第6話:死神と神とそれぞれの事情
「やほぉ♪」
本の仕入れから帰ると、そこには死神がいた。
背丈ほどの大きな鎌を持ち、漆黒のローブに身を包んだ20前後の外見の男。
見た目通りの年齢ではないことは確かだが、俺の生まれる前から存在するはずだから正確な年齢は知らん。
だが、まだ若い男だからか、放浪癖があってたびたびここにも来るわけだ。
「またお前か。10日ほど前に来たばかりだろ?」
「やだなぁ、まっちゃん。俺たちにとっちゃ時間なんてどうでもいいだろ?」
「俺は元人間だ。」
「俺っちだってそうだよ?でも、永遠の命を持ってるのにいちいち時間気にして何になるの?」
「永遠の命があろうとなかろうと、時は有限だ。」
「あきるほど生きられるのにそんなこと気にしても意味ないと思うけど。」
「時が過ぎれば失われていくものもあるからな。特に貴重な文献・資料・禁書なんかはな。」
「まぁ、そういうもの求めてるなら何も言わないけどね。」
「それで、用件はなんだ?」
「ただ遊びに来ただけだよ?」
「で、用件は?」
「もう、まっちゃんは冗談が通じないなぁ。」
「付き合ってても疲れるだけだからな。」
「はぁ。まぁ、いいけどね。今回は仕事の依頼だよ。」
「断る。」
「まだ何も言ってないけど…」
「どうせ、ろくでもないことだろ。俺を巻き込むな。」
「今回はどうしても手伝ってもらわないとやばいんだって。」
「どうせ、前たちのミスだろ。俺は関係ない。」
「そう言われると思ったけどね。だから、今回はちょっと報酬を豪華にしてみました♪」
「くどいな、何度言ったらわかる?俺は手伝わん。」
「まぁまぁ。今回の報酬は『白の本』の閲覧だよ?」
「『白の本』だと?」
「うん。今回は相当やばいことになってるからね。神属の最高議会で決定したの。」
「そこまで依頼内容がやばいのか?」
「まぁ、危険指定世界からの『超越した技術』の流出って表向きはなってるんだけどね。流出したものがちょっと規格外なんだよ。」
「『神殺し』でも落ちたか?」
「『神殺し』だけじゃない。『不死』と『破壊』も一緒にね。」
「そこまでやばそうには見えんが…。」
「今回は不死の方に問題があるんだよ。どうやら、生命の根源たる魂に介入できなくなってるみたいで、例え大規模魔力を放っても持ちこたえるし、近づけば魔法はおろか力さえも発現できなくなる。存在魔法(魔素魔法)を放っても跳ね返されるし、最後の審判も無効とくれば、どうしようもない。で、『超越した技術』を持って逃げ回ってるから見過ごすわけにもいかないと。」
「それを、ただの図書館の管理人にどうしろと?」
「やだなぁ、『世界最強』。決まってるじゃないか。…処理を依頼する。」
「ふん。確かにそのクラスは神には厳しいか。だが、報酬が問題だ。閲覧?ふざけるな。受けるとしたら譲渡だけだ。それか、俺の納得するものを持ってこい。そしたら考えてやる。」
「相変わらず厳しいね。まぁ、そう言われることも考慮してるけどね。…良いよ。俺の権限で『白の本』を『世界最強』に譲渡する。」
「いいんだな?」
「今回は俺たちのミスだ。これで消されても文句は言えんよ。」
「…わかった。早い方がいいだろう、案内しろ。」
「了解♪」