照明弾?照明弾かありゃ」
「隊長、あいつ何語話してるんや?」「おそらく魔法の言葉じゃないかな?」「どちらにせよ、言葉が通じるんじゃ、ラッキーじゃよ」「それな!」
五十嵐まで会話に参加して、後ろでは楽しそうに会話が続いている。まぁ、確かにアーヴィングが居て助かるが、こいつら今の状況をめっちゃ楽しんでますやん……
ため息をつきつつアーヴィングに向かって声をかける。
「アーヴィング!あの照明弾が返事か!?」
「はい!そうです!着陸可能です!」
「オーケー、こちらリン!田中、着陸可能だ、着地ポイントを探すぞ」
『ん、了解したわ。さて、じゃあまわりをみわたしてから、ゆっくり決めましょうか』
その通信を最後に、俺達は一時的な休息を取ることとなったのだった。
*
「というわけで、臨時宴会を行いたいと思いまする」
唐突に俺が口を開きそういった。皆、ポカーンとした表情でこちらを眺める。いいね、その反応好きだわ。
俺のとなりでは田中が頭を抱えていた。
「あ、あのねぇ……何がというわけで、なのかしら……」
「戦士に休息は必要なものだろ? アーヴィングによると、ここで一息つける酒場があるってよ。しかも村長が主催してくれるそうだ」
「罠とは思わなかったわけ? 何事も疑ってかからないと、また面倒事になるかもしれないのよ?」
ジト目で睨む田中。今のお前がそうしたって、可愛いだけなんだが……。とりあえず、俺は人差し指を立ててちっチッチッと指をふる。
「アーヴィングが言うにはエルフは高貴なる種族、血族らしいから、そんな卑劣なことをしないらしい。ま、可能性で動くのは良くないけども、仲間の言うことを俺は信用しているぜ」
「うーん……」
腕を組んで考えこむ田中。すると、目の前に並んだ仲間たちが、隊列を乱して各々喋り出した。
「良いじゃん!やすもーよー」「ねー!やーすーもー」「やーすーもーやーすーもー」「わしも休みたいー」「俺……俺が多分、一番休みたい……」『サリバーン!!』
「……小学生かよ……ははは!」
「はぁ、まったく……仕方ないわ。とりあえず、どういう宴の内容かによってはちょっと人の配置を変えるわ」
「ん、それに関しては任せたぜ、参謀」
「ちょーしがいいんだから……」
こいつらの行動に笑いつつ、小声で俺達はそう話し合うと、丁度戻ってきたアーヴィングの方を向く。
「首尾はどうだ?」
「ええ、大丈夫そうです。宴の内容は多少の会談と、食事……と、飲み会のようです」
「ん、なら数名は飲ませないようにしなきゃならないわ。毒が入ってるかもしれないしね。毒じゃなく、おそらく睡眠薬の可能性が高いのだけれど……」
「そうだな……」
「あ、毒検査なら俺の魔法でなんとかなります」
俺と田中は向い合って配置を考えようとしたのだが……こいつ、何でもありかよ。二人してアーヴィングに向き直り、「でかした」とつぶやいた。
「なら、こいつの魔法でなんとかして、楽しむとするか。安心して飲める幸せっていうのは、今後数日間は無理だろうしな」
「毒が入ってたらどうするの?」
「報復する。俺達は俺達のために戦うんだ。敵対する奴はねじ伏せる」
そう言うと田中は「分かったわ」と呟いた。……こいつ、俺の言う報復の考えがたぶん、アホみたいなことなんだろうなぁって表情している。まぁ、俺達に本当に害がありゃ、本気で対処するが……アーヴィングの魔法のお陰で被害は出ないだろう。
だが、被害が出なくても俺達に毒を盛ろうとしたんだ。報復はするさ。……まぁ、そんな展開にならないことを祈るし、そもそも高貴なる種族であるこいつらがする筈ねぇ。
