困った
「ハレルヤ、ハレルヤっと」
ガサゴソ
「ふー、懐中不如意。酒も飲めないし、女も買えない。聖夜に1人、相方もなし」
「お困りのようで」
「ああ、どなたかは知りませんが、声をお掛け願えるとはありがたい。その通り、お困りです」
「そうですか、お困りですか」
「ええ、お困りです」
カカ
「お困りならば、いっそのことさらにお困りになりませんか?」
「と、申されますに?」
「まず、酒がわんさとあります」
「ほうほう」
ゴクリ
「女が敷き詰められたように居ます。美人です」
「ほーうほーう」
ムクムク
「全て、好きなようになされます。まったく困ったもので」
「それは、何処でありましょうか?」
「おや、さらにお困りになりますか?」
「お困りになります」
「そうですか、では駆足で」
トットット
そこまで言ったかと思いますと、男の首から下だけが前かがみで小走りに駆けて行きました。
「カシラをおいていくのも無いもんだが」
「お困りになるのは頭ですからな。ここで困っておいてください」
残された生首が困っておりますと、夜が明けた頃に体が戻って参りました。ぬらぬらとするほど肌のつやがよろしくなり、酒の香りが浴びせられたかのように漂ってまいります。
「どうだい?困ったかい?かしらは困ったよ」
そこまで聞きますと、体は思い出したのか、再び前かがみで駆けて行きました。
「またかい?困った体だね」
他に書いているものとは、まったく違った形態ですが、まぁ書きたくなったので。
読んで下さった奇特な方は、ついでに他の策なども読んで大奇特な方になれば、これも功徳ではなかろうかと思います。