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第21話:楽しい楽しいお買い物

今日はお買い物です。



お家を出て、まっすぐ商店街を目指します。


町の郊外から中心部を通り、反対の端までまっすぐに延びるこの商店街は、周辺の学校と駅、高速度道路の位置関係から、今でも賑わいを見せる場所の一つです。


近くに大型のデパートができたけど、いつの間にかそこも商店街の一部として組み込まれ、どんどん拡大しています。


近くには観光名所もあるためか、土産物ついでに掘り出し物を探す人の影も見えます。


そして、何よりこの商店街ですごいのは、魔法関係の品ぞろえの多さです。



ランプや掃除機などの日用品はもちろん、剣や鎧に魔法を刻んだ『魔法装甲ミスティック』や、小型の飛行物体、難解な魔道書や何に使うのかよく分からない物まで、ありとあらゆるものがそろっているのです。


最新式の魔法陣や新しい論文、果ては浮遊陸地を売っている店まであり、そこに技術を下ろす研究機関も周辺にいくつか存在しています。



まぁ、ここまですごい事になっているのは、ひとえに『無限書庫』の入り口があるおかげでしょうが。



世界最高規模の研究施設も郊外に作られる予定で、ますます人の流入も多くなっています。



もちろん、地価はそれなりに高いけど、住めないほどでないというのも魅力です。





「あ、美穂、こっちこっち!!」




「理恵ちゃん!」



待ち合わせの駅前に来てみると、遠くから手を振る影が見えました。


理恵ちゃんです。



隣に杏ちゃんもいて、二人揃ってにこにこと笑っています。



二人はお出かけ用なのか、結構良い服をしています。



理恵ちゃんは赤いワンピースに白の日傘。


指輪やアクセサリーは特に付けてないみたいですが、お嬢様っぽい雰囲気を醸し出しています。



対する杏ちゃんは黄土色のチェックの服に灰色の短パン。


半袖半ズボンのその格好に茶色の帽子をかぶり、まるでどこかの探偵のような身なりです。



かく言う私も、白っぽい服にスカートを履いた少しおしゃれな感じの服装をしています。



出かける前に鏡の前で確認したけど、似合ってるかちょっと心配な服です。




「美穂ちゃん、すごい似合ってるね!」



だから、杏ちゃんにこう言われた時はほっとしました。



普段図書館で本を探す時は、大抵ジーパンにラフな服装をしています。


だから、着なれていないこの服がどうなのかちょっと心配だったんです。




「今日はどこに行く?」



「う~ん、とりあえず近くのカフェにでも入って涼みながら考えない?」



「さんせ~い!」



「私もそれで良いよ。」



「それじゃ、確かあっちに良い店あったから、行こう!」




と、理恵ちゃんに手を引かれて私達は進みます。



お嬢様っぽい雰囲気は台無しで、ずんずんと進んでいきます。



まぁ、本人が楽しそうだから問題は無いですが。




そして、商店街の入り口からほど近い一見の店に入りました。



入り口のドアに取り付けられた鐘が「カランッ」という心地よい音を奏で、私達の来店を知らせます。


そして、すぐに出てきたウェーターさんに案内されて、窓際の席に座りました。



店内は落ち着いた感じの内装に、所々に花が活けてあって、おしゃれな雰囲気を醸し出しています。



所々で雑談をする人たちがいますが、店内は意外と空いているため、会話の内容までは分かりません。




「それで、今日はどこに行く?」



と、そんな事を考えていたら、理恵ちゃんがさっそく切り出しました。


机の上に両肘を置き、少し身を乗り出すようにしています。


心なしか小声で語られる声は、しかし楽しそうに思えて仕方ありません。



「私は夏用の服を何着か買いたいんだけど、美穂ちゃんはどう?」



「私も服は見たいなぁ。あと、ちょこっとでいいから魔法堂に寄って貰えると助かるかも。注文した品物が届いてるなら受け取りたいから。」



「了解。魔法堂に寄るなら、次の駅まで抜けちゃった方が早いね。じゃぁ、ついでに掘り出し物探しながらぶらぶらしますか!」



「わかった。」


「うん。ありがとう。」




それから、私達は立ち寄る予定の店を何件か決めて店を後にしました。


あ、この店で飲んだコーヒーは結構おいしかったから、また来よっと。




「それにしても、暑いね~。」



「うん。日陰にいてもこの暑さだから、日向はもっと暑いんだろうね。」



「りっちゃんみたいに日傘持ってくればよかったかも~。」



「あんちゃんのその服じゃ、日傘は似合わないよ。」



「ぶ~、良いもん、どうせ私は男の子みたいだもん!」



「まぁまぁ、杏ちゃんも女の子っぽい服着たらきっとかわいく見えるよ。」



「う~ん、でも、あたしそういうの疎いからなぁ。」



「じゃぁ、今日はあたしたちがコーディネートしてあげるわ。どうせ、服買う予定だったんでしょ?」



「うん、じゃぁ、お願いするね!」



「わかった。頑張るね。」




な感じで、通りを歩きながら何件か物色します。


途中、ちょっとかわいいアクセサリーを見つけてついつい衝動買いしちゃったけど、それは2人も同じで、理恵ちゃんは小さい小物のネックレスとイヤリングを、杏ちゃんは大きな虫眼鏡を買っていました。