「つーわけで、このヘリ達を仕舞った後、休息をとってくれ。また、飲み物、食べ物を出されたら必ずアーヴィングを通してくれよな!以上だ!片付け開始!」
『了解!』
その号令をすると、良い返事と共にみんなが敬礼し、早々に片 あの曲を歌いながら、俺達の輸送ヘリは森の上空を駆け抜ける。攻撃ヘリはその護衛に付いてくれており、数機のヘリでの編成になっていた。窓から見渡せる緑一色の光景に、若干の飽きを感じつつも目的地へと向かう。
「悪いな。そろそろ運転変わるぜ」
「いえ、隊長は少しお休みになられてください」
「ははっ、いや何、同じ風景をジーッと眺めるのも悪かないが、そうしている方が暇すぎて死にそうなんだ」
ふっと微笑んで隣に座り、操縦を変わる。
「ちょ、無理やり……全く」
「はっは、じゃ、後ろに下がってくれ」
「はぁ、了解です」
両手を離し、上に挙げてお手上げをする。それにふっと微笑むと俺は正面を向いた。まだまだ緑広がる森にうんざりしつつ、操縦する。
バババという風切り音が耳障りのないBGMになるほどの暇。それを約半日くらい過ごした俺達はその殆どが夢の中へと誘われてしまっていた。護衛機はなおも俺達の前や後ろ、左右についていてくれており、配置はそれほど悪くない。それに、今まで特に変わった報告も受けていないし、特に心配事もない。
ずっと飛んでてもらっているし、彼らには後ほど何かしらの見返りを用意してやろう。そう考えていると、おぉ、という感嘆の声が無線で聞こえた。
「どうした?」
『隊長、見えてきました……しかし、予想よりも……いや、おかしい。森を抜けていないぞ』
『森の中に村がある。街というよりは村だ。とても小規模なものだぞ』
その報告を受け、すぐに田中は反応を示した。
『了解したわ。対空攻撃がある可能性がある。迂回して行くわよ』
「そうだな。田中の言うとおりだ。迂回して……何だ?」
その村から何かを感じた。第六感ってやつ?それとも女の勘というものだろうか。何かしらの悪寒を感じた。
「護衛機、確認急げ。何か異常はないか?」
『ヤー、今確認を……対空攻撃を確認! 戦闘態勢に入ります!』
「全員シートベルトを!」
それ見たことかと田中は無線越しに呟くと、ヘリを大きく旋回させる。きっと中の皆は洗濯機のような状態だろうな。しかし、こちらも同じように旋回する。先程までトランプをしていた部下たちは叫び声を上げるとゴロゴロと転がっていた。
「バッカ!いてぇんだよ!」「うるっさいわ!このどあほ!ってあー!トランプがぁ!」「あははっ!君も十分にうるさいよ!?」「取舵いっぱぁい!進むのじゃ!」
サリバン、大和、ウェルキン、グルフが騒ぐ。他のやつだってわいのわいの笑い声だったり笑い声だったり笑い声だったり……
「馬鹿どもがぁ!こちとら回避行動頑張ってんのぉ!呑気にこの状況を楽しんでるんじゃないのぉ!」
ツッコみつつ機体を揺らす。なんかすごい光がこちらへ飛んできたり、あちらへ飛んでったりしていて、一瞬花火かなんかかと勘違いしそうになる。
「た、隊長!」
「んぁ?どうした、アーヴィング!」
「あれは多分、エルフの村です!あ、た、対空魔法攻撃!」
「うおっと……あぁ、これやっぱり魔法なのか!?」
「はい!そしてこれは光魔法だから、おそらく高貴なる種族、高貴なる血族のものかと……そうなると、森で小さな村を作る高貴なる血族といえば、エルフしかいません!」
大声で話し合う俺達。でも今はそうでもしないと聞こえないのだ。しかしまぁ、エルフの村か。
「エルフだと!?あの耳が長い――」
「そうです!そしてエルフは通常人には攻撃してきません!そもそも村を見つけられるようにはしない魔法がかけられるくらいで、――」
