第4話:魔法の練習とオーバーテク
視点:井原理恵
今日も私は図書館巡り♪
忘れられてるかもしれないけど、理恵ね!
本名は井原理恵。
ピチピチの16歳!
そして、私の隣にいるのがブレーカーことあんちゃん♪
本名を椎名杏っていって、杏だからあんちゃんね♪
私達… 図書館探検隊 やってます♪
って、ほんとはもう一人いるんだけど。。
「あ、理恵ちゃん、杏ちゃん、こんにちわ。」
「美穂ちゃんこんにちわ」
と、噂をすれば最後の一人、神埼美穂ちゃんの登場♪
私達は同い年で、同じ学校の同じ文系。
まぁ、細かくはクラスが違うんだけど、なんだかんだで小さいころからよく3人で遊んでるのよね。
「で、二人とも何か考えてきた?」
「お、さっそくだね。」
「当然♪ で、何かある?」
視点変更:神埼美穂
内心私はドキドキです。
松崎さんの話では、そんなに危険はないらしいですが、もしもの事があります。
それに、入れてもよく分からない本があるだけなんで、正直あんまし乗り気はしませんでした。
「当然♪ で、何かある?」
と、だから、理恵ちゃんには悪いけど、こう答えます。
「私は特に何も。ごめんなさい。」
「いや、いいよ! 美穂ちゃんは忙しいからね!」
「うん。そうだよ! あ、それに私一つ思いついたんだ!」
「え、何?! 申してみよ、杏隊員♪」
「ラジャー♪ 隊長、本がすり抜けられるなら、その本と一緒に突っ込めばいいであります!」
「うむ、してその心は?」
「こう、本で体の周りを覆って、少しづつ入れていけば…」
「おぉ、入ったでわないか!」
「はい、隊長!」
ドサッ!
「きゃっ!」
と、ふざけてる間に本が落ちたらしいです。
でもって、元壁があったところから突き飛ばされる杏ちゃん。
いろいろ調べてみると、本で囲った範囲だけどうにかなるようで、そこから出たらだめらしいです。
「これじゃぁ、どんなに頑張っても一人通るのに半日かかるね。」
「何の、まだまだ!!こうやって、本を積み上げて柱を作る。で、下に本を並べて、上を持てば!!」
「おぉ、本の門の出来上がり!」
「はっはっは、みたか!!」
内心私はドキドキです。
一応、入っても特に何にもないですが、松崎さんと約束した手前、ちょっと気がひけます。
と、ちょうど後ろから誰かが近づいてきました。
理恵ちゃんと杏ちゃんは気づいてないようです。
で、いざ乗り込もうという話になった時。。
「こら、君たち、本で遊んじゃダメだろ!」
と、昨日も聞いた声がかけられました。
振り向くと、松崎さんがたってます。
「えtt…」
「遊んでるんじゃありません!!透明な壁の向こうに行こうとしてるんです!!」
「透明な壁?そんなのどこにあるんだ?」
「ここです。なんか、普通には入れないようになってるんです。」
「ん?何もないじゃないか。」
「そんな… さっきは確かに…」
「君たち、嘘はいかんよ。早く本を元の場所に戻しなさい。」
「はぁ~い」
と、松崎さんはそれだけ言うとすぐに行ってしまいました。
「さっきまで絶対あったはずなのに…」
「壁、無くなってるね?」
「と、そうだ、奥を見てこよう!!」
「って、これだけ?」
「なんか、難しい本がたくさん置いてあるけど、それ以外特に何にもないね。」
「なんだ、がっかり…」
「じゃぁ、片づけるとしますか。」
「あぁぁ、もっと面白いものがあるのかと思ったのに。。」
「まぁまぁ、特に危険なものが無かったんだし。」
「でも、ねぇ?」
「ま、とりあえずこれで図書館探検隊の任務はおわりね!」
「何か釈然としないけど、しょうがないか…」
「じゃ、私は帰って宿題でもするよ。」
「お、さすが美穂! 変なことに付き合わせてごめんね!」
「ううん、気にしないで。それじゃ、またね、理恵ちゃん、杏ちゃん!」
「またね~、美穂」
さて、理恵ちゃん達と別れて私は出口の方に向かって歩き出しました。
でも、こっちが目的地じゃありません。
しばらく歩いて二人が付いてきてないのを確かめると、私は待ち合わせの場所に歩みを進めました。
「やあ、来てくれたんだ。」
と、そこには松崎さんがたっていました。
片手には近くの棚から取ったのでしょうか、『英雄四史』という本が広がっています。
それをさっと目を通して閉じると、松崎さんが振り返りました。
「それじゃ、行こうか」
「はい、よろしくお願いします。」
と、言って、松崎さんは個室の中に入って行きました。
あれ?っと思いながらも後をつけてみると、松崎さんは個室のドアを占めて奥の戸棚から1冊の本を取り出します。
題名の書かれていないそれは、茶扱けた表紙にびっしりと細かい文字が刻まれ、よくよく見ればページが何枚も破られていびつな形になっています。
そして、松崎さんはその本を開けて新たに1ページ破ってしまいました。
「あ、そんなことすると本がもったいないですよ?」
「いいんだ。これはそういうための本だからね。」
「えっと、それはどういう…」
「この本はね、異空間創世の秘術を内包してるんだ。」
「異空間って、時空間の空白に新しい空間を作り出すあれですか?」
「そうそう、それだよ。よく知ってるね。」
「はい、何度か本で読んだことがありますから。」
「じゃぁ、そっちの説明は不要かな。この本はね、異空間を作る魔法とその構築術式を各ページに書き込んでるんだよ。で、ページを破り取って魔力を流し込むと…」
【………】
突然破られたページが光りだしたと思ったら、そのページが細かい光の粒となって私たちを包んでいきます。
そして、驚いている間に私たちは光の膜につつまれ、それが弾け飛ぶと広くて何もない荒野に立っていました。
「…こうなるわけだ。」
「すごいですね。」
「この魔法はあまり普及してないからね。空間創造は難しいって言う学者もいるけど、異空間創世なら必要な時空間を切り取ってそこに必要なものを作り出すだけだから結構簡単なんだよ。」
「でも、本に魔力をこめるだけで出来るなんて、すごいです。」
「まぁ、そういう風にできるように便利に改造された魔道書だからね。さて、ではそろそろ始めようか。」
「あ、はい、よろしくお願いします。」
「じゃぁ、まずは魔法の基礎知識のおさらいから。覚えてる?」
「えっと、空間には魔素が満ち溢れていて、それを操って変換して思いのままの現象を引き起こすのが魔法ですよね?」
「そう。魔法は魔素を操る技術だ。」
「で、魔法を使うには魔素を魔力に変えなければならない。そのためには自らの魂を動かして魔素を取り込む必要があるんでしたっけ?」
「うん、一般的にはそうなってるね。」
「え、違うんですか?」
「いや、合ってるよ。もっとも、例外はどこにでも存在するけどね。」
「…?」
「まぁ、とりあえず続きを頼むよ。」
「あ、はい。魔力は全エネルギーの原点にして終点。魔力からエネルギーは作られ、作られたエネルギーは自然に本当にゆっくりと崩壊して魔力に戻る。でも、生命体は無意識に魔素から魔力を作り出し、それをエネルギーに変える魂と呼ばれる機構を持っているから、完全にエネルギーがなくなることはない。」
「うん、大体正解。ま、実際は魔力とエネルギーは等量になるようになってるから、その影響でエネルギーが減らないんだけどね。」
「そうなんですか?」
「うん。ま、それは良いとして、今の話だと魔力を使って魔法を使うんだよね?」
「はい、魔素を魔力に変換しないといけないんだそうです。」
「うん。その場合、魔力を多く作れる魂を持った人ほど大きな魔力持ちとされるわけだ。」
「はい。」
「ただ、神埼さんの場合、おそらく魔力を作る機構が限界なんだと思うよ。」
「?」
「つまり、生命維持に必要な分の魔力しか作ることができないんだよ。」
「ってことは、私はもう魔法が使えないんじゃ…」
「まぁ、普通はそうなるね。でも、ちょっと見方を変えてみようか。魔力が作れないから魔法が使えないなら、魔力以外のものを使って魔法を使えばいいんじゃないかって。」
「魔力以外って、エネルギーとか?」
「この場合、魔素の方だね。」
「え…、でも、魔素ってそのままじゃ扱えないんですよね?」
「むしろ、扱いずらいから使わないってのの方が正しいかな。」
「使いにくいんですか。」
「まぁ、例えるなら、同じ量の鉄球と砂鉄ならどっちが使いやすいかってことかな。100キロくらいになると、分けて運べる分砂鉄の方が使いやすい。逆に、鉄球は重すぎて使えないよね。」
「確かに、そうですね。ってことは、魔素を魔力に変えるっていうのは、鉄球を砂鉄に分解して使いやすくするってことですか?」
「ま、簡単にいえばそうなる。厳密には物質とエネルギーの違いがあるけどね、」
「なるほど。でも、それなら魔素は使えないんじゃ?」
「まぁ、全く使えないわけじゃないよ。逆にいえば、魔素だからこそできることもある。」
「魔素だからできること?」
「ま、実際君も魔素を使った魔法を見てるでしょ?」
「魔素を使った魔法って… あ、あの透明な壁ですか?」
「うん、正解。あれは、その空間にある魔素の量を著しく多くして固めたもので、物質には影響ないんだけど、魔力や魔素、魂なんかは通れないんだ。」
「じゃぁ、魔力を感じなかったのもそのせい?」
「うん。魔素は自然界に普通にあるものだからね。」
「というわけで、君には魔素を使った魔法を教えようと思う。」
「はい。よろしくおねがいします。」
「まず、何ができるかなんだけど、魔素は自由に操作できる魔力とは全然違って、濃淡を上げるのがせいぜいなんだ。そのためには、魂を使う必要がある。魂を操作して魔素を吸いとるとき、吸い切れなかった魔素は魂に押されて動くんだよ。それを利用して、魔素を魂で包んで押し固め、後はそいつを相手にぶつけてもいいし、壁にしてもいい。君の魂は魔力を多く消費する分、他の人より力が強いから、魔素を使った魔法は上手いはずだ。」
「えっと、魔素を押し固めるって、どういう風にすればいいんですか?」
「手で泥団子を握りかためるみたいに、魂で魔素を包み固める。…分かる?」
「えっと、魔素が私には見えないんで、どうすればいいのか…」
「ま、俺にも見えるわけじゃないがね。いちばん簡単なのは、魔素を集めてそこを実際触ってみることかな。魔素が濃ければ入れにくいし、固ければ弾かれる。」
「えっと、… っと、こんな感じかな。 って、ありゃ、貫通しちゃった。」
「これじゃ集めただけだね。握りかためるのは無理?」
「うんと、よく分からないです。」
「ま、普段はそんなことしないからね。じゃぁ、僕が魂で君を押すから、押し返してみてくれる?」
「はい、やってみます。」
「「…」」
「そうそう、そんな感じ。これを、魔素にやればいいんだよ。」
「と、 … こんな感じかな?」
「もうちょっと強くやれる?」
「なかなか感じが掴み難くて…」
「ま、それは練習あるのみかな。慣れれば結構簡単なんだけど。」
「はい、頑張ってみます。」
「うん、じゃぁ、俺が教えられるのはこれだけかな。用法もさっき言ったとおりだし、あとは自分で考えてみるといいよ。」
「分かりました、ありがとうございます。」
「うん、じゃぁ、この空間も解除するね。」
パンッ
何かのはじけるような音とともに、今まで荒野だったものが光の粒になって舞っていきます。
で、それがおさまると私は元の部屋の中にいました。
「さて、では、俺はこの辺で失礼するかな。」
「はい、いろいろありがとうございました。」
「いや、良いよ。これもお詫びの一環ってね。あと、口封じの代金として…。」
「はい、絶対に言いません。」
「うん。あと、その魔法の事も秘密ね。裏技だから。」
「分かりました。今日は本当にありがとうございました。」
「うん。それじゃ、またねぇ~」
魔法を教わって帰路に着く。
今日は結構いろいろと収穫がありました。
みんなが知らない魔素の魔法を覚えれたし、図書館の秘密の一端を知ることができたし…。
きっと、あの図書館もそういう魔法でできてるんだろうなぁ。
そういえば、松崎さんがあの本の著者かどうか聞き忘れちゃった。
でも、なんか読んでみた感じだとそんな気がするなぁ。
次に会うことがあれば聞いてみよっと。
いやはや、今回の更新はこれでおしまいです。
思いつきで始めた物語、とりあえず完結目指して頑張ろう~。
ってことで、以下はキャラクター紹介です!
ネタばれは極力減らしましたが、まぁ、嫌いな人は飛ばしてください。
★松崎大吾★
2031歳
趣味:読書、本の収集、物語の執筆
特技:速読
魔法:規格外特級
『無限書庫』の創設者にして管理人。神をも超える能力と知識を持っているけど、本人はただの本マニア。図書館の利用客だけでなく職員ですら、彼が管理人だと知らないらしい。
★神埼美穂★
16歳
趣味:読書
魔法:存在上位
本を読むのが好きな女の子で、分野問わずなため知識は豊富。
父親が魔法使いなため、魔法にも精通している。
★井原理恵★
16歳
趣味:面白いこと探し
特技:楽しむこと
図書館探検隊の創設者にして、事の発端。いろいろ挑戦するが長続きはしないらしい。勉強嫌い。
★椎名杏★
16歳
魔法:規格外異端
図書館探検隊のメンバー。理恵のクラスメイトで、2人でよく一緒に行動している。文系で魔法の才能はないけど…
とまぁ、こんなもんかな。
神埼父は… いいよね?
あ、ついでに魔素障壁の補足ね。
あれは、4隅にある障壁構成の魔法陣から魔素を押し出して固める魔法で、本を入れて通れるようになったのは本自体に魔素除去の魔法が掛かってるからです。
ま、本来は本の劣化防止魔法なんですがね…
同じ魔法を使えば、人でも通れるようになります。
神様とかは普通に使える魔法なんで、壁の先の階段を下りた先にある個室を利用してる客もいないわけじゃないんですが、軽い意識外しもかけられているんで、何かないかと探している好奇心旺盛な女の子とかしか見つけられなくはなっています。
でわ、とりあえず適当に頑張るんで、意見質問、ご意見ご要望、感想をよろしくお願いします。
あと、これ重要!!
誤字・脱字は作者だけでは見つけきれないものなので、見つけたら報告お願いします♪