そんなこんながありながら、目当ての洋服屋さんの前に到着しました。




「わ~、これ可愛いよ!」



「あんちゃん、ゴスロリ…」



「それはちょっと…」



「でも、このおっきなりぼんがすごくない?」



「まぁ、インパクトはあるね。」



「でも、意外と杏ちゃんなら似合うんじゃ?」




「じゃぁ、着てくるね!」



「「いってらっしゃ~い」」



と、杏ちゃんがすごい服を持って走って行きました。


私達も、その方向へ向かって歩いていきます。



杏ちゃんの持ち去った服は全体が薄桃色に統一されたワンピースで、背中には大きなりぼんが付いています。


で、一緒にこれまたピンクのリボンがいくつもついたカチューシャがつけられ、セットで2万5千円…




「お金あるのかな?」



「それより、あの服はどうかと思うわ。」




「と、お待たせ!」



「「…」」



そして、見てみてびっくり!


何と、意外と似合っている…


さっきまで少年探偵装束だったのが、いきなり、女の子っぽくなった感じ…。



それを伝えると、「わ~い。これにする!」と叫んでたので、理恵ちゃんと必死になって止めました。



あれは、逆に似合いすぎてて怖い…




で、物色して選んだのは肩口から胸元までが白地で、そこから下が水色の縞模様のスカートになっているワンピース。


あと、自分たちの服も探したけど、こっちはあまりめぼしい物がないのであきらめました。



ちょっと、胸元が苦しい…





そして、次の店に向かいます。



こっちは、さっきの店が子供向けなら、大人向けの店です。


白と黒で統一された内装は、ライトと音響でさらに上品さを醸しだしています。




ここで抜群のプロポーションをいかんなく発揮したのが理恵ちゃん。


着る服すべてが似合っていて、私も杏ちゃんも困惑気味です…。



というか、適当に選んでいるはずなのに、初見で自分に合うかどうかを判断できるのはすごいと思う。



しかも、コーディネートというか、服と服の組み合わせもしっかり決められていて、夏だからシンプルだとはいえ、もうすでに何着も着こなしています。



私達はもう、それだけで買い物したという実感が湧くくらい。




「すごい、りっちゃん。似合ってるよ!」



「ありがと。でも、これじゃぁやっぱり地味かしら?」



「十分だと思うけど、さっきのオレンジ色の方が良かったかも。」



「うん。じゃぁ、あっちにしよっと。あと、これとこれだけ試着してみたいから、もうちょっと待っててくれる?」



「うん。急がないから大丈夫だよ。」



「りっちゃん早く~。」



「あ、杏ちゃん…」



「はいはい、ちょっと着替えるから、あんたたちも見てきたら?」



「私や杏ちゃんに似合うのはあまり置いてないみたいだから…」



「大人っぽいりっちゃん向けの店だからね。」



「そう。じゃぁ、ほんとに申し訳ないんだけど、少しだけ待ってて!」



「うん。わかった。」


「了解!」



で、着替える事3着。


時間にして十数分。


私達は店を後にしました。



結局、りっちゃんは普段着を3着ほど購入。


あとは、女の子の秘密かな。



で、とりあえずは休憩しようという事で、ぶらぶらと歩いた先にある喫茶店に突入しました。



回り始めて約3時間半。


歩くのに30分とのぞき見程度に1時間。最初の洋服屋に30分と今の店で1時間半。


一応、今日の目的としては私以外は完遂した感じです。




「あ、あと指輪の修理を依頼するんだった。」



「ん?杏ちゃんが指輪?」



「うん。制御用のマジックアイテムなんだけど、最近サイズが小さくなってきたから、新しいのに取り変えようかと。」



「へぇ、それっていくらくらいするの?」



「30万円くらいかな?」



「たかっ!」



「うん。結構精密な魔法がかけられていて、長持ちするようにするとどうしてもそれくらいになっちゃうの。


まぁ、100年は使えるし、最悪サイズが合わなくなったら別の指に付け替えるのもありなんだけど…」



そう言いながら左手を見せる杏ちゃん。



今はめているのが左手の中指で、銀の特に装飾の無い指輪が一つ。


で、ここできついとなると付け替えるのは人差し指か薬指なんだけど、いくら小さいとしても人差し指は邪魔になる。