「話はできるか!?」
「――できます!今その許可を取りに来ました!」
「でかした!解説は後で聞く!準備にとりかかれ!無駄な戦闘を避けられるかもしれない!こちらリン、聞こえるか!?応答求む!」
俺はそう言うと無線機に手を出し、他の戦闘ヘリや輸送ヘリに声をかける。アーヴィングは俺の命令に返事をすると急いで後ろの方へと戻っていった。アーヴィングが居てくれて助かった。少し前に聞いた話によると、エルフとの会話は古代の文字、話し方になるらしく、一般ピーポーには通常のカイワすら無里だと言われているのだ。その上、ここから声を届かせるには魔法くらい使わないと無理だろうしな。
俺は話をつけてくれるのを期待し、少し待つ。すると、耳を劈く大きな声が森に響いた。
『対空攻撃を中止してください!』
「ちょ、おま、ネタ武器かよ!」「あっはっはっは!魔法やと思ったのに!」「ぎゃあああああああ!耳がぁん!」『さ、サリバーン!』
「あ、あぁ……拡声器、使ったのね……」
説明しよう。ネタ武器、拡声器とはとあるアニメとのコラボがあり、そのアニメは拡声器を武器として学園のルールをぶっ壊すという趣旨であったからこそ生まれた武器なのだ。画面内の敵に対してショットガンのように食らわせることができる。また、近ければ近いほど閃光弾を食らったような状態にさせるというものなのだ。
俺に向けた声掛けでないことが幸いし、俺にはそれほどの被害はなかった。……サリバンは、その、ご愁傷様。
「さて、これで一安心、か?」
そう呟きつつ村を見つめ続けると、ふと対空魔法攻撃がやんだのが確認できた。
『リン、聞こえる?』
「あぁ、聞こえるぜ、田中。どうするよ」
『うーん、とりあえず、アーヴィングに「相手へ「攻撃はしない。一度ここで休息を取らせてくれないか」と伝えて」と伝えて欲しいわ』
「ややこいな。あいあーい」
てきとうに返事を返しつつ、コックピットからアーヴィングを呼びだそうと……と、来てくれたようだ。どことなく申し訳無さそうな表情をしている感じからして、サリバンの現状を見たのだろう。後でグチグチ言われるぞぉ?弄られるぞぉ?くっくっく
「と、アーヴィング、丁度いいところに」
「なんですか?」
「いや、エルフたちに俺たちは戦闘の意思はないということと、ここで休息を取らさせてほしいことを伝えて欲しくてな」
「りょ、了解です」
俺がそう頼むと、アーヴィングはまた後ろの方へと下がり、拡声器を使ってまたも何かを話す。ちなみに、俺達からするとアフリカ大陸あたりで使われてそうな言葉だなぁと思うような言葉である。すると、村から天高く花火のように何かが打ち上がり、パンと破裂した。
「あー、照明弾?照明弾かありゃ」
「隊長、あいつ何語話してるんや?」「おそらく魔法の言葉じゃないかな?」「どちらにせよ、言葉が通じるんじゃ、ラッキーじゃよ」「それな!」
五十嵐まで会話に参加して、後ろでは楽しそうに会話が続いている。まぁ、確かにアーヴィングが居て助かるが、こいつら今の状況をめっちゃ楽しんでますやん……
ため息をつきつつアーヴィングに向かって声をかける。
「アーヴィング!あの照明弾が返事か!?」
「はい!そうです!着陸可能です!」
「オーケー、こちらリン!田中、着陸可能だ、着地ポイントを探すぞ」
『ん、了解したわ。さて、じゃあまわりをみわたしてから、ゆっくり決めましょうか』
その通信を最後に、俺達は一時的な休息を取ることとなったのだった。
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