第3話:文学少女とランデブー?
私は少しづつ落ち着いてきた。
今はお兄さんがさっきのことを必死に謝ってくれている。
なんか、最近はスパイが多くて、それと私を間違えたらしい。
で、いつものように殺気(?)を浴びせて追い返そうとしたら泣かれてしまったらしい。
で、ついでにここは透明な壁の向こう側みたいで、変な調度品や絵画なんて無く、とりあえず部屋一面に本棚があって、よく分からない本が所狭しと並んでいた。
「…というわけだから、さっきのことは本当に悪かったと思ってる。ごめん。で、出来れば此処の事や僕の事は忘れてもらえると助かる。」
「はい、分かりました。絶対に言いません。」
「そう言ってもらえると助かるよ。正直、此処の事はばれるとあんましよくないからね。」
「?」
「っと、まぁ、とりあえず出口まで送って行くよ。あ、ついでに何かほしい本があれば言ってもらえればそこまで案内するから。一応、ほとんどの本の場所は把握してるし。」
「いえ、そこまでしてもらうわけには…」
「大丈夫!さっき泣かせたお詫びだとでも思って、気兼ねなく聞いてよ!」
「えっと…、じゃぁ、『アスモ転移の理論的考察』と『元明文論』、あと、松崎著の『地球飛行紀行』の場所を教えてもらえませんか?」
「…っと、その3冊ね!! たしか、G8H6O01区域と36番あたりにあったかな?」
「えっと、G8H…区域ってなんですか?」
「あぁ、こっちの話だから気にしないで!」
「はい。よろしくお願いします。」
優しいお兄さんに戻った(?)お兄さんは、どうやら本の場所まで案内してくれるらしいです。
さすがに全部聞くのは悪いので、どうしても見つからなかった本の場所だけ教えてもらうことにしました。
で、部屋から出て本の場所まで向かいます。
そいえば、透明な壁はいつの間にか無くなっていました。
で、移動中にお兄さんとお話しします。
結構いろいろ知っていて、アスモ転移や元についてはかなり博識みたいです。
アスモ転移は実は間違ってるとか、元明文とは本当はもっと長い本だとか、本命を調べるなら『アスモ転移学論説』が良いとか、本当にいろいろ教えてもらいました。
「ところで、なんでこの本探してるの?」
「えっと、私は文学系統の専攻なんですが、次の題材で理論書を解読したものを作らないといけないんです。で、先生からちょっと難しいけど、この本がいいって言われたんで、探してたんです。」
「この本がいいって… ほとんどこれ専門書だよ?」
「はい、私の父が魔法学院の教師をしてて、幼いころから色々と教わってたので。」
「なるほど、じゃぁ、基礎概念くらいはわかるんだ。」
「はい、『魔法学における基礎概念』なら読みましたし、『元素分解・構築』に関してもマスターしてます。」
「なるほど、それなのになんで文系?」
「よく聞かれるんですが、知識はあっても魔力が無いんです、私。」
「魔力が無い?」
「はい、正確には魔力が集められないというか、練れないというか…」
「ちょっとやって見せてくれる?」
「えっと、此処でですか?」
「あぁ、本の事なら大丈夫。守ってるから。」
「?じゃぁ、やってみますね」
【炎よ在れ!】
「と、こんな感じで魔力が呼び掛けに答えてくれないんですよ。」
「ふむ、素質はあるから出し方の問題かな?ちょっと、魔力分子構築してみてくれる?」
「えっと、【…】と、やっぱり無理ですね。」
「やり方は間違ってないのに、何がダメなんだろ?」
「はい、それがわからず、結局知識だけではどうにもならないので諦めたんです。」
「…じゃぁ、いっそのこと集めずにやればいいんじゃない?」
「集めずにって、そんなことできるんですか?」
「まぁ、普通は無理だね。でも、知識と素質はあるから、もしかしたらできるかもよ?」
「それって、どういう…?」
「まぁ、実際にやってみれば分かるかな。と、此処だと危ないから練習場に案内するよ。今日はまだ時間ある?」
「いえ、家の手伝いがあるので、18時には帰らないといけないんです。」
「じゃぁ、また今度だね。明日は大丈夫?」
「明日は理恵ちゃんと杏ちゃんとまたあそこの壁のところに行って、通れるか試すんです… すいません。」
「あぁ、おk、気にしないで。じゃぁ、それ終わったらEの207番個室に来れる?」
「はい、行けます。」
「じゃぁ、その時によろしく。」
「分かりました。」
「と、とりあえずは本だけ集めちゃおうか。後は『地球飛行紀行』だっけ?」
「はい。っと、これですね。」
「うし、じゃぁ俺はこの辺で。」
「はい、今日はありがとうございました。」
「いや、こっちこそ悪いことしたね。また明日色々よろしくね~。」
「はい。…、あ、そいえばお兄さんのお名前は?」
「ん?俺は松崎だよ。」
「松崎さん、また明日よろしくお願いします。」
「ん。それじゃぁ、バイバイ~」
ん?松崎さんって、どこかで聞いたことあるような…
「って、えぇぇぇぇ!!」