でも、薬指は… 色々不味いだろう。



「右手には嵌めれないの?」



「右手は別の指輪してるんだ。こっちは、『魔封じ』と『魔力発散』の安物2つ。」



「へぇ。特異体質もこうやって見ると結構不便ね。」



「うん。どうせ使えないんなら、宿らないでくれればよかったのに…」



「まぁ、30万円は高すぎるよね…」



「そっちの指輪にはどういう効果があるの?」



「これは『精神安定』。魔力を作り過ぎないようにするためのものだね。」



「なんでそんなのが高いの?」



「これは、感情がある一定の高ぶりを見せた時だけ発動するらしいの。だから、その辺の読み取りと魔法の発動が高速に行えるようにする繊細な刻印が必要なんだって。」



「なるほど。確かに、日常生活で精神安定なんて働いていたら、落ち込んだ時とかに沈みすぎちゃうもんね…」



「うん。だから専門の指輪がいるの。それに、高いのは私に合わせたオーダーメイドだからってのが一番大きいかな。」



「じゃぁ、新しいのを作るにも、測定とか結構大変なんじゃ?」



「過去のデータと相違がなければすぐ済むよ。それに、感情の起伏はそうそう一生中に変わるものじゃないからね。」



「なるほど。じゃぁ、依頼するだけで良いんだ。」



「うん。サイズ合わせだけして前金払えば行けるはず。」



「じゃぁ、ついでに寄ろっか。店の場所と名前は?」



「最先端魔法科学研究所の受付でできるよ。」



「それって、川沿いのあの大きい会社?」



「うん。よろしく。」



「「わかった」」



「後はどうする?」



「理恵ちゃんはもう寄りたい所は無いの?」



「私は寄りたい所ならたくさんあるわよ。化粧品に宝石店、小物屋、ファッション雑誌も買いたいし、紅茶の茶葉も何点か仕入れたい。あと、ストッキングやランジェリーも見たいわね。」



「いっぱいだね。」



「そう。だから、全部回ろうとは思ってないわ。あなたたちの行きたい所を優先していいわよ。」



「じゃぁ、お言葉に甘えさせてもらうね。」



さっきあげられたうちで何店舗かは行きたかったけど、さすがに全部回る時間は無いと思う。


予定では後1時間ほど歩くことになってるし、日が沈むまでには切り上げないといけない。



この辺は商店街とはいえ、日が沈むと一部は様変わりする。


それまでが、私達の遊べる時間だから、気をつけないと。



「じゃぁ、私はアイスクリーム食べたい!」



「あ、良いわね。確か、道の途中においしい所ができたらしいから、ついでに寄って行きましょ。」



「ほんと!? やった!!」



「あと、美穂は他に寄りたい所無いの? …ってか、服買うって言って、まだ何も買ってないようだけど。」



「私が欲しいのは肌着なんだけど、いつもお世話になっている店があるから、そこで買おうと思ってるの。」



「なるほど、サイズ合わせとかの問題?」



「うん。それに、あそこ常連さんはちょこっとだけ値引きしてくれるんだ。」



「なるほどね。じゃぁ、そこも寄る事にして、後は臨機応変に行きましょうか。」



「うん。じゃぁ、そろそろいこっか!」



「おぉ!!」



「全く、あんたたちは元気ねぇ」



「そ~お?」



「まぁ、杏ちゃんはいつも元気だよね。」



「美穂ちゃんひど! それじゃぁ、私が万年おてんば娘みたいじゃん!」



「「…」」



「え、なんでそこで黙るの?ねぇ、二人とも、なに、その覚めた目線は… いや、見ないで、そんな目で見つめないで!!! 私は普通よ! 普通の女の子なのよ!!! い、いやぁぁぁぁぁ!!!!」



と、飛び出していく背中を見つめて、私とりっちゃんは互いに微笑みあいます。



杏ちゃんはまるで、妹みたいな存在です。



そそっかしくって、ほっとけなくて、笑顔が素敵な私の大事なお友達。


いや、もう親友と呼んでいいと思います。




太陽が真上をちょっと過ぎたころ、私達は今日の予定を消化するために、また歩き出したのです。


1話で書く予定が、分割することに…


ちょっと、思ってたほど更新が進まないかもしれません。



ただ、まぁこれもありかな?



で、タイトルを予定とは少し変更して、2つに分けます。



まぁ、裏事情だと思っててください。